第四十七話 吸血姫との再会、息子の恋
フェニックスを討伐しカリフを離れ、ニエフの最大大陸ジアンに到着した4人。
順調に旅を進めている4人は、現在地球の東南アジアに似たジアン南部の島国地域に滞在している。
マームまで一番近いのはジャマングである。少し寄り道にはなるのだが、レンが地球で幼少期育ったのが東南アジアだったため、カレンがニエフでも似たような地域に寄ったらいいと勧めてくれたのだ。
カレンは四人がなるべく自由軍国に行かないために色々理由をこじつけてまで四人にジアン南部を旅するよう勧めた。
結果アプシャンでリゾート気分を味わったようにニエフでも一番人気の観光地トギル島で四人はゆっくりしていた。
レンはもちろん常夏の東南アジアに似たジアン南部島国地域特有の雰囲気を楽しんでいた。
クロは辛いジアン南部料理を目いっぱい楽しみ、相変わらず海で爆泳していた。
シロはカリフにもなかったジアン南部特有のトロピカルフルーツやデザートに夢中。
ニュートも熱帯地域が好きなのかレンと一緒に泳いだり料理や魔物狩りを楽しんでいた。
このトギル島に来るまでかなり時間がかかった。
現在レンが26歳。クロ、シロも肉体年齢は26歳。ニュートが6歳である。
ニュートはクロとシロと違い、レンが大人になってから人間体に変身させた獣人なので普通に成長している。獣人になったとき3歳で少し幼さを残していた容姿も大人っぽくなり、レンと兄弟といっても通じるぐらいますます似てきている。
竜人系獣人特有の人目を引く容姿もあいまって好青年へと成長した。それでもまだ精神年齢は6歳なので、女性からアプローチされるのはちょっと苦手なようだ。このあたりもウィリアムやレンに似たのだろうか?
「ふぅー、海で泳いで魔物狩りした後にうまい飯食いながら飲む酒はうまいな」
「そうね、エウレアのビールよりずっと飲みやすいわ。苦いけどしゅわっとなるのど越しがいいわね。辛い料理にも良く合う」
「ん、暑いのが逆にさわやかになる味。魚介類の料理にも良く合う。甘いお酒もある。おいしい。ごくごく」
「しゅわしゅわするのはちょっと苦手ですね。シロママの飲んでるお酒のほうが好きです。でもビールは確かに暑い時とのどが乾いてる時おいしく感じますね」
各地で魔物狩りを続けていたためかなりの貯金がある四人は超高級酒場で夕食兼家族飲み会をしている。
レンとクロが飲んでいるのはこの地方で生産された爽やかなビール。
シロとニュートが飲んでいるのは花の蜜や樹液から作られた甘い酒。
クロもシロもニュートもお酒の量をセーブできるようになったためレンも気を使わずにリラックスしきって飲んでいる。
「ん?お主らかなり強い気配がするのう?特にエウレア人の男はどこかで会ったような気がする……?それにそこの男は魔族と獣人の混血かの?随分と変わった見た目をしておるのう?」
突然話しかけてくる金髪美女。
「うちの息子にちょっかい出すのはやめてもらえますかねお姉さん?純情な子なんで」
「お主が父親?随分と若いのに大きい息子がおるんじゃな?それにそっちの黒いのと白いのも若いのにかなりの力と魔力を感じる。何者じゃ?」
「人に何者か尋ねるにはまず自分から名乗るべき」
「ふむ、白いのが言うことももっともじゃな。おい、店主よ、少し奥の部屋を借りるぞ、四人とも一緒に来るのじゃ。妾の出自もちと込み入った事情があっての。あまり大勢の人間には聞かれたくないのじゃ」
金髪美女は金貨を10枚ほど店主に手渡して颯爽と店のVIPルームに入っていった。
「なんだありゃ?見た目は普通の人っぽいけど……?」
「いや、レン、あの女の人普通の人間じゃないわ。なんか血の匂いと今まで嗅いだことのない匂いがする。行ったほうがいいかもしれない」
「私達と同じような気配を感じる。強い気配。レン、とりあえず何者かだけでも確かめるべき」
「…………きれいな人でしたね」
ちょっとだけ女性に耐性の出来たニュート。見蕩れるだけですんでいる。
「うーん、二人がそういうなら話だけでも聞いてみるか。俺もなんか引っかかってるんだよな……あっちもかなりお金を払ってまでも自分のことを説明して俺たちのことを知りたいみたいだし。ニュート、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……ママ達より美人じゃないですから……」
ニュートは旅中何回か各地の女性がクロとシロと同じぐらい美人と言って怒られている。
なのでどんな女性に出会っても二人より美人だとは言えなくなっている。ちょっとかわいそうだ。
これはニュートの本心ではない。事実さっきの金髪美女にはクロとシロとは別種の美しさがある。
「失礼します。そちらの事情というのは何事でしょうか?」
「遅かったの。そうかしこまらんでもよい。悪いが先に自己紹介させてもらうぞ。妾はブラッドライン・キリアじゃ。吸血鬼じゃな。お主たちは何者じゃ?」
「へっ!?!?」
「血の匂いはそういうことなのね……吸血鬼には会ったことないから嗅いだことのない匂いなわけだわ」
「ふむ、吸血鬼だから超長命。おそらくは相当長い鍛錬を積んでいる。だから強い気配」
「キリアさん……きれいな名前ですね……」
「妾の分析をしてもよいがこちらの自己紹介はしたのじゃ。お主たちのことを早く説明せぬか。特にそこのエウレア人からは妙な既視感を感じる。そこの珍しい人種の男もきになるしの」
「「レンには手をださないで(下さい)」」
「ん?黒いのも白いのもエウレア人の伴侶なのか?クリスチャンとしてはあまり関心せんの。妙な好感と言ったじゃろ。異性として好意を感じているわけではないぞ。いいからはやく説明せぬか」
「キリアさんもクリスチャンなんですか?」
「そのあたりも説明せねばならんのか?妾は昔自由軍国の将軍をやっておっての。しかしあまりにも国の惨状がひどく、3年ほどでやめての。その後世界各地を旅しておるうちにカレンシュタインのファルバで主のことを知り、主と聖書のことを学院で勉強させてもらったのじゃ。随分と懐かしい昔話だがの」
「そういうことですか。俺の名前はカシウス・レンといいます」
「カシウス……?聞いたことがあるの?お主、出身はカレンシュタインかの?」
「はい、カレンシュタインのイクス出身ですが?」
「ふむ……ファルバを訪れたことはあるかの?」
「ええ、ありますよ。ファルバの学院に通っていました」
「おぉ、思い出したのじゃ、お主、以前妾とであったことがあるじゃろ?」
「えっ!?…………あぁ、昔、ファルバの初日に受付前で会ったお姉さん?」
「そうじゃ、あの時の少年がもうこんなに大きく……時がすぎるのは早いのう……」
「じゃあ、キリアさんが俺に妙な既視感を抱くのはその時の……?」
「そういうことじゃな」
「お久しぶりです……というのもおかしい感じがしますが、またあえて良かったです」
「お主のことは少し噂を聞いておるよ」
「どんな噂か気になりますが……」
「それよりも、そちらの珍しい人種の若い男が気になる。はよう説明してくりゃれ」
「あぁ、すみません、こちらの珍しい人種の男性はニュートという俺達三人の息子です。血はつながっていませんが、俺はドラゴンをテイムできる特殊能力もカレンからもらっているので、ニュートを竜人系獣人に出来ました」
「ドラゴンをテイムしさらに竜人系獣人に出来るじゃと……?」
「その能力についてはカレンとの複雑な事情があってですね……」
「カレンからの能力なのかえ?あやつがそんなことをできるのかの?まあ、そんなことはどうでもよい。それよりも少し頼みがあるんじゃが、お願いしてもいいかの?」
「はぁ?なんでしょうか?」
「何、少し四人の血を舐めさせてほしいだけじゃよ。ふふふ」
「吸血鬼なら当然のお願いですね。別に首筋に噛み付いたりするわけではないのでしょう?」
「吸血鬼はそんな野蛮なことはせん。すこし指先から血をたらしてくれればよい」
「クロ、シロ、ニュート、かまわないか?」
「そのぐらいなら別に」
「リビングアウトフィットを作ったときと同じぐらいなら問題ない」
「キリアさんが僕の血を……いくらでもどうぞ……」
4人がそれぞれ個室にあった小さいナイフで少し指先を切るとキリアは飛びついて直接指を舐めてきた。野蛮ではないがちょっとお下品である。
「うお、直接舐めないで下さいよ!?!?」
「ふむ、青い果実のような味じゃな。クリスチャンとしてはまだまだ未熟じゃが瑞々しいよい味じゃ。それにお主いくつか階位が限界を超えておるな?妾のつたない治癒魔法が強化されておる」
「ひゃっ、くすぐったいです!!!」
「ほう、若いのにしっかりとした信仰を持っておるの。清らかな水のような味じゃ。少し清らか過ぎて純粋すぎるが心が洗われるような味じゃな。それにお主も限界を超えている階位があるの。尋常ではない力が流れ込んでくるのじゃ」
「今後レンの指を直接舐めたら許さない」
「これはまた……若いのに清濁併せ持った奥深い信仰じゃの。長年熟成された高級酒のような味わいじゃ。シロとやら、同じことはもうせんから許せ。お主は信仰は強いようじゃが我も強いようじゃの。お主からは膨大な魔力が流れ込んでくるの」
「は、はわわわわわわわ!!!!!」
「なんじゃこれは!!!!信じられん力が流れ込んでくる!!!!お主一体いくつ階位が限界を超えておるのじゃ!?!?こ、こほん、信仰の方はお主の父親母親とよく似ておるの。三人のいい部分をあわせたような感じじゃな」
「血を舐めるだけでどんなクリスチャンか分かるんですか?」
「普通の吸血鬼には分からんじゃろうな。妾は今まで多くのクリスチャンから血をもらってきたのじゃ。その経験則から判断しているにすぎん。お主たちは三人で結婚するという大きな罪を犯しておるが、妾の経験則から判断するとよい信仰を持っておる」
「なるほど、確かにそうですね。力が流れ込んでくると言うのはどういうことですか?」
「吸血鬼は血をもらった相手の能力を一時的に自分の力に出来るのじゃよ。妾も剣術と攻撃防御魔法は限界を超えておるが、今は全ての階位が限界を超えておるの」
「たった少しの血でそこまでですか」
「それだけお主たちの力が強いと言うことじゃ。妾の補助魔法は3位じゃし、治癒魔法は7位なのじゃがそれでも一気に限界を超えておる。他の階位は元々限界を超えておるから判断できんがそれでも大幅に能力が上がっておるの」
「吸血鬼は強いとカレンから聞いていましたがそんな能力もあるんですね」
「そうじゃな。だが、吸血鬼は人間と対して変わらんよ。肉体の再生能力は普通よりは高いがの。ただ長く生きる分強くなることが多いだけじゃ。ここまで力を強化できる血を持つ人間にも滅多に会えんからこの能力も役に立たんことが多いしの」
「吸血鬼も万能というわけでもないんですね」
「そりゃそうじゃろ。吸血鬼も人間の一種なんじゃから主のようになんでもできるわけなかろう。それよりも夕食を中断させて悪かったの。先ほどのテーブルに妾も参加して共に夕食をとってもいいかの?代金は血の礼として妾が払うぞ?」
「いや、あれぐらいなら別にそこまでしてもらわなくても大丈夫ですよ。クロ、シロ、ニュート、キリアさんが一緒に食事してもいいか?」
「レンに手を出さないならいいです」
「同じく。レンもキリアに興味を示してないからかまわない」
「キリアさんと食事…………したいです…………」
「わかっておるよ。クロもシロもそう怖い顔をするでない。しかし、ニュートの反応は愛いのう。久方ぶりに女性としてうずいてしまいそうじゃ。妾もまだ生娘じゃからニュートと対して経験は変わらないがの」
「いや、ニュートもまんざらでもなさそうですし、キリアさんも貞節を保っているならいいですけど、いきなり生娘とか言わないで下さいよ。最初に言ったようにニュートの体は大人でもまだ実年齢は6歳で純情なんですから」
「それもわかっておるよ。ふふふ、ニュート、しっかり互いを知り合っていこうの?さて、その第一歩として夕食に向かうかの。お主たちのような強い冒険者が払ってくれると言うなら旨いものが食べられそうじゃ。先ほどいい酒も飲んでおったようじゃし、楽しみじゃな」
「はい…………キリアさんのこと教えてください…………」
楽しそうに個室を出て行くキリア。誘蛾灯に引き寄せられるようにキリアについていくニュート。
「まさかこんなところで初めて吸血鬼に会うとはな。偶然にもほどがある。しかもクリスチャンの女性。ニュートも気に入っているみたいだし、良かったのかね?」
「ニュートが他の女の人に……寂しい」
「キリアめ……かわいいニュートを」
それぞれ三人とも親としての感想を述べつつ個室を出て行く三人。クロとシロもやはり母親なので息子にいい相手が見つかるのは嬉しいのだろうが、ちょっと複雑な気分でもあるようだ。レベッカと同じチャイルドコンプレックスになっているのだろうか?
「遅いぞ~三人とも~先に飲んでおるのじゃ~お主たちすごい酒を飲んでおるの~」
「キ、キリアさん、ご飯食べながら水飲みながらお酒飲まないと…………」
「おお~ニュートは優しい子じゃなぁ~もぐもぐ、ごくごく、ニュートに食べさせてもらうとなおのこと美味しいの~」
三人がテーブルに戻ると完全に酔っ払っているキリアとそれを面倒見るニュートがいた。どうやら吸血鬼は獣人のように酒に強いわけではないようだ。恋人同士というよりも、姉を世話する弟といった感じだ。
「ふむ、こりゃニュートにとって極上のチャンスかもな。俺達の旅についてくることになる以上奥さんも強い女性のほうが都合がいいし、なによりキリアさんはクリスチャンとして長く生きているみたいだからばっちりだろう」
「ぐぬぬぬぬ、何か釈然としないわ……でもニュートがあんなにがんばってキリアさんをお世話してるのは母親として息子の成長を喜ぶべきなのかしら……?」
「キリアめ、母親の私達よりニュートの心鷲掴み……でも私達はニュートにとってそういう対象になれない……悩ましい」
「くくっ、二人とも俺が姉さんの結婚に絶望したときほどじゃないけど、やっぱりかわいい息子が他の女性と仲良くしてるのは複雑か?クロ、シロ、今晩そんなこと忘れるぐらいがんばるから。さっさと飯食って宿に戻るぞ」
「「はい、あなた」」
その後家族飲み会プラス新しいメンバーキリアが加わり大騒ぎとなった。
宿に戻ってからもキリアは同じ宿に泊まり、長いことニュートと話していた。超長命な吸血鬼で長いことクリスチャンとして生きてきたため過度なスキンシップはとらないのだが、ちょくちょくニュートの指先から直接血を舐めていた。そのたびニュートは顔が真っ赤になりあたふたしていた。
ちなみにニエフの吸血鬼は血液を摂取しなくても普通の食事で生きていける。吸血する理由は血液による魔力や体力の吸収効率が普通の食事と比べ桁違いだからである。
クリスチャンとしてしっかりしているキリアにニュートを任せ、離れの部屋に行ってニュートのことどころかクロとシロの全ての記憶が吹っ飛ぶようなかわいがり方をするレン。
翌日二人とも幸せそうな疲れた顔をしていたからいいのだろう。しかしニュートもなんだか寝不足気味のように見える。
「ちょっとキリアさん、ニュートに変なことしなかったでしょうね?」
「離れからかすかに聞こえてきたお主たちほどのことはしておらんよ。ただニュートが寝るまで膝枕して頭をなでていただけじゃ。寝るときはちゃんと別々の部屋で寝たぞ?このぐらいなら問題ないじゃろ父上殿?」
「それぐらいならギリギリセーフかも知れませんけど、キリアさんが何歳なのか知りませんが、俺よりはるかに年上でしょう……?そんな女性から父上とか呼ばれるのは……」
「もうすでにニュートと婚約はしたのだからお主を父上と呼んでもおかしくはあるまい。ニュートも妾のことを好いておるじゃろ?」
「はい……キリアさん好きです……なでてもらうの気持ちよかったです……パパたちみたいに結婚したいです……」
「一晩で婚約かよ。俺もクロとシロとは電撃結婚だったからなんともいえんが。でもキリアさん、とりあえずマームまで行ってカレンに完全聖書を渡すまで結婚は待ってもらえますか?」
「ん?お主ら完全聖書を阿呆のカレンのため集めておるのか?妾も一冊持っておるぞ。これじゃ」
キリアが取り出したのはヨハネの福音書だった。
「あっ!?あの時学院の受付で読んでいた本が完全聖書!?!?」
「そうじゃよ?自由軍国では10の将軍が選ばれそれぞれ一冊ずつ完全聖書を渡されるのじゃ。妾も渡された当時は読めんかったが、なにやら力のわいてくる便利なものと思って将軍辞める時に持ち逃げしたんじゃ」
「自由軍国では人間が完全聖書を……取り戻すには……殺人の可能性が高いですね……」
「そうじゃな。どういうくだらん考えで阿呆のカレンがお主たちに殺人の可能性がある完全聖書収集をさせておるのかは知らん。しかしニュートを知ってしまったからにはお主らについてゆくぞ?かまわんじゃろ?妾は世界中のことを知っておるし、実際に色々経験しておるからニエフを見ておるだけのカレンより的確なアドバイスが出来る」
「そりゃ助かりますけど……ニュートが家族になった時も思いましたが竜人系獣人に加えて吸血鬼が仲間になるなんて出来すぎじゃないですかね?キリアさん、吸血鬼の中ではどのぐらい強いんですか?」
「ブラッドライン一族以外に3つ吸血鬼の部族があるが、他の部族の事はよくわからん。じゃが、妾はブラッドライン一族の中では最も強かったの」
「吸血鬼の中でも最強みたいですね……」
「さて、話も済んだし、クロとシロ、ニュートをつれて阿呆のカレンにお主の特殊性の事情でも吐かせに行くかの」
「クロ、シロ、ニュート、対談所行くぞ。大丈夫か?」
「大丈夫よ……」「問題ない……」「キリアさん優しかったです……」
クロとシロはギリギリ返事をしているが初めて相思相愛になったニュートは返事すら出来ていない。そんな三人を連れてトギル島の対談所へ向かったレンとキリア。
「黄金の戦姫……まだ生きてたの?今500歳ぐらいじゃなかったけ?」
「妾をその異名で呼ぶ出ない。相変わらず阿呆な想像主め。その異名は自由軍国将軍を辞めたときに完全に捨てたのじゃ。それに妾はまだ200歳ちょっとじゃ」
「あー……悪かったよキリア。しかしまさかレンレンがキリアにまで出会うとはねぇ……父上ってどういうことレンレン?」
「キリアさんがやたらとニュートを気に入っちまってな。ニュートも喜んでるみたいだし、二人ともきちんとしたクリスチャンだ。昨晩一緒にすごして婚約しちまったらしいから、そのうち結婚するだろう」
「父上よ、そのうちとかだろうではないのじゃ。絶対じゃ」
「キリアさんと結婚……夢見たいです」
「キリアさん、ニュート、それはいいんだが、俺達夫婦は三人で結婚するという大きな罪を犯している。その罪の刈り取りにキリアさんも結婚して家族になれば巻き込まれる可能性が高い。キリアさん、罪の刈り取りはもうすでに俺達を襲いました。それを聞いてから決めても遅くないと思います」
「ふむ、子供が死んだかクリスチャンにならず父上たちから離れたのか?聖書ではそういう事例が多いが」
レンはあまり思い出したくない記憶のため、ざっと奇形がクロとシロ両方から同時に産まれたことを説明した。
「長く生きておる妾でも聞いたことのない話じゃの。確かにこれからも何かしらの罪の刈り取りはくるじゃろうし、妾もそれに巻き込まれるじゃろう。しかし吸血鬼の全力と今まで培ってきた知識で愛するニュートと両親を守ろう」
「ニュートといいキリアさんといいあっさりと決断しますね」
「愛するニュートのためじゃ。伴侶とその両親を愛し守るのは当然じゃろ。それに、お主たち三人とも深く愛し合っておるのは昨晩聞こえてきた嬌声からしっかり感じ取れたしの。くくくっ」
「聞き耳たてないで下さいよ……えー、俺とカレンの関係を説明しますね」
またざっとレンとカレンが同一人物でレンが転生者と説明した。
「またまた聞いたことのない話じゃの?カレン、お主にそんな力があるのか?いつものニエフ管理者としての仕事ぶりからは信じられんが?」
「一応僕の全力を使った上全知全能の神様に色々手伝ってもらったからね」
「ふむ、一応カレンは完全にされた人間であるから主にお願いぐらいできるかもしれんの。さて、聞くことも聞いたのじゃし、さっさとマームに行ってカレンをぼこぼこにするかの」
「あー、キリアさん、カレンはどうせ死なないからぼこぼこにしてもいいですけど、ヨハネの福音書出してもらっていいですか?」
「はっ?キリア完全聖書持ってるの?」
「当たり前じゃろ。一応自由軍国の将軍じゃったし、持ち逃げするぐらいには実力もある。ほれ、父上、これでよいか」
「カレン、頼む」
「はぁ、また予定が早まった上キリアまで仲間というか家族になるとはね……いくらレンレンに幻想種との対話能力与えたとはいえ、Sランク魔物先祖がえりの獣人二人と竜人系獣人、さらに吸血鬼……もう本当に何も怖くないよ」
「そんな死亡フラグ満載の台詞はいいからヨハネの福音書を俺達の体に保管してくれ」
「はいはい、『コンセプション』『アブソーブ』ふう、これで21巻か。福音書が全部揃ったから僕も届けてもらえばだいぶ力を取り戻せるね。マームに来たらレンレンたちにもいいことがしてあげられるから楽しみにしてて。それまではキリアの持ってる超大型高速魔石船でジャマングへのクルージングを楽しむといいよ」
「キリアさんそんなの持ってるんですか?」
「世界中を旅するには必需品じゃ。魔石車も大型で上質なやつを持っておるぞ」
「なんというか、本当にいくらカレンに能力与えられているとはいえ出来すぎな状況だな……カレン、なるべく急いでマームに向かうから。それじゃな」
「カレン様……レンがキリアさんに誘惑されないのはいいんですけど……ニュートが……寂しい」
「強い家族が得られるのは嬉しい。でもニュートが他の女性に……悩ましい」
「キリアさんと一緒にパパの国へ……楽しみです……」
「阿呆な想像主よ、ニュートと父上たちに出会わせてくれたこと感謝するぞ」
いつもの四人に加えキリアが加わって挨拶をして対談所を去る五人。
「キリアが加われば長い経験から自由軍国もなんとかなるかな……?それにしても本当に出来すぎだよ、神様、この出会いに感謝します」
新たな仲間キリアを加え五人はジャマングを経由してマームへと向かう。五人の旅はどうなるのか?ニュートとキリアの恋は結ばれるのか?
五人の新たな物語が始まる。




