第四十六話 豪雨の火口、不死鳥狩り
レン、クロ、シロ、ニュートがガニアザ国に到着してから二ヶ月。
四人とも久しぶりにしっかりと毎週教会に通い、礼拝をできるのは幸せだった。三人で結婚していることは相変わらず隠さなければならないし、ニュートが竜人系獣人の息子とも紹介できないのは複雑であったが。
現在ガニアザ国周辺、フェニックスの生息するガロリジャキ山脈にも激しい雨季が到来している。四人は具体的なフェニックスの討伐方法をカレンに聞きに対談所へと向かっている。
「ほとんどスコールみたいなもんだなこりゃ……しかもほぼ一日中雨だし……アフリカ行ったことなかったが、地球のアフリカの雨季もこんなにひどいのか?」
「大きい雨粒が建物にあたってすごい音がしてるものね。町の人たちもほとんど家の中に閉じこもっているし」
「でもこの雨季が終わったら乾燥した大地に充分な水分が満たされて農業がうまくいく。これも神様からの自然の恵み」
「ギルタン島でも雨は降りましたけどここまで激しくなかったですね」
レンの防御魔法で雨を防いでいるため余裕で対談所へ向かう四人。
「カレン、二ヶ月間ありがとうな。というかカリフにも米があるならチョコとかコーヒーより先に教えておいてくれよ。日本人の心の一つだろ。カレンも日本人なんだから分かるだろうに」
「米はカリフの特産品じゃなくて輸入品だからね。意地悪して教えなかったわけじゃないよ。カリフが終わったらジアンを旅するんだし、その時食べられるからいいかなと思ったんだけど。レンレンも日本の米みたいな短粒種がいいでしょ?」
「そりゃタイ米みたいなのよりは日本米がいいが……米を20年以上食べてないからついAランク魔物殲滅しちまった。結果報酬も得たしガニアザも少し平和になったみたいだからいいのかもしれんが」
「四人とも強さはあまり変わってないみたいだけど。っていうかこれ以上強くなっちゃうとびっくりしすぎて僕が死にそうになるんだけど……とにかく鍛錬の成果はちゃんと出てるんだしいいじゃない」
「まあ、そうだな。とにかく本題に入ろう。このものすごい雨が続くならフェニックスに有効な水魔法も氷魔法も使えるだろう。でも、雨が強すぎて地面がかなりぬかるんでいる上雨風もすごいからみんな戦いづらくないか?」
「このぐらいなら海で泳ぐより全然簡単よ」
「このぐらいの風なら問題ない。少し翼がぬれて飛びにくいけどそれでもいつどおり飛行できる」
「僕の翼はシロママみたいにきれいな羽毛の羽じゃなくて皮みたいな感じなのでぬれても平気です」
「ふむ、戦闘に問題はないか。俺も気をつければ大丈夫だろう。ところでカレン、俺の幻想種との対話能力でドラゴンと話せたようにフェニックスとも会話できるのか?場合によっては交渉して完全聖書を譲ってもらうとか出来ないかね?魔物とはいえドラゴン並みに知能が高いと殺すことにちょっと罪悪感があるんだが」
「四人ともフェニックスと会話は出来るだろうね。でもニュートくんの両親の時と違ってフェニックス側に完全聖書を渡すメリットが全くないから交渉しても無駄だと思うよ。魔物は魔物。動物と一緒。人間じゃない。クロちゃんやシロちゃんニュートくんみたいに獣人にならない限りね」
「それもなんだかビーストテイマーの勝手な都合で殺してもいい魔物や動物と人間体にして神様に救われる可能性のある魂にできる魔物や動物を区別していて嫌な感じがするが」
「そうだねぇ……確かにニエフでは動物を救いに導けるかもしれないのに人間側の都合で他の動物を殺すのは気分が悪いかもね。でも、僕がはっきり言えるのはレンレンがきちんとクロちゃん、シロちゃん、ニュートくんがクリスチャンになるお手伝いをしてあげられたのは間違いじゃないってことだ」
「そうか、そうだな……人間でも神様を信じない救われない従わない人はたくさんいる」
「そういうことだね」
「話がだいぶそれたな。とにかくフェニックスとの交渉は無駄だと。カレン、フェニックスはガロリジャキ山脈のどのあたりに生息しているんだ?」
「フェニックスはガロリジャキ山脈の火口付近に家族単位で生息しているよ。個体数は5,6体ぐらいかな。家族の長が100メートルぐらい、他のフェニックスは70メートルぐらいかな」
「火口付近ね。マグマとか自在に操れるならかなり厳しそうだな。しかも100メートルが1体と70メートルが数体か。とりあえず気配を消しながら近づいて、奇襲で一気に数を減らすのが得策かね?」
「作戦は大丈夫だと思うよ。シロちゃんとニュートくんは問題ないって言ったけど、フェニックスの炎に纏われた体はこの豪雨の中では動きにくい」
「その後は臨機応変にするしかないか」
「そんな感じかな。クロちゃんはあふれるパワーを使って攻撃、シロちゃんとニュートくんは飛行しながら様子見と攻撃、レンレンはチートみたいな補助魔法と防御魔法、治癒魔法でフォローだね」
「了解だ。さっさとフェニックスぶっ飛ばしてくるか。そんじゃカレン、色々ありがとな。なるべく早くマームまで行くから。行くぞ、クロ、シロ、ニュート」
「カレン様、絶対フェニックス倒して完全聖書手に入れてマームに行きます!!」
「情報提供感謝する。情報を元にフェニックスを粉砕する。ではまた今度」
「カレンさん、ありがとうございました。必ずパパとママ達の役に立って見せます」
ゼクルスと変わらない意気込みで対談所を去る四人。
「幸せそうでなによりだね……神様、どうか四人が最後の試練を無事乗り越えられますように……」
真剣に祈るカレン。
翌日豪雨の中を魔石車でガロリジャキ山脈ふもとまで目指す四人。
「数日常にこんな感じだな……雨の強さは気にしなくても大丈夫かもな」
「そうね、いくら雨季とはいえ雨降り過ぎね。それにしてもお風呂みたいに暑いわね」
「むぅ、翼がじめじめする……べたべたして気持ち悪い」
「寒くはないですけど蒸し暑いですね」
魔石エアコンを全開にしても蒸し暑い車内。ドライウィンドウォールをかけて魔石冷蔵庫から冷たい各種ジュースやコーヒー紅茶を飲んでいるのだがそれでも蒸し暑い。なんとか蒸し暑さを耐えてふもとまで数日かけて到着した四人。
「こりゃ結構きつい登山になりそうだな」
「雨はレンが防いでくれているけど、かなりのでこぼこ道ね。というか道なのかしらこれ?」
「ふむ、飛んでいけば問題ないけど四人一緒に行きたい。」
「僕もパパとママ達と一緒がいいです。すごい大きい岩もあちこちありますね。地すべりとか大丈夫でしょうか?」
4人の眼の前には火山に登るためなのだろうか、急斜面にかろうじて道と呼べるものが見えている。しかし、その朧げな道は強烈な風雨にさらされ、今にも消えそうだ。
「今まであまり土魔法使ったことないけどやってみるか『アースローラー』『アースハードニング』『ウォータープルーフ』これでどうかな?だいぶ歩きやすくなったと思うが」
レンが三つの魔法を唱えると、四人の前にきちんと整備された登山道のような道が現われた。撥水効果も付加しているため地すべりも予防できる。このあたりも地球の知識とチートじみた補助魔法があるからできることだ。
「すごいわねー。もう全然ぬかるんでないし、これならちょっと斜めだけど余裕で登れるわ。レンの魔法は相変わらず不思議ね」
「すごい。こんな風に土魔法を使うとは。聞いたことない魔法ばかり。いくらイメージでオリジナル魔法が作れてもレンはやっぱりすごい」
「パパはすごいですね。魔法は威力だけじゃないって良く分かります。やっぱりイメージが大事ですね」
「俺は地球の知識によるイメージで色々変わった魔法を作れるけど、攻撃魔法のイメージは苦手だからな。その辺は申し訳ないが三人に任せるよ。その分全力で守るから。それじゃ出発!!」
「了解!!」「承った」「はい!!」
元気よく魔法で整備された登山道を登る四人。一晩かけて火口付近にはたどり着いたのだが、到着したときタイミング悪く雨が弱まってしまった。
「あれがフェニックスね。確かに美しくはあるな。カリフの人たちが崇めるのも無理はない」
「確かにきれいね。私の炎とは違って赤とかオレンジとか色とりどりで美しいわ」
「ふむ、見た目は美しい。でも所詮はただの魔物。神様じゃない」
「仲良く会話してるのが聞こえますね…………少し殺すのがかわいそうになってきました」
雨が弱まって少し活動的になっているフェニックスを岩陰に隠れながら見ている四人。
「あれだけ動き回っていると奇襲は難しいな。数もカレンに教えてもらったのより少ないし、何より完全聖書を持ってる長がいない。会話からすると久しぶりに雨が弱まったから腹すかして何羽か餌を狩りに行ってるみたいだな。俺達も登山で少しは消耗してるし、ここから離れて雨が強くなるまで休憩しよう」
「そうね……」
「ふむ、しょうがない。」
「はい……」
小声で相談し、火口から離れレンが岩魔法で小屋を作り、その中でフェニックスと同じ様に寄り添って休憩する四人。
レンとシロはあまり気にしていないようだが、クロとニュートは自分達と同じように家族で仲良くしているフェニックスを見て少し思うことろがあるようだ。
「ほら、クロ、ニュート、元気出せ。今回プロに教わって料理もうまくなったつもりだ。ほれ、いつもの肉料理だぞ。シロにはチョコチップクッキーもあるから」
「ん、おいしいわ。そうね……私達と同じようにフェニックスは守りあってるのよね……」
「お肉もクッキーもおいしいですね。家族で守りあう……それを壊すのは……」
「ん、おいしい。クロ、ニュート、大事なことを忘れてはいけない。私たちはフェニックスがなぜ完全聖書を持っているかは知らない。でも、取り戻す理由がある。違う?」
確かにシロの言うとおり大昔にカレンから完全聖書を奪っていった連中は初めからフェニックスにささげようと思っていたわけではない。
たまたまカレンをぼこぼこにして偶然見つけた力ある完全聖書を自然と自分達の信じる魔物にささげたのだ。
だからフェニックスには責任がない。勝手に人間から崇められささげられた強い力を魔物として本能的に代々守ってきただけなのだ。
「そうね、カレン様がレンをニエフに送ってくれなかったら今の私はいない。全力でやるわ。レン、キスして?」
「そうですね、カレンさんがパパを転生させてくれなかったら僕は両親と一緒に死んでいました。剣も魔法も使ってフェニックスを倒します」
二人はそういいつつレンにキスしたり抱きしめたりした。
「むぅ、クロばっかり……むぐっ!!!ちゅっ……」
「ふふ、シロ姫様のほうがよっぽど家長らしいですな。俺達の勝手な都合でフェニックスを殺さなきゃならん。でもこれはいつもの狩りと同じだ」
レンはニュートより少し背が高い力強い体でクロとシロを片手で抱っこしつつ、ニュートに抱きしめられながら覚悟を決める。
「ふふ、お姫様抱っこもいいけどシロと一緒の抱っこもいいわね。そうね、いつも通りやりましょう」
「むぅ、不意討ちとは。やられた。でも確かにクロと一緒の抱っこはいい。フェニックスもいつもの魔物狩りと一緒」
「ママたちいいなぁ。でも抱っこは少し恥ずかしいからパパに抱きついてれば満足です」
「ん?ニュートも抱っこしてやろうか?お姫さま抱っこで?」
「い、いいいい、いえ、結構ですパパ!!」
「そのうちお前もお姫さま抱っこする相手が見つかればいいんだがな。父さんじゃないけどいいクリスチャン女性と結ばれてほしいよ」
「まだ早いですよ……今はパパたちと一緒がいいです」
「そうか?でも家族が増えるのはいいもんだぞ?チャンスがあったら逃さないようにな?」
「家族が増える……考えておきます。パパ、もうそろそろ雨がまた強くなってきたのでフェニックスの様子を見に行きませんか?」
「あっという間に豪雨に逆戻りか。フェニックスも大変だな。この豪雨を神様からの天の恵みとでも思ってフェニックスをぼこぼこにしますか。みんな、行くぞ」
再び豪雨の中火口付近まで慎重に近づく四人。
「ちょうど食事が終わって眠っているみたいだな……」
「家族の長はすごい大きさね……100メートル以上ありそうよあれ?」
「雨の中なのにすごい気温……生物の体温とは思えない」
「さすがSランク魔物ですね……すごい迫力です」
「よし、まずは補助魔法かけるぞ。『マキシマイズ』『ウォータープルーフ』これならみんな雨にぬれずに戦えるだろう。マキシマイズのほうも問題ないか?」
「すごい補助魔法ね……力も魔力も満ち溢れてくるわ」
「これなら翼がぬれずに飛べる。魔力もスピードも段違い」
「不思議な感覚ですね……雨粒の一つ一つまでしっかり見えます」
「よし、問題なさそうだな。シロ、ニュート、アブソリュート・ゼロをフェニックスたちにかけてくれ。クロはなるべくすばやく小さいフェニックスたちを凍ったままばらばらにしてくれ。おそらく再生力が高くても頭を粉砕するか魔石を砕けば死ぬだろう」
「了解!!」「承った」「はい!!」
「「アブソリュート・ゼロ」」
シロとニュートがアブソリュート・ゼロを唱えた瞬間フェニックスたちは美しい炎ごと氷付けになった。クロがマキシマイズで強化されたパワーとスピード、思考加速能力で的確に小さいフェニックスの急所を粉砕していく。
『人間……なんのつもりだ。我が家族を一瞬でほふるとは。この地に住むフェニックスの長としてお前たちは生きて返さん』
絶対零度まで凍らされても数十秒で元通りの炎を纏うフェニックス。
「悪いね、フェニックスさんよ。お前さんが持ってる完全聖書を取り戻しにきた『ファントムソルジャー』『センスクラッシュ』みんな、行け!!」
「ぬりゃああああああ!!」
「アイシクルレインスピア」
「僕だってママ達に負けません!!『アブソリュートソード』!!」
レンの幻惑魔法で大量の幻を見て混乱し、さらには知覚そのものを一時的に狂わされたフェニックスに三人が飛び掛る。
一瞬でクロの氷魔法を纏ったビーストクローに両足を切断され、シロの極太の氷槍に体を貫かれ、ニュートが全てを切断する最強の魔法剣アブソリュートソードで片翼を切り落とした。
「こりゃヨシュウの言ってたとおりSランク魔物でも余裕かもな」
『ふん、なかなかやるな人間。我が家族を一瞬で葬り去っただけのことはある。だがフェニックスの長はこんなものでは死なん』
フェニックスは一瞬で全ての傷を完全に再生し大空へと舞い上がる。
「嘘……」「信じられない……」「ありえない再生力です……」
「ちっ、カレンめ、フェニックスが再生するイメージ強すぎだろ!!みんな、もう一度幻惑魔法かけるからその隙に……」
『そんな暇は与えん』
フェニックスはそうつぶやきながら極大の炎、いやもはやシロの使うプラズマ並の超高温球体を火口全体に現在の豪雨のごとくばら撒いた。
「『リキッドナイトロジェンウォール』!!くっそ、炎系魔物最強だからってありえん熱量だ!!みんな大丈夫か?」
液体窒素を障壁として用い、フェニックスの火球をなんとか防御する。
「あちっ、地面が溶けてるわよ……威力だけならニュート以上ね……コントロールがあまり正確じゃないからレンの不思議な魔法でなんとか助かったわ」
「ん、冷たくて気持ちいい。ちゃんと炎も防いでる。レン、ナイス。愛してる」
「また聞いたことない魔法ですね。パパすごいです!!」
飛行しているシロとニュートは余裕だが、地上で戦っていたクロはマグマ状になっている地面とレンの液体窒素障壁に驚いている。
「ほめてる場合か!!『インフィニットファントムソルジャー』『ギガセンスクラッシュ』『ミニマイズ』みんな首か心臓を狙え!!」
さらに強力な幻惑魔法とマキシマイズの逆、全ての能力を弱体化させる究極補助魔法ミニマイズを唱えるレン。
さすがにフェニックスも飛び方がふらふらしている。炎の攻撃は続いているのだが、四人の幻が多すぎるため狙いが定まらない。
「再生力はすごいけどゼクルスほどの防御力はないからいいわねっと、はっ!!」
「急所さえ狙えば問題ない『アブソリュート・ゼロスピア』」
「動きはゼクルスより早いですけど魔力コントロールはたいしたことないですね。ふっ!!」
大ジャンプしたクロに首を半分ほど切り裂かれ、シロに絶対零度の極太槍で心臓を貫かれ、高速飛行するニュートのアブソリュートソードで体中切り刻まれるフェニックス。
『ありえん、なぜ人間ごときが……ここまでの力を……?』
三人は攻撃し続けるのだが、ほぼ全ての急所を切り裂かれ貫かれ続け、全身を切り刻まれ続けてているにもかかわらず無尽蔵に近い魔力と生命力で再生し続けるフェニックス。
『このままでは……あれを……失ってしまう……他の部族に……渡さなければ……山を失うが……あれにはかえられん……山と共に滅べ人間!!』
フェニックスは最後の魔力を振り絞って墜落しながらもガロリジャキ山脈全体を噴火させた。
「ちっ、最後は自滅攻撃かよ!!『アブソリュートウォール』三人とも、フェニックスを切り開いて完全聖書を探してくれ!!」
「大丈夫ですよパパ、ほら、出てきましたよ。ついでにフェニックスもいくつか持ち帰りましょう。パパ、クロママ、シロママと僕の力を強化して持って帰りましょう」
ニュートはあっさりとアブソリュートソードでフェニックスの胸部を切り開き、完全聖書を探し出した。
「頼りになる息子だな……クロ、一番でかいフェニックスを担げるか?」
「よいしょっと、死んだからもう炎も消えたし、重さも大丈夫ね」
「シロとニュートは持てる範囲でいいから他のフェニックスをふもとまで飛んで運んでくれ。クロ、俺も手伝うよ」
「むぅ、クロばっかりずるい」
「シロママ、そんなこと言ってる場合じゃないですよ、溶岩がそこらじゅうからあふれてきてます。早くフェニックス回収しないと」
「シロ、後でそんな台詞いえないぐらいかわいがってやるから。クロ、行くぞ」
「それならやる気出る。ふふふ」
「レ、レン、私も!!」
完全聖書をなるべく均等に分け、ニュートが3羽、シロが1羽フェニックスを飛行して持ち帰り、レンとクロはアブソリュートウォールをうまく展開しつつ、噴火する山脈の中二人で長を担いでふもとまで降りた。
普通のフェニックスでも70メートル、長は100メートル以上ある。フェニックスも鳥類だから体重が軽いとはいえレンたちにしか出来ないことである。
「もう少し山から離れたほうがよさそうだな。ニュート、魔石車にフェニックスつなげるの手伝ってくれ」
「はい、パパ、よいしょっと」
二人で手際よく頑丈なロープを何本か使ってフェニックスたちを車に括り付け、ずるずると貴重なSランク魔物を引きずりながら車を走らせるレンたち。カリフの人たちが知ったら卒倒するだろう。
「さて、街中までフェニックス持ち帰るわけにも行かないからここで捌いて食うか」
「Sランク魔物はどんな味なのかしら?」
「ふむ、興味深い」
「パパ、手伝います」
レンとニュートがインヤンクロスでフェニックスを捌いていく。ヨシュウが見たら「そんなことに世界最強の剣を使うな!!」と怒られそうな光景である。
体に纏っていた炎が消えても美しい羽を引き抜き、くちばしやつめなんかの食用でない部位は出来る限り車に詰め込んだ。
「さて、とりあえず何もせずに素材の味を確かめるか」
普通にフェニックスのもも肉をソテーにする。切り分けても牛肉ステーキ並みにでかい。
「すごい匂いね、よだれたれそう……」
「おいしそう……レン、早くお祈り」
「おいしそうですけど、すごい力も感じますね……」
「はいはい」
食事とフェニックスの犠牲に感謝して祈るレン。
「すごい……Aランク魔物はすこし硬かったけど、これはなにもしなくてもやわらかいわ……」
「塩だけで充分おいしい……お肉だけどこれはいくらでも食べられる……」
「すごいですね……味だけじゃなく魔力も……特に一番大きかったのからはすごい力を感じます」
「確かにうまいな。フェニックスを食うのはニエフでも俺達が初めてかもしれない」
「レ、レン、どうせ町には持ち帰れないんだし、こ、ここで全部食べ終わってから町に戻りましょう?これをレンが料理したらどうなっちゃうのかしら……じゅるり」
「腐る前に凍らせて保存して全部食べる。レン、甘いソースもあるでしょ?」
「どんな味付けしても塩味でこんなにおいしいならいくらでも食べられます!!」
「はいはい、シロ、ニュート、色々肉以外の食材の買い物お願いしていいか?クロ、一緒に料理するか」
「「「はい!!」」」
その後数日間かけてありとあらゆるフェニックス料理を作り、巨大なフェニックス5羽を食べきってしまった四人。主に食べていたのはクロ、シロ、ニュートである。
フェニックスの骨を墓に埋めて感謝とフェニックスの冥福を祈り、カレンに会いに行く四人。
「何もフェニックス全部食べる必要なかったのに……レンレンはともかくクロちゃんシロちゃんニュートくんは獣人になる前魔物の肉で育ってきたせいか四人ともますますパワーアップしてるね」
「カレンが魔物の命を糧としてもらう以上無駄にはしちゃいけないっていったじゃないか。素材も魔石も保存してあるし。使う機会があるかはわからんが」
「カレン様?あんなにおいしいものがあるならどんなSランク魔物でも倒します!!」
「同じく。できれば植物性のSランク魔物が食べたい。お肉もSランクならもっと食べたい」
「すごいおいしかったです!!力もあふれてきますし、もっとSランク魔物を食べればパパたちの力になれます!!」
「いや、そうなんだけどね……たった数日であれだけの量を食べきるとは。あー、クロちゃん、Sランク魔物は個体数が少ないから、狩りすぎると絶滅しちゃうよ?シロちゃん、植物性のSランク魔物はユグドラシルぐらいしかいないんだ。ニュートくんそれ以上強くなってどうするつもりなのさ……というかフェニックスの家族を見てしんみりしていたクロちゃんとニュートくんはどこ行っちゃったの?」
「「おいし過ぎて忘れました。魔物だから食べても大丈夫です!!」」
「はぁ、いや、そうなんだけど……レンレン、完全聖書出して」
「はいよ。今回の中だと、マルコの福音書がイエス様の愛が伝わりすぎて涙が出るぐらいはっきりイメージできるな」
今回も入手した完全聖書は10冊。
申命記、第一歴代誌、ネヘミヤ、ミカ、ハバクク、ハガイ、マルコの福音書、ガラテヤ、第二テサロニケ、第一ヨハネだ。
「福音書はクリスチャンにとって特に大事だからね。イエス様の直接の生涯が書いてあるし、十字架の苦しみもその愛と恵みによる救いもはっきり書いてあるからね。『コンセプション』『アブソーブ』ふう、これで後はグルガルから出航しているジアン大陸への船に乗るだけだね……特にジアンで一番大きい国、自由軍国は通らないでほしい。無宗教でほぼ無政府状態だから」
「うわさに聞く無神論国家か。カレンの話を聞く限りじゃソドムとかゴモラみたいな国だな。その国は避けてなるべく急いでマームまで行くよ。忠告ありがとうな。クロ、シロ、ニュート、行くぞ。そんじゃカレンまたジアンでな」
「Sランク魔物はなかなか食べられないのね……残念だわ」
「カレン、いずれユグドラシルのある場所を教えて。Sランク魔物の果実……」
「まだまだ強くなりたいです!!Sランク魔物も食べたいです!!」
またレン以外カレンに挨拶せずに対談所をでる四人。
「ふぅ、フェニックスもなんとか倒せたね。ガロリジャキ山脈はしばらく大変だろうけど、しょうがないか。他の大陸での目的もフェニックスと同程度の強さの魔物を討伐することだから大丈夫だろう……ジアンでも自由軍国には立ち寄らないよう注意できたし……たぶん大丈夫だよね……でも最後には行かないといけない……その時は、神様……4人をお守りください」
カレンが心配していることは自由軍国とやらにあるようだ。
エウレア、カリフと試練を乗り越えた四人。
しばらくは楽しいジアン旅行が待っている。
その後の試練もカレンは最後の試練ほど心配はしていない。
最後の試練とは何なのか?
四人は乗り越えられるのか?
その結果は全能なる神だけが知っている。




