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第四十三話 新大陸カリフ

 ゼクルスでの試練を乗り越えたレン、クロ、シロ、ニュート。


 イクスに帰ってウィリアムやレベッカ、ライオンハート一家、アルーゼにももちろん立ち寄りこれからカリフに向かい、その後ジアンを旅するので長期間帰れないことを再び告げ、一ヶ月しっかりと家族の時間を持った。


 全員に完全聖書を見せると、はっきりとしたイメージが浮かび上がるのか、イスラエルの民を導いてきたモーセや預言者たちの信仰やイスラエルの罪と失敗、イエス様の愛や十字架の苦しみ、パウロやヤコブの使徒の心情が理解できてしまい、感動や悲しみから全員泣き出してしまった。


 完全聖書を読んだ彼らは、誰よりも強い信仰を抱き、イエスのような本当の愛を人々に感じさせていた。


 結果、数ヵ月後イクスとアルーゼのクリスチャンはかなりの人数となった。割合だけで言うならファルバよりも多いだろう。ニエフには珍しいクリスチャンの町として知られることとなった。


 休暇中であることと、これからもカレンからの目的を達成しなければならないため、ウィリアムから奉仕はもういいから鍛錬に専念しなさいといわれ、日曜日の礼拝と水曜日の祈祷会以外の時間は鍛錬と魔物狩りに費やした四人。また莫大な額の献金とマリーの学校運営資金を渡した。


 鍛錬と完全聖書の力により、四人の能力はさらに上昇した。


 レンは若干攻撃力が上がった程度だが、補助魔法も限界を超えた。

 クロは攻撃魔法が限界を超え、他の能力も全体的に向上。

 シロは攻撃魔法に加え防御魔法も限界を超え、能力も向上。

 ニュートにいたっては補助魔法以外すべて限界を超えてしまった。


 レンは新しい究極補助魔法マキシマイズを開発した。一般的な補助魔法に加え、感覚機能を強化するハイパーセンスや神経速度を加速するニューラル・アクセラレート、マジックコアからの魔力供給を増量する魔法マジック・アンプリファイを複合した総合強化補助魔法である。


 アブソリュート・ウォールも2.3回ほど使えるようになった。


 クロはギガントスクイッドから着想を得て、そのまんまであるウォーターカッターという水攻撃魔法や最高レベル氷攻撃魔法アイシクルレインスピアという遠距離攻撃魔法を習得した。


 シロはアブソリュート・ウォールが使えるようになり、イクスから相当はなれてレンに障壁を張ってもらって鍛錬しアンチマターも習得した。治癒魔法もリバイブまでなら使えるようになった。


 ニュートはアブソリュート・ゼロを攻撃手段として習得し、一瞬で生きている魔物を絶対零度にできるようになった。また魔力が上昇したため、アンチマターを三回ほど使用できるようになり、リバース・リザレクションもおそらく使えるし、アブソリュート・ウォールも習得した。


 超越者なのに、鍛錬に励みまくる四人。もうすでにどんな相手でも勝てるんじゃないだろうか?


「君達どこまで強くなっちゃうわけ……?1位を超えているからもう測定不可能だけど君達より強いパーティ見たことないよ……?」


 鍛錬の様子を見たり現在目の前にいる四人から感じる力に呆然とするカレン。


「強くなる分にはいいだろ。父さんたちやキョウヤの教会、姉さんの学校にも充分献金と資金を渡せてるし、お前の目的にも都合がいいじゃないか。それよりどこの港からカリフにいけばいいんだ?」


「それはそうなんだけどね……港はギガントスクイッドの時のサノティアに一番大きい魔石船があるから、君達の魔石車も積めるはずだよ。なんかゼクルスの時以上にあっさりフェニックス討伐しちゃう予感がするよ……」


「サノティアか。久しぶりだな。また詳しいフェニックスの倒し方はカリフに着いてからカレンに聞けばいいか?」


「う、うん、それで大丈夫。カリフはエウレアとはだいぶ気候とか自然環境も違うから、慣れてからでいいよ。それまでカリフの大自然を満喫するといいよ」


「そうか。まあ適当に対談所見かけたらちょくちょく顔出すから。それじゃまたな。みんな、行くぞ」


「了解」「ん」「はい」


 対談所から出て行く四人。


「あそこまで強くなっちゃうとはねぇ……でもジアンはその分大変だろうなぁ……」


 四人が史上最強になっても不安は消えないカレン。


 いつものようにカレンの不安を無視して魔石車はサノティアへと向かう。

 

「久しぶりだな。また新鮮な刺身が食えるかな?」


「うぅ……船はいやよぉ……」


「久しぶりの海風。いい感じ」


「ギルタン島とはまたちょっと違う感じの海ですね」


 それぞれの感想を言いつつ航海ギルドへと向かう四人。


「こんにちわー。お久しぶりです。カシウス・レンです」


「おお、久しぶりだな。元気そうじゃないか。それどころかギガントスクイッドだけじゃなくてエウレア中のAランク魔物を倒していたと聞いてるぞ。カレンの戦士たちだったか?そう呼ばれてるんだよな」


 話しかけてきたのは以前魔石船の操縦を教えてくれた船頭サギルである。サギルもサノティアでは比較的珍しいクリスチャンである。


「サギルさんも元気そうで何よりです。カレンの戦士って名前はちょっと恥ずかしいんで今までどおりレンでいいです。あれからギガントスクイッドは暴れていませんか?」


「お前達がほぼ全滅させてくれたからこの数年は平和なもんだ。5メートルぐらいの小さい幼体が一回だけ船にちょっかい出してきたぐらいだな。なんだ?またギガントスクイッドを倒しに来てくれたのか?だとしたらたいした仕事はなくて申し訳ないんだが」


「いえ、サノティアが平和なら何よりです。今回来たのはまたカレン様からおすすめの魔物を紹介されたんですが、カリフにいるらしいんですよ。カレン様がサノティアからカリフまで船が出てると教えてくれたんです」


「カリフに?確かに船は一ヶ月に一回出ているが……またなんでカリフまで?お前達の実力なら……って前はいなかった面子がいるな?誰だ?」


「ニュートです。Aランク魔物討伐中に出会った新しい仲間ですよ。俺達よりずっと強いんですが、年下なんで俺達を兄や姉みたいに慕ってくれているんです」


「そりゃあ頼もしいな。ニュート、しっかりレンたちを助けてやってくれよ。俺はサギル。よろしくな」


「は、はじめましてサギルさん。ニュートといいます。よろしくお願いします」


「サギルさん、一ヶ月に一回ってことは次の出航はいつになりますか?」


「どうしてもカリフに行くのか?あっちはエウレアほど魔法科学が発達してないし、冒険者ギルドも多くはないぞ?その分大自然があってさまざまな動物がいるからビーストテイマーのお前には天国みたいな場所だろうが……冒険者としてはあんまり稼げんぞ?」


「ちょっとカレン様から頼みごとをされましてね。カレン様のおかげで冒険者としてはもう充分すぎるほど稼がせてもらったので引き受けたんですよ。想像主のお願いを無碍にもできませんしね」


「まあ俺達もカレンさんにはお世話になってるから分からんでもないが。船は一週間前に出航したから次は3週間後だな。それまではどうする?お前達なら無料で船を貸し出すが、適当に海を楽しむか?」


「いいんですか?ありがたいです。お礼にサノティアの人たちにおいしい魚の食べ方を教えますよ。ちょっと人によっては好き嫌いがあるかもしれませんが。ところでカリフへの船に大きい魔石車を乗せたいんですが大丈夫ですか?」


「ああ、カリフまで行く船は一番大きいやつだからな。さっきも言ったがカリフはあまり魔石を使った道具が作られていないから、輸出してるんだ。魔石車もそのひとつだから問題ない。魚のおいしい食べ方ってのも気になるな。楽しみにしてるぞ。宿が決まったらまた来てくれ。船まで案内する」


「ありがとうございます。また後で伺いますね」


 四人は頭を下げて航海ギルドを出て行った。


「懐かしい救世主様が来たもんだ。しかし珍しい人種だったな……?」


 サギルの疑問も知らず宿を見つけ、すぐに海へ向かった四人。


「ふぅ……レンのおかげでなんとかなってるわ……」


「いい海風。鳥も気持ちよさそうに飛んでる。ちょっと話してくる」


「ギルタン島より海が鮮やかですね。青い様な緑のような……」


「ギルタン島よりもさらに南方だからな。シロが帰ってきたらみんなで海に潜ろう。きれいなさんご礁があるぞ。うまい魚系魔物も獲りたいしな」


「人間の姿で泳ぐのは初めてですね。楽しみです」


 その後シロが帰ってきてそれぞれ水着に着替えたのだが、ニュートが以前のレンと同じような状態になった。それでも三人に海に放り込まれると鮮やかなさんご礁や色とりどりの魚に感動して四人とも満足していた。


 魚系魔物も大量に狩り、サノティアに戻ってから刺身を振舞うと多くの人が不安そうな顔をしていたが、食べてみるとそのおいしさにみんなびっくりしていた。そんな三週間のサノティアでの日々。小さいが教会もあるので礼拝にも参加でき、充実した生活であった。


 サノティアを離れ二週間ほどの船旅を終え、三人は初めてのエウレア以外の大陸、カリフに到着した。


「あっついわねー……寒いよりはましだけど……今回は犬じゃなくて良かったわ。あんな毛皮着てたら蒸し暑くて死んじゃうわ……」


「こんなに暑いのは初めて。でも空気がすごくさわやか。飛んだら気持ちよさそう」


「僕はちょうどいいですね。太陽の光が気持ちいいです」


「俺も熱帯地域に来るのは久しぶりだな。地球を思い出すよ。クロ、魔石車に乗れば魔石エアコンあるから。みんな乗った乗った」


 到着したカリフの港町ワンギルには対談所がなかったため、対談所のある近くの町ガルリアまで移動する四人。


「はぁー、確かに大自然だな。っていうかアフリカそのまんまだな。ここは砂漠地帯だけど、もっと南方に行けばサバンナでもあるのかな?」


「これが砂漠ですか?砂ばっかりですね。でもシンプルできれいな景色ですね」


 運転するニュートと会話するレン。後部座席ではエアコンがあってもグロッキー状態のクロをシロが魔法で介抱している。クロは暑いのも寒いのもダメなようだ。


 すぐにガルリアまで到着し、対談所へ向かう四人。クロにはレンがクールウォールをかけているので何とか耐えている。


「よ、久しぶりカレン。カリフってアフリカそのまんまだな」


「カリフでは初対面だね。クロちゃんは辛そうだねぇ。元がシベリアンハスキーみたいな犬種だからかな」


「カレン様~暑いです~なんとかしてください~」


「僕は神様みたいに気候を操ったりできないよ。レンレンにしっかり守ってもらって」


「クロ、我慢する。レンがなるべく涼しくしてくれる」


「カレンさんには本当にどこでも会えるんですね。すごいです」


「一応想像主だからね。対談所がないワンギルみたいな町もあるけど、大抵は馬車で1日程度の距離ごとに対談所があるんだ」


「さて、カリフには到着したわけだが、どこにフェニックスの生息地があるんだ?」


「せっかちだねぇ。レンレンも地球時代はアフリカ来たことないんだからもうちょっと楽しめばいいのに。ライオンとかゾウとかカバとかチーターとかいるんだからビーストテイマーとしてわくわくしないの?エウレアにはいない魔物もたくさんいるよ?」


「もうすでにビーストテイマーどころか家族として最高すぎるパートナーがいるからなぁ。あんまり他の動物見ても興味わかなくなっちまった。魔物もあんまり興味ないなぁ。魔物の強さ自体はあんまりエウレアと変わらないんだろ?」


「まあそうなんだけどね。今のレンレンたちに匹敵するのはそれこそフェニックスの群れぐらいだろうけどさ。どっちにしても目的地はさらに南のガニアザ国にあるガロリジャキ火山で、フェニックスを倒すなら雨季が良いだろうから、それまではカリフの自然を満喫するしかないよ。雨季まで時間はあるから、海沿いのビーチできゃっきゃっうふふな状態でも楽しんだら?」


「お前もだいぶ俺達の幸せオーラに慣れてきたみたいだな。まあタイミングも重要でしかも目的地まで遠いならそうするか。クロ、暑いところで海入ると気持ちいいぞ。サノティアよりもっときれいなさんご礁が浅いところで見られるだろうしな」


「海……入りたい!!泳ぎたい!!刺し身食べたい!!」


「こんな幸せオーラ浴びてたら耐性もできちゃうよ。まずはゆっくり焦らずガニアザまで向かっておくれ」


「了解、沿岸沿いをぼちぼちいくよ。じゃあまたなカレン。ほら、クロ、行くぞ。シロもニュートもきれいなリゾートビーチ探しに行こう。シロの好きそうな激甘のトロピカルフルーツとかもあるだろうしな」


「激甘!?行く!!カレンバイバイ!!」


「リゾートビーチ?よく分かりませんがサノティアよりきれいなら楽しみです。カレンさんまた会いましょう」


 それぞれカリフの大地に夢膨らませながら対談所をでる四人。


「ふぅ、カリフまで来ちゃったかぁ……目的もそろそろ本当に大変になるだろうなぁ……しばらくは幸せでいさせてあげたい。フェニックスからもう10冊集めてもらってそれをマームまで届けてもらえば楽させてあげられるし。神様、どうか四人の未来に平安と幸せがありますように」


 カレンの目的は順調なのだが、それでも今だけは四人を幸せにしてあげたいカレン。


 これから来る試練と罪の刈り取り。

 それでも四人は進む。

 果たして彼らは一人も死なずにすむのだろうか?

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