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第四十一話 完全聖書、最初の回収

 王城の調査と実際にゼクルス本体を確認してから3日後。


「城壁から侵入することに関してはカレンの言うとおり夜なら問題なさそうだな」


「でも王城どころかゼクルス周辺にも守護騎士が十数人常に張り付いてるわね」


「ゼクルスは欠片も残さないほど破壊する。けど守護騎士たちが厄介。殺せないから邪魔」


「そうですね……ゼクルスを破壊するのに守護騎士たちが巻き込まれて死ぬかもしれません」


「その辺は考えて新しい複合魔法を開発してみた。守護騎士たちはがんばれば殺さずに無力化できると思う」


「どうするの?」


「スリープウィンドウォールって補助防御複合魔法を開発した。広範囲に催眠効果のある風障壁を展開するから、深夜勤務してて眠くなっている守護騎士たちなら充分眠らせることが出来ると思う」


「ふむ、その間に守護騎士たちを戦場から避難させればいい?」


「だな。ただ避難させる時間ゼクルスが待ってくれるかどうかは分からないな」


「飛行中にその魔法をかけて、守護騎士たちが眠ってからなるべく敵意や殺意をゼクルスに向けなければ時間は稼げるでしょうか?」


「ニュートの作戦がベストかな。うまくいけばいいんだが。殺人はクリスチャンとしては大きすぎる罪だから複雑ではあるがな」


「そうね……でもカレン様がレンを転生させてくれなかったら私は今クリスチャンとして生きていない。カレン様には罪を負ってでも感謝と恩を返さないと」


「カレンには感謝してる。レン、クロ、ニュートのいないクリスチャン人生などありえない。どんな罪を負ってでもカレンの目的は達成する」


「パパとママ達と出会えてクリスチャンにもなれたのはカレンさんのおかげです。人を殺すのは怖いですけど、それでもカレンさんのために戦います」


「はいはい、俺の失言だ。今回はなるべく殺人はしないよう作戦を立ててるからそこまで気負わなくてもいい。それよりもゼクルス本体との戦闘についてだが」


「んー、私は飛べないから足元を狙うかな。動けなくすれば破壊しやすいかも」


「クロ、それがベストだ。クロもプロミネンスが使えるし、大丈夫だろう」


「ふむ、私は上空からプラズマやプロミネンスを使う。風魔法は金属には効きにくい」


「シロ、それで大丈夫だ。プラズマはなるべく手足や頭部を狙ってくれ」


「僕はクロママとシロママの両方をやりますね。飛行しつつインヤンクロスで手足を切り裂きつつ高熱の魔法で溶かします」


「ニュートは頼りになる息子だな……父親としての自信がなくなりそうだが、そんなこと言ってる場合じゃないな。俺は誰かが傷ついたら即効回復。みんな、それで大丈夫か?」


「問題ないわ!!全員いれば百人力よ!!」


「レンの作戦通りみんなでやれば問題ない」


「全力でパパとママ達を守ります!!」


「よし、深夜を過ぎたら侵入して作戦実行だ。実際にゼクルスの戦い方を見ていないから、想定外の事態も起こるかもしれん。柔軟な対応を頼む。それじゃ各自深夜まで休憩」


「了解よ!!」


「承った」


「がんばります!!」


 四人ともしっかりと深夜まで眠ったり食事したりして体力も魔力も気力も充分蓄えた。


 現在ゼクルス王城周辺を飛行中の四人。


 シロがクロを、ニュートがレンを抱えている。


 夜でも特に明るくライトアップされているゼクルス偶像に注意して城壁を越え、城壁の上に着地する四人。


 小声で作戦実行する四人。


「よし、いくぞ。『スリープウィンドウォール』…………しばらく待ってくれ、ゼクルス本体だけじゃなくなるべく王城にいる人全員を眠らせたいから」


「「「了解」」」


 レンがスリープウィンドウォールを唱えると、守護騎士たちはやはり深夜勤務のため眠いのか、すぐにふらふらとし、5分ほど経つと地面に倒れこんでぐっすりと眠ってしまった。


 その後数回スリープウィンドウォールを唱えると、王城は完全な静寂に包まれた。


「よし、おそらくもう起きている人はいないだろう。ゼクルスを無視して守護騎士たちを王城内の安全な場所に運ぶぞ。幸い守護騎士たちが眠ってもゼクルスが反応していないから、直接攻撃しなければ反撃してこないんだろう」


 レンとクロは数人まとめて担いで王城内に守護騎士を避難させ、シロは二人ほど、ニュートは数人の守護騎士を抱えて飛行し、城壁の外へ連れ出した。


 まぶしくライトアップされた炎のような金色に輝くオリハルコン製のゼクルス本体を見上げる四人。


「本当にただの機械なんだな……こんなものを神として祭っているとは……」


「私たちが前に立ってても攻撃してないから動かないのね……なんかゼクルスの人たちがかわいそうになってくるわ……」


「愚かな人間の作り出した偶像。イエス様なら何があっても絶対私達を守ってくださるのに」


「なんか悲しい像ですね……パパ、クロママ、シロママ、早く壊してあげましょう。ただの物なのに神としてあがめられているこれを見てられません」


「そうだな。ゼクルスが動き出す前に補助魔法をかける」


「リインフォース」「ハードニング」


「次はゼクルスに弱体化補助魔法かけるから動き出すだろう。注意しろよ」


「ウィーケニング」「ソフトニング」


 その瞬間、ゼクルスの目が炎のように輝き、四人が密集してる地点に拳が打ち込まれた。


「ちっ、一筋縄じゃあいかないな」


 そういいつつも限界を超えた岩魔法防御障壁を展開し余裕でガードするレン。


「全員作戦通りいくぞ!!」


 レンの掛け声とともにクロが超スピードでゼクルスの足元に接近し、プロミネンスを纏ったビーストクローで切りつける。


 シロは流星のように飛び上がりプラズマを連射する。


 ニュートもゼクルスの周囲を飛行して超接近戦で剣と魔法を使って目にも留まらない連撃を繰り出すのだが。


「かったぁーー!!」


「ちっ、浅い!!」


「さすがオリハルコン製ですね……剣も魔法も決定的なダメージにならないです……」


 そんな余裕なのか逼迫しているのか分からないコメントをしつつゼクルスの攻撃をかわしながら浅いダメージを与え続ける三人。


 幸いゼクルス自身の動きはパワーとスピードがあっても単調なため、回避することは容易である。


 レン自身も軟化魔法ソフトニングをゼクルスにかけ続けてクロと共にインヤンクロスで攻撃しているのだが、浅い切り傷がつくのみで決定打を与えられない。


 しばらく戦っていると、ゼクルスは単純な攻撃ではかわされるとようやく気づいたのか、魔力を放出し始めた。しかもありとあらゆる魔石が注ぎ込まれているため、全方位に全属性魔力をめちゃくちゃに放出したのだ。


「ちっ、魔石が動力源って分かってたから魔力を使うだろうとは思ってが……みんな、大丈夫か?」


「こんぐらいならニュートの子育て時代に比べればよゆーよゆー」


「同じく。ゼクルスでニュートの子供時代を思い出すのは嫌だけど、問題ない」


「僕も回避するのは問題ないですけど……僕ってこんなことする子供だったんですか……?」


 相変わらず余裕で回避するスーパーチートパーティ。クロとシロのコメントで若干ニュートがしょぼくれている。回避できている理由はゼクルスの魔力制御がめちゃくちゃすぎてきちんと四人を狙えていないというのもある。


「しかしこのままじゃ長期戦になっちまう……いくら王城の人たち全員眠らせたとはいえそのうち町の人たちが気づいちまうな……」


 レンは対策を考えた。

 手はある。

 しかし、この魔法を使えば街ごと吹き飛ぶ可能性もあるだろう。

 それでも、やるしかないのだ、この世界へ送ってくれたカレンのためにも。


(主よ……俺に力を与えてください……家族を守るための力を……!!)


「よし、三人ともこっちこい!!ニュート、アンチマターの威力を最小限にして使ってくれ!!」


 一瞬でレンがゼクルスから距離をとり、三人も集まる。


「え、アンチマターですかパパ?アレは危険すぎるんじゃ……?」


「最小限の威力なら大丈夫だ!!前に説明したように水一滴ぐらいのイメージで!!みんなと町は俺が守るから、やれ!!」


「は、はい!!…………『アンチマター』!!」

「『ミスリルウォール』!!『アブソリュート・ウォール』!!」


 ニュートが最強オリジナル魔法アンチマターを使った瞬間、レンも周囲の岩から分厚いミスリルの障壁を変換、展開し、中庭を包み込み、自分達をアブソリュート・ウォールで包み込んだ。


 瞬間ゼクルス全土が昼間になったかのような輝きと爆発、轟音が起こり、ニュートとレンは気絶した。


「レン!!ニュート!!大丈夫!?」


「クロ、落ち着いて。魔力が尽きているだけ。それよりもアレを回収してこの場を離れないと。あんな音と光があったら国中みんな気づいてしまう」


 シロの指し示す先には核爆発以上の熱が発生したにもかかわらず、十冊の普通の本がおいてあった。ゼクルスの姿はまったく見られない。ミスリルウォールは砕け散ってしまったが、かろうじて町の壊滅は防いだようだ。


「これが完全聖書……?普通の聖書が10冊ばらばらになってるだけみたいだけど……あれ?でもなんかすごい力を感じるような……?」


「おそらく私たちがクリスチャンだから読まなくても理解してなくてもある程度の強化がされるはず。クロ、5冊ずつ持てばレンとニュートを運べる。急ぐ」


「う、うん、シロ、行こう!!」


 完全聖書を抱えて爆発があってもいまだ王城内の人たちが眠り続けている静かな廊下をクロとシロは走り、王城を脱出して魔石車までダッシュし、レンとニュートを車内のベッドに寝かせてからシロが猛スピードで対談所へと向かった。


 対談所にはすぐ到着したのだが、未だレンとニュートは目を覚まさない。無理もないだろう。ニュートのアンチマターは限界を超えた魔法使いの伝説の魔法リバース・リザレクションやアブソリュート・ウォールから着想を得たものだ。


 攻撃魔法が限界を超えており、全属性を使えるニュートなら反物質を生成できるとレンが考えて教えたニエフの魔法使いには思いつけない最強の攻撃魔法。


 そして、いくらニュートが膨大な魔力を持っていても、究極魔法は同様すべての魔力を使いきってしまう効率の悪い魔法なのだ。


 レンにいたってはアブソリュート・ウォールとその応用であるミスリルウォールを中庭中に展開したためニュートよりもひどい。幸いなのか分からないが、ミスリルウォールがギリギリで町を壊滅から救ったのはレンの信仰心が多少成長しているからなのかも知れない。


 そんな死にそうな二人、特にレンが心配なクロとシロだが、完全聖書を持って対談所へと入っていった。


「ごめんね……あそこまでゼクルスの防御力が高いとは思ってなかったんだ……」


 個室に入るなり土下座するカレン。完全聖書を持ってきたことよりレンとニュートに無理をさせたのが心苦しいようだ。


「カレン様、謝らないで下さい。ようやくカレン様に恩返しが出来ますし、人殺しもしないですみました。ただニュートは大丈夫だと思うんですけど、レンが無理しすぎてちょっと危ないかもです……」


「カレン、気味悪い偶像はニュートが破壊した。町もレンが守った。そして完全聖書も持ってきた。謝罪は必要ない。私たちが感謝するべき。でもレンは心配。ニュートは眠っているだけみたいだけど……」


 そういいつつカレンに完全聖書を手渡そうとする二人。


「ニュートくんは二人が言うように大丈夫だろう。ただレンレンは無理しすぎて少し危ない。魔力を生み出すマジックコアが崩壊しかけてる。でも大丈夫。治す方法はあるから。その……目を覚ますまでは体を触れ合わせてあげて。目を覚ましたら、レンレンとその……夫婦の時間を過ごしてあげて。僕の恥ずかしいイメージのせいだけど、ニエフで男女がそういうことすると魔力の補充や交換ができるんだ。感じたことない?」


 完全聖書を無視して微妙なレンの治し方を教えるカレン。


「そういえば……でもあんまりはっきりとは……」


「ふむ、調子が若干良くなったことはある」


「それは三人が今まで死ぬほどの魔力を使ったことがないからだろうね。あと、完全聖書を僕は今受け取れない。前に言ったけど今二人が見てる僕は幻影のようなものなんだ。四人ともしっかりしたクリスチャンだから、完全聖書を読めばもっと強くなれるはずだよ。そのうちマーム大陸に来て渡してくれれば大丈夫。申し訳ないけど、しばらく預かってもらえるかな?」


「ちょっと完全聖書を預かるのは怖いですけど、仕方ないですね。マーム大陸に行ったら必ずお渡しします。今日はもうこの近くの宿でレンを休ませて…………癒してあげます。では」


「ん、強くなれるなら問題ない。しっかりと預かる。必ずマームまで行って届ける。そしてレンをたっぷりしっかり癒す。ふふふ。ではまた」


 そういって二人は出て行った。


「はぁー、こんなにあっさりと……でもないのかなぁ。誰も殺さず誰も死なずにすんじゃった。でもニュートくんがまさか反物質まで使うとはね。しかもレンレンも原子構造の変換なんて信じられないイメージ力……アブソリュート・ウォールもあっさり使っちゃうし。神様、あんなすごい僕の助け手を与えてくださってありがとうございます。願わくばこれからも誰も死なず殺さずに四人が戦えますように」


 誰も死なず、殺さず最初の試練を乗り越えた四人。さてはて、次はどこへ向かわされるのだろうか?いつになったらマームでカレンに完全聖書を渡せるのか?四人の試練はまだ始まったばかりである。

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