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第三十五話 孤島での子育て

 レン、クロ、シロにニュートという息子が与えられ、新生活をスタートした四人。


 ギルタン島でのニュートの子育ては決して楽なものではなかった。


 知能は高いのだが、やはりニュートはまだ子供なため、泣いたり怒ったり両親の死を思い出して悲しくなったりすると膨大な魔力を放出して暴れることがあり、さらには体が大きく成長すると力も強くなり、さらになだめるが大変だった。


 体格が大きくなると食事の量もすさまじくなり、最初に建てた家ではニュートが入りきらなくなってしまった。


 それでもチートじみた実力をもつレン、クロ、シロ。三人の力を合わせて何とかニュートをしっかり愛情かけて育てていた。


 なだめるのは対談所でレンがしたように防御魔法を駆使してクロとシロを守り、クロはパワーを活かして、シロはスピードを活かして、それぞれしっかりとニュートを抱きしめ、なでながら優しく言葉をかけて慰めた。


 食料に関しては半年ほどするとニュート自身も魔物を狩れるぐらいに大きくなり、レンたち三人と一緒に魔物狩りをして充分な量を確保することが出来た。


 家に関してもクロとニュートが人間とは思えないパワーを発揮し、レンとシロが風魔法で伐採した大木を軽々と運び、大きなログハウスを建てた。


 ニュートがどんなに大きくなっても一緒に寝たいのはレベッカと同じなのか、200メートル四方はある寝室を作り、玄関とは別にニュートが寝室に出入りできる巨大な入り口を作った。


 食事に関してはリビングダイニングまでは大きく作れなかったため、レンが金属魔法で作った巨大なバーベキューセットを使って、いつも外でバーベキュー形式となった。


 ギルタン島にもBランク以下の魔物は大量に生息しており、Aランクもいないわけではないので、肉、野菜、果物、魚介など種類豊で美味な食材が大量に手に入り、クロもシロもニュートも幸せそうに食事をしていた。


 小麦粉はレンが種籾を近くの港で仕入れ、魔法をフル活用して大きな小麦畑をつくり、一年経つころには本土の港に仕入れに行かなくとも充分な量が収穫できた。


 塩は海水から水魔法と土魔法を併用して塩を抽出、砂糖はギルタン島が比較的温暖な地域に位置しているのでサトウキビが自生していたので、それも魔法をフル活用して家の近くに畑を作り、絞ってから塩と同じ要領で抽出した。


 攻撃魔法があまり得意ではない分、地球の知識からなんとなく農耕や塩、砂糖の精製技術を覚えていたレンだからこそこういうイメージで魔法が使える。


 しかし、そのおかげでニュートはおろかクロとシロもキラキラした目で魔法のように食材や調味料を生み出すレンを見ていた。


 ちなみに本土の港町アビシアの人たちは頻繁に来るレンのことを不審に思ってはいない。レンが自分はビーストテイマーで、自然の多い場所でテイムした動物を育てたいと説明したこと、イクスの冒険者ギルド同様ギルドを通して莫大な利益を町全体にもたらしてくれることからレンにあまり詮索しなかった。


 家族礼拝も日曜日に必ず行っており、夜四人で一緒に寝る時、ニュートに神様と聖書のことをしっかりと教えていた。ニュートは魔物なので最初よく分からなかったようだが、成長するにつれて知能も向上し、三人が何を信じているのか、何に救われて何に従うようになったのか少しづつ理解した。


 そんな生活が続いて三年。ニュートは両親と変わらない大きさまで成長した。いや、両親よりもふた周りほどでかい。さすがドラゴンである。


「ニュート、お前はもう充分大人になった。俺がビーストテイマーとしてお前を人間体にしようと思う」


『レンパパやクロママ、シロママと同じ姿になれるんでしょ?僕もパパ達がするように抱きしめあったりしたい…………人間になりたいよ』


「そうか。人間体になれば神様のことももっとちゃんと分かるようになる。お前もクロやシロのようにクリスチャンになれるだろう。クリスチャンになりたいか?」


『まだクリスチャンってなにかよく分からないけど……パパ達みたいな人たちなんでしょ?人間体になったらパパやママ達みたいに僕もなりたい』


「そうか。ニュート、好きな時間帯はあるか?」


『時間?時間は良く分からないけど、昼間日の光を浴びながら飛ぶのは気持ちいいよ』


「ふむ、そしたらお昼がいいかな。クロとシロのときと同じで外でやったほうがいいかも知れない。今は朝だから、これからお昼になったら行うがかまわないか?」


『うん、早くパパやママ達みたいになりたい!!』


「そうか……分かった。ただ、お前が人間体になったら話さなければいけないことがある。少し心の準備をしておいてくれ」


『心の準備?何か悪いことでもあるの……?パパ達に捨てられるの?』


「いや、俺達がお前を捨てるなんてことは絶対ない。だが、俺達の未来には辛い結果が待っている。そしてニュートが人間体になって本当に俺達と家族になれば、ニュートもそれに巻き込まれるだろう。それに巻き込まれたいくない、その辛い未来から逃れるため家族になることを拒否することはまだできるはずだ」


『パパ達と家族じゃなくなるなんて絶対嫌だ!!辛い結果がどういうものかは知らないけど僕はパパ達三人とずっと一緒にいたい!!』


「ふぅ……クロとシロが俺と結婚したときのようなことを言うな。でも、もう辛い結果は過去に一度起こってしまった。その具体的な内容を聞いてからでも遅くはない。とりあえずは昼間をまって人間体になってからもう一度考えてみてくれ」


『わかった。きっととても辛いことがあったんだね……でもそれを聞いても僕の気持ちは変わらないよ。僕はパパ達三人を本当の家族として愛してる』


「ニュート……優しい子に育ってくれて嬉しい……でもパパの言う話を聞いてからでも遅くはないわ。焦らないで、今はパパに人間体にしてもらうことに集中しましょう」


「ニュート、あまりすぐ決断するのは良くない。しっかりと事実を確かめてから決断するといい。でも、愛してくれるのはママも嬉しい」


『はい、クロママ、シロママ、焦らないでよく考えます。考えはかわらないとおもいますけど』


「じゃあ昼間で休んでいてくれ」


『はいパパ。クロママもシロママもありがとうございます』


 そんな親子の会話があってから数時間後。


 レンがニュートの魂の変換に用意したのは寝室と同じ大きさの巨大な魔法陣。


 クロのパワーやシロのスピード、二人の優しい性格などを受けついていることからクロとシロの魔法陣を合わせたような少し縦に長い楕円形の陣形。


 各種の宝石と、中心に据えた六芒星の紋章と木製の十字架はそれぞれクロとシロとの共通する部分を表した。


「ニュート、この魔法陣の中心に立ってくれ」


『へぇー、きれいですね。はい、パパ』


「クロとシロは家に入っているか?母親とはいえ息子の全裸を見るのもまずいだろうし」


「そ、そうね……最初の家のほうに行ってるわ」


「ふむ、ニュートがどんな人間体になるのか興味はあるけどパパ以外の男性の裸を見るのは良くない」


 二人は小さいほうの家へ入っていった。


「それじゃ行くぞニュート」


『はい、パパ、お願いします』


 レンは魔力を高めつつ、ニュートの人間体をイメージして呪文を唱えた。


『我、主の僕として主の力を借り受け汝の魂を変換す。その変換をもって汝の身体を人間となす。我とともに主の僕となり得る真の姿を顕現せよ』


 その瞬間、六色の光がニュートからあふれ出し、クロやシロのときは逆にニュートの150メートル以上ある体が小さくなっていった。


 光が治まると、レンに良く似た体形の男性が現われた。身長190センチほど。引き締まった筋肉、トカゲのような尻尾、短めの角、人間の体に合わせたサイズの翼。


 クロとシロ同様変わらないのは男性としては少し高めの声と緑色の体色が髪色に反映されていること、瞳は金色だ。


「どうだニュート?体に異常はないか?」


「どうしてでしょうか……?前より力があふれてきます……」


 そのままニュートは全裸で飛び回ったり、その辺の岩を指一本で粉砕したりしていた。


「ああ、こら、ニュート!!獣人になったら服着ないと!!裸で動き回るんじゃない!!俺の服で大丈夫だろうから、早く大きい家のほうにはいるんだ」


「あ、ああ、そうですね……このままじゃ恥ずかしくてママ達にあえませんし……パパの服着られるんですね、嬉しいなぁ……」


 ドラゴンでもともと知能が高かったからなのか、魂の変換があってもさほど混乱していないようだ。


 しっかりと人間特有の裸を見られる恥ずかしさなどは分かっている。


 しかし、その理由がクロとシロに会えないとか、レンの服を着られるのが嬉しいとか獣人になってもマザコンファザコンは治っていないようだ。


「はいはい、行くぞ。好きなの選んでいいから。金割と稼いでたから俺達三人ともアビシアで色々買ってるからな」


「はい、パパ。でもパパが選んでくれる服がいいですね……」


 ちょっともじもじしながらレンについてくるニュート。


 レンが自分の服を着させ、翼の部分だけ切り取って、クロとシロにニュートをお披露目しに行った。


「わぁー、ニュートかっこよくなったわねぇ。背丈とか体形とかパパにそっくりじゃない」


「ほう、これは……ニュートかっこいい。パパにそっくり。本当の親子見たい」


「………………」


「ん?どうしたニュート?ぼけっとして?ってああ、そういうことか。クロ、シロ、ちょっと隣の部屋行っててくれ」


「ん?あ、ああ、そういうことね。ニュートもお年頃だものね。ふふ、レベッカ母さんの気持ちちょっと分かっちゃうわ」


「ん、私達もまだまだいけるということ。ニュートの反応もパパそっくりでかわいい。でもニュート、そういう気持ちを母親に抱いてはいけない」


 そういいつつも二人は出て行った。


「パパ……ママ達はあんなに美人だったんですね……前からきれいだとは思ってましたけど、これはどういう?」


「お前は他のドラゴンの女性にあったことなかったから戸惑うのも無理はないがな。獣人になったら普通のことだ。男性としてな。いずれお前にもいい相手が見つかるといいんだが」


「この体が熱いのが、子作りとか結婚とかしたいって気持ちなんですか……?」


「必ずしもそうとは限らんけどな。人間の男性には性欲というものがあって、女性に触れたいと思うものなんだ。深呼吸してみろ。どうだ、少し落ち着いたか?」


「はい、ちょっとだけ……体の火照りも引きました……」


「ふむ、そうだな、ちょっと魔物狩りに行くか?もう少し気がまぎれるかもしれん。クロとシロ見てまたああなっちまったら話が進まないからな。獣人としての戦い方の練習にもなるだろう。ニュートはなんか使いたい武器とかあるか?」


「そうですね、パパとママたちの武器は全部かっこいいですけど……やっぱりパパの剣みたいなやつがいいです」


「ほう、そりゃ都合がいいな。今は普通の鋼製の剣を渡すが、ギルタン島をでて故郷のイクスに帰ったらもっといい剣を素材にして渡すよ。俺なりに信仰とニュートがイエス様を想い続けられるようにと気持ちをこめた剣を準備していたから」


「パパ、ありがとうございます。やる気が出てきました。人間の体の戦い方教えてください。パパが大事な気持ちをこめてくれた剣、楽しみです」


「うん、大丈夫だ。ニュートは優しくて賢い子だから獣人になった今ならきちんとイエス様のことが分かる。クロやシロみたいにな。よし、俺の予備の装備をつけていくか」


「はい!!パパやママ達みたいになれるの楽しみです。行きましょう」


 そういって父子は魔物狩りへと向かっていった。


「ふぅ……爪や牙で戦うのと剣で戦うのは随分違いますね……」


「いや、充分すぎると思うぞ……ドラゴン時代と変わらないぐらい狩ってるじゃないか……」


 レンとニュートが狩りをした後には、数え切れないぐらいの魔物が転がっていた。


「そうですね、剣の扱い自体は難しいんですが、力とかスピードは上がってる気がします」


「これで全属性の魔力を魔法として使えるようになっちまったらどうなるんだ?世界最強の戦士じゃないか。まあドラゴンを獣人にしたのは俺が初めてだからなんとも言えないが。とにかくニュートが強くて何よりだ。もうすっきりしたか?」


「はい、やっぱり自然の中は落ち着きますね。魔物狩りもドラゴンの時と変わらず楽しいです。パパの用意してくれた調味料を使ってクロママとシロママが作ってくれる料理が楽しみなので」


「うーむ、俺のテイムする動物や魔物はやっぱりみんな食いしん坊だな。さて、ニュートが落ち着いたなら帰るか。もうこれ以上持ちきれないしな」


 父親と子供の会話を交わしつつ、恐ろしく巨大な箱に魔物を大量に詰め込んで背負う二人。


「ただいまー、クロ、シロ、帰ったぞ」


「クロママ、シロママ、ただいまです」


「あら、魔物狩りに行ってたの?随分たくさん狩って来たわね。食べきれるかしら?」


「クロ、問題ない。アブソリュートゼロで保存する。それよりも捌いて料理しないと」


「捌くのは俺が外でニュートとやってくるよ。ニュート、やってみるか?」


「はい、変身する前は細かい作業苦手だったので、覚えたいです」


「んじゃちょっと捌いてくる。包丁持ってくな。もう少し待っててくれ」


「クロママ、シロママ、がんばってきます」


 魔物用の巨大な包丁を抱えて、二人は再び出て行った。


「ニュートも落ち着いたみたいで良かったわねシロ」


「ん、パパがしっかり教えてくれたおかげ。私達がアイナスから教わったように」


 30分後。


「よし、こんなもんだろう。ニュートも結構うまいじゃないか」


「いえ、パパのに比べると内臓が破けちゃったり肉がぼろぼろです」


「最初ならそんなもんだ。あと俺はちょっと事情があってこういうのに詳しいんだ」


「事情?なんですか?」


「その辺も俺達の未来の問題を教えるのと一緒に説明するよ」


「はあ……?」


「よし、運ぶぞニュート」


「はい……?」


 疑問を抱えつつも料理に必要な分を運ぶニュート。


「終わったぞー。シロ、外に残ってるぶん凍らせてくれ。クロ、料理頼む」


「承った。肉の芯までばっちり冷凍」


「はいパパ、ばっちり料理するわ。さーて、何料理にしようかしらねぇ……調味料ありすぎて困っちゃうわ。ニュートなにか食べたいものある?」


「そうですね……クロママの作る料理はみんなおいしいですけど……やっぱりステーキでしょうか?にんにくたっぷり乗った辛いソースのやつがいいです」


「ふふ、男の子らしいわね。分かったわ。ちょっとにんにくいためるから待っててね」


「ばっちり凍らせてきた。ニュート、私の料理は何がいい?」


「シロママはやっぱりサラダとかデザートですね。蜂蜜入りの甘いドレッシングとか、ケーキ好きです」


「辛いのも甘いのもいけるのか。ますますクロとシロにそっくりだな。戦い方も二人に良く似てたし」


「へぇ、そうなのパパ?ニュートは力あるものね。今度はママ達も一緒に魔物狩り行きたいわ。魔力を魔法に変換するイメージも教えたいし」


「ふむ、確かにニュートも飛べるから似ているかもしれない。飛ぶスピードも速かった。クロと一緒に魔法のイメージも教える」


「二人ともそれはいいんだが朝飯食ってからニュート変身させて魔物狩りも行ったから腹ペコだ。ステーキとサラダならちゃちゃっと作れるだろう。パンも作り置きがあるし、デザートは俺が作ろうかな。とにかく早く食いたい。ニュートも手伝うか?」


「はい、今ならお手伝いできます!!」


「いい子ねニュート。お願いするわ」


「お手伝いするのはいいこと。がんばって」


 親子の会話をしてから、ぱぱっと料理を済ませてしまう四人。レン、クロ、シロは今までニュートに毎日大量の食事を作っていたため、料理のスピードと技術がすごいことになっている。


 ニュートも料理は初めてなのだが、そのあふれるパワーとスピードでレンの作るケーキに必要なクリームやスポンジをしっかりとあわ立てている。


 やはりちょっと刃物の扱いは慣れないのか、果物やステーキのお肉、サラダの野菜を切るのがぎこちなかったりしたが、初めてにしては充分すぎる手際を見せていた。


「はー、獣人になると料理が一際おいしく感じますね。昔もおいしかったですけど、今はよりはっきりと味が分かります」


「そういえばそうねぇ。私も動物時代よりご飯がおいしくなったように感じてたわ」


「人間の体の方が味覚が鋭い場合がある。特に人間用に作られている料理ならなおさら」


「そうかもしれないな。動物種によっては食べられないものもあるし、濃すぎる味付けも動物には良くないしな」


 和やかな食卓を囲む四人。本当の親子の様である。しかしこれが終われば話さなければいけない。


 三人の結婚という大きな罪の刈り取りにニュート自身が巻き込まれるのをよしとするかどうか。


 ニュートが本当に息子になるかどうかを決断しなければいけない。


「ニュート、頭も落ち着いて、体も動かして食事もして満たされただろう。本当に俺達の息子になるかどうか、俺達がどんな罪を犯してその結果がどういうものだったのか、そしてこれからも何が起こるかわからないことを説明していいか?」


「はい?パパたちの罪?パパたちが何か悪いことをしているとは思いませんけど……?」


「ニュート、ドラゴンだったときしっかりと聖書に書いてある神様からの命令を教えたでしょう?完全には分からなくてもあなたはとても賢い子供だったから、覚えているでしょう?」


「はい、神様を一生懸命愛しなさいとか他の人も愛しなさいとか何度も聞かされたので覚えてはいます。意味はまだ良く分かりませんけど」


「神様からの一番大事な命令はそれであってる。ニュートはいい子。でも、神様は人間に男女一人ずつで結婚しなさいとアダムとイブのときから命令してる。ここまで説明すればニュートなら分かるはず」


「パパとママ達は三人で結婚している……それが罪なんですか?あんなに愛し合っていて僕のこともすごくがんばって育ててくれたのに?」


「ああ、それは大きな罪だ。そしてクロとシロはその罪の大きさとその結果を理解して結婚してくれた。その結果、お前を両親から任される半年ほど前にクロとシロが妊娠して出産した」


「え?そうしたらママ達の子供達はどうなったんです?それにパパを助けるため?どういうことですか?」


「ニュート、落ち着いて。色々事情があって、パパは結婚しなければ助からない状態だったの」


「レベッカ、ニュートのおばあさんが私達のうちどちらかをパパの妻になるよう勧めた。しかし私達には一人だけパパと結婚するという選択肢はありえなかった」


「三人で結婚した理由はそういうことだ。そしてクロとシロの妊娠はひどいものだった。二人の命が危なかったため、俺は二人の腹を切り開いて直接子供を取り出そうとした」


「は、腹を切り開く!?!?そんなことできるんですか?」


「その辺もあとで説明する。二人の腹を切り開いてでてきたものは人間とは呼べない肉の塊だった。おそらくはそれが俺たち三人の罪の刈り取りだと考えている」


「人間とは呼べないって…………どんなものだったんですか?」


「あまり詳細には説明したくない。ニュートに説明してもショックを受けるだけだろうし、俺ももう忘れたいことだからな。だが、ニュートは俺達の罪とはまだ無関係だ。俺達も親子で在り続けたいが、ニュートを無理に罪の刈り取りに巻き込むわけにはいかない。自分で決断してくれ。情けない父親ですまない」


「ふふ、もうそれパパの口癖ね」


「ん、やはりパパは変わらない」


「罪もまだどういうものか分かりませんが、その結果はひどいものなのですね……でも、クロママとシロママが罪とその結果を背負ってでもパパと結婚したように、僕もパパたちの息子であり続けたいです。パパたちの息子じゃなくなるなんて絶対いやです……」


 三人の罪の結果を聞いて息子でなくなればそれを上回る結果を避けられるだろうといわれても、ニュートは涙を流しながらこれからも息子であり続けたいと告白した。レン、クロ、シロは優しくニュートを抱きしめた。


「すまんな、ニュート。お前を育てた時点でこうなるかもしれないとは分かっていたんだが……俺達には事情があって子供ができにくい。その分どうしてもお前を息子として愛してしまった」


「私も同じ気持ちよニュート。あなたはとてもいい息子だったからパパと同じ理由で愛してしまったわ。ニュートの決断は嬉しいわ」


「ニュート、泣かなくていい。私達が自分の都合でニュートを息子として愛してしまった」


 優しく慰められそれぞれ自分勝手な愛でニュートに辛い決断をさせてしまったことを謝るレン、クロ、シロ。


「パパ、僕は初めての竜人系獣人なんでしょう?」


「あ、ああそうだが……」


「ならば僕にパパたちを守る力を与えてください。戦い方を教えてください。絶対三人とも死なせたりなんかしません。僕の全力でレンパパ、クロママ、シロママを愛し、罪の刈り取りから守ります」


 静かに涙を流しながら、ニュートは決断した。


「ふぅ、まったく。こういうところもクロとシロそっくりだな」


「パパにも似てるわよ。ふふ。血はつながってなくてもしっかり似てるわね」


「ん、さすが私たち三人の息子」


「ニュート、泣き止め。大丈夫だ。お前がそう決断してくれるのなら安心できる。でもそれより大事なことがある。ニュート、もう一度、獣人になったから聞くぞ。イエス様に救われたいか?クリスチャンになりたいか?」


「はい、パパたちみたいになりたいです。優しく強く人を愛せる人間に、クリスチャンになりたいです。イエス様のことももっと教えてください」


「うん、それだけ聞ければ十分だ。トライ先生も主を知りたいと願っているものを神様は拒否しないといっていたしな。イクスで父さんからクリスチャンになるための学びを受けられるよう頼もう」


「そうね、居心地のいい家だったけど、まだお昼過ぎだし、今からでも引越しの準備を始めましょうか。ニュート、手伝ってね」


「自然が多くていいところだったけど、ニュートがウィリアムからクリスチャンになる学びを始めるのは早いほうがいい。ニュート、一緒に船まで飛んで荷物を運ぶ」


「よし、やるか。ニュート、明日には出発するから、手伝ってくれよ」


「はい!!パパたちと一緒ならどこへでも行きます!!」


 クリスチャンになるためウィリアムのところへ引っ越すといっても力強く答えるニュート。


 その日のうちにすべての準備を終え、本当の意味で息子となったニュートと共にレン、クロ、シロはギルタン島を去っていった。

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