第二十七話 新婚三ヶ月、地獄の特訓
カレンに結婚の報告をしてから三ヵ月後。
レン、クロ、シロの三人は順調な新婚生活を満喫していた。
イクスの町の人たちも三人が結婚していることに気づいていない。
三人ともばれないようになるべく気をつけており、外出時に手をつないだり抱きしめあったりキスしたりはしなかった。
教会での奉仕もがんばっており、日曜日の礼拝の準備や片付け、レベッカが困っている人たちに振舞う炊き出しを手伝ったりしていた。
またキョウヤが牧師の学びの一環として月に一回ウィリアムに代わって説教をするため、ウィリアム、レベッカ、マリーに三人を指導できる時間が確保できた。
ウィリアムたちにカレンからAランクの魔物を倒しにいきなさいと言われたことを伝えると、ウィリアムは心配しながら、レベッカは嬉々として、マリーは自分もAランク魔物の討伐に行きたいが行けない鬱憤を晴らすかの様に死ぬほど激しい指導した。
今回の指導はイクス周辺の魔物では三人には弱すぎることから、ウィリアムたちと対人訓練をメインにした。実力も経験も劣る三人はかなりぼろぼろの状態だった。
指導中二人が傷ついた時、レンが「大丈夫だよ」と笑って優しく二人の頭をなで自分もぼろぼろなのに先に二人を治癒魔法で治すと二人は途端に幸せそうな顔をして元気を取り戻し、鍛錬に励んでいた。
そんな指導を一週間ほど続けていると
「パパ、ママ、なんか三人とも変じゃない?いや、そりゃ前からああいう感じだったけど、なんか違和感感じるのよね……レンも急に元気になってたし、クロとシロもレンになでられてヒールされてやたらと安心しているし……」
「ご、ごほん。さ、三人がより仲良くなっただけだろう」
「マリー、乙女の秘密があなたにもあったでしょう?あまり詮索してはいけないわ。それはマリーが自分の秘密を隠したのだから自分が一番分かっているでしょう?」
「いや、それは私も秘密を隠していたことは認めるけど……私の秘密は結婚すること。まさか三人が結婚してるとかないわよね……?そういえばパパとママそろってどこかに出かけていた日があったけど、違うわよね?」
ぎらぎらした青い目を攻撃色に染めて両親に向けるマリー。声のトーンが普段よりかなり低い。
「そ、そんなことはないと思うぞ」
「そんなわけないじゃない。ただクロとシロがレンを元気にしてくれて、それでより仲良くなったのよ」
「ふーん、なんか釈然としないけど、レンのうじうじしたところも治って、クロとシロのマスターらしくなってきたし……三人が仲良くなってるのならまあいいのかしら?」
「そ、そうだろう。レンが立派に元気になっていいことだ。三人もより仲良くなったしな」
「そうねぇ。レンは結構しっかりしてきたものねぇ。きちんとクロとシロを支えられていいことだわ」
マリーからの疑問をウィリアムは汗をかきつつどもりながら、レベッカはマリーの実体験を話したり微妙に真実と嘘を織り交ぜたりしてかわした。
そんな激しいという言葉では言い表せない指導が三ヶ月ほど続いた。
レンはクロとシロを守るのに必死だったためか治癒魔法と防御魔法、補助魔法がそれぞれ1階位上昇。
クロは激しい対人訓練を受け、体術が1階位あがった。クロもレンを守りたかったからか、防御魔法が2階位上がった。
シロはレベッカとマリーに攻撃魔法で飛行中を狙撃されまくった結果、攻撃魔法が1階位、防御魔法が2階位上がった。シロも地上で対人訓練をうけ、槍術、投擲術がそれぞれ2階位あがった。
想像を絶するウィリアムとレベッカ、マリーの指導で学院時代7年間かけて培ってきた実力をたった3ヶ月でさらに増してしまった三人。カレンに指導の結果を伝えに行くと
「ご愁傷様…………」
「「「いや、死んでないから」」」
ぼろぼろになりつつもシンクロして反応する三人。体は治癒魔法で治っている。特にクロとシロにはレンがリジェネレイトを真剣な顔で頻繁にかけているため傷痕一つ無い。
「実力はつけたつもりだ。俺も攻撃力結構上がったし、クロもシロもさらに強くなって、父さん達との対人訓練で経験もつめたと思う。どこかおすすめのAランク魔物が生息している場所はあるか?」
「んー、でも装備がめちゃくちゃだしねぇ……その感じだと自動修復するまで2,3ヶ月はかかるんじゃない?」
カレンの言う通り、三人の装備はアンダーウェアも金属装備もぼろぼろだ。
「カレン様、そうしたらその間どうするんですか?」
「装備がこのままだと魔物狩りにもいけない。収入が……」
「そうだねぇ。冒険者じゃなくてなにか普通の仕事を探したらどうだい?それもいい経験になると思うよ。収入はだいぶ減るかもしれないけど、君たちもう新築の家建てたし、一応それでもしばらく暮らすだけの貯蓄はあるでしょ?」
確かに三ヶ月前、しっかり新築の家を依頼しており、もう完成している。三人で入れる大きい風呂もあるし、大きい寝室もある。
「確かにまだ数ヶ月暮らしていけるだけの金はあるが……冒険者以外で俺何ができるかね?」
「私も馬鹿だからよくわからないなぁ……」
「今まで魔物狩りでしか生計立ててこなかったから分からない。普通の仕事って何?」
「レンレンは冒険者ギルドで臨時職員とかいいんじゃない?イクス周辺の魔物に詳しいし、情報係か換金所の職員とか」
「なるほど、確かに魔物の生息地や攻略法なんかはイクス周辺なら詳しいし、魔石や素材の相場もだいたい分かるな。そういえば元冒険者がギルドで働くことも多いと聞く」
「クロちゃんは木材ギルドかな。力仕事だし、頭の良さは関係ないから一生懸命働けると思うよ。クロちゃんは尋常じゃない力があるから、重宝されて給料も高くなると思う。」
「私の力が役に立つところがあるならやってみたいです。お給料もいいならレンとシロにもいいもの食べさせてあげられますし」
「シロちゃんは郵便配達かな。鳥人系の獣人はよくそういう仕事してるよ。イクスにも郵便局はあるから、そこで配達の仕事をもらえばクロちゃんと同じでやっぱり重宝されて給料も高くなると思う」
「ふむ、イクスの町なら詳しい地理は分かる。いいかもしれない。給料高くなるならなおさら。レンとクロにおいしいデザートを作れる」
「それぞれの職場に僕が話をしておくから、2,3日経ったらまた対談所においでよ。結果を伝えるから。断るところは無いと思うけどね」
「しかし確かに装備がこのままじゃ普通の魔物狩りどころかAランク魔物討伐にも行けないが……いいのか?お前の目的は?」
「まだ三人とも結婚して三ヶ月しか経ってない新婚さんじゃない。それに、僕もちょっとどこのAランクに向かわせようかまだ考え中なんだ。それにレンレンもまだ15歳で若いんだし、僕の目的を焦る必要はないよ」
「そういってもらえるのはありがたいが、なんだかカレンに甘えちまってる感じがするな……いまだにカレンから出資してもらいっぱなしでまったく出世払いできていないし」
「僕もレンレンと同一人物だけど父親みたいな存在でもあるしね。レンレンが幸せな時間を少しでも楽しんでほしいんだよ。出世払いはいずれはしてもらうんだから、焦る必要ないって」
「そうか、ありがとな。じゃあ2,3日経ったら結果を聞きに来る。またな」
「カレン様、新しいお仕事のことよろしくお願いします。さようなら」
「仕事のことありがとう。よろしく。また今度」
いつもの簡単な挨拶の後、三人は去っていった。
「…………行かせたくないなぁ。このままじゃだめかなぁ。でもいずれは向かわせないといけない…………」
三人の結婚の罪の結果よりも将来待つカレンの目的へ三人を向かわせることに不安の残るカレン。一体カレンの目的とは何なのだろうか。




