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第二十五話 三人での誓い

 レベッカ、クロ、シロが対談所を去ってからしばらく。


「はあっ!?!?なんでさ!?!?どうなってるの!?!?」

 

 そんなイクス中に響きそうな絶叫をあげるレン。


 いきなり自分の尊敬するクリスチャンである母親から「クロとシロと結婚しなさい」とか言われたら驚きもするだろう。


「いやいや、母さんなんで止めないのさ!?!?」


 すべて母親に頼りまくりのレン。


「私はちゃんとクロかシロどちらかひとりにしなさいと言ったわ。二人は私の話とカレン様の話を両方理解したうえで決断したのよ。レンを助けるためにね」


「どういうこと!?!?僕を助けるって何さ!?!?」


 超パニック状態のレン。まったく二人が自分と結婚する理由が分からないようだ。


「まったく……ファルバからここまでの道中なぜマリーがあんなことをしたのか少し分かってしまうわ。レン、少し落ち着きなさい。深呼吸でもしなさい」


 母親からもあきれられてしまうレン。レンがマリーだけでなくレベッカからも見放されたらはたしてどうなってしまうだろう。


 レンは未だパニック状態だが、言われたとおり深呼吸して、しばらく目を閉じて精神を集中させた。


「……情けないところを見せてすみません母さん。しかしそれにしたってどういう理由なんです?いや、クロとシロと結婚すること自体は嬉しいんですが……僕にはまだ早すぎるような気もします。それに母さんが言うようにクリスチャンは複数の女性と結婚しては……」


 「二人がレンと結婚したいといっている。そして二人が本当にレンを愛している。このままじゃレンは死んでしまうもの。すぐに結婚しないとまずいわ」


「いや、僕も二人を愛してはいますが……そこに嘘偽りはありません……でも、急ぐ理由は一体何なんです?」


 自分の体質がマリーの結婚によって超絶悪化して致死性を発現していることにまったく気づかないレン。


「はぁ、本当に鈍いところはパパそっくりね……いや、パパよりひどいかも」 

「レン、分からないようだからはっきり言うわ。あなたはマリーの結婚を喜ぶどころか二人の姿を見るたびに負の感情に突き動かされてるわよね?私はマリーの幸せをレンが心から祝えるようになってほしいと思ったの。そのためには、二人と結婚して二人ともあなたと結婚する決断をしたの。わかる?」


 「い、いや、ぼ、僕はそんな気持ちを、ね、姉さんに抱いたりは……」


 どこまでもへたれのレン。母親にびしっと指摘されても自分の心情を認めようとしない。


「レン……私達と結婚するのイヤなの?マリー姉さんの代わりにはなれないかもしれないけど……それ以上に妻として愛する自信はあるわ。」


「レン。いつものように拒否権などありはしない。さっさとマリーのことなんか忘れて私達を妻として愛して」


「いや、その、クロ、さっきも言ったが二人と結婚できるのはイヤじゃない。すごく嬉しい。けど……僕でいいのか?シロもそういってくれるのは嬉しいし、僕に拒否することなんてシロの言うとおりできないけど……いいのか?」


「レン、前も何回か言ったけど、最初にレンが死に行く私を助けてくれたのよ。今回はそのお返し。レンとシロを愛してるから、大丈夫よ」


「レン、クロの言うように最初に死から私を助けてくれたのはレン。今は私達の番。黙って助けられて。心配することない」


 優しく諭してくれるクロ。はっきりと断言しするシロ。


「ぐすっ、二人とも……本当に情けないマスターですまない、うぅっ……僕を助けてくれ……」


「当然よ!!レンが私のマスターでさらにクリスチャン夫婦になるなんて夢みたいだわ!!」


「レン、クリスチャンとして、パートナーとして、妻としても助けるのは当然」


 力強く宣言するクロとシロ。


「ありがとう二人とも、本当の家族になろう。」


 そういってレンはベッドから立ち上がり、二人を抱きしめた。


 しばらく黙ってみていたレベッカだったが・・・・・・


「さて、式はいつにしましょうかねぇ。なるべく早いほうがいいけど、二人の衣装なんかはちょっと時間がかかるだろうし」


「母さん、衣装ならファルバで購入したほうがいいんじゃないですか?クロとシロの装備のアンダーウェアを用意した洋品店に確かそういうのもあったと思います。母さんもサポートについてきてくれませんか?」


 イクスにも魔石車はあるのだが、ごく一部のお金持ちやレンたち三人のようなハイレベル冒険者しか使わない。


「そうね、ファルバの店ならいいものがありそうだし、往復で四日……式は一週間後にしましょうか。そうと決まったらじっとしてなんかいられないわね!!私はパパに事情を説明してくるから、レンたちは今すぐ魔石車の手配をしてきて頂戴。一時間後にイクスを出発よ!!楽しみだわー!!」


 レベッカは風魔法でも使って飛んでいるかのようにレン宅を飛び出して言った。


「なんか母さんすごい元気だったな。とりあえず魔石車の手配しに行くか。クロ、シロ、着替えるからちょっと待っててくれ」


「そ、その……大丈夫?自分で出来る?」

「手伝う。レンの体……」


 今はレンのほうがクロよりも背が高くなっており、きれいな蒼い瞳をうつむきながら上目遣いでもじもじして心配している。シロにいたっては心配ではなく宣言している。いろいろ欲求不満がたまっているのかもしれない。獲物を狙うようにレンの体に紅い瞳を輝かせている。


「だ、大丈夫だ!!すぐだからリビングで待っててくれ!!」


 シロのストレートな欲求も魅力的だったようだが、オタク心にはクロの様子のほうが刺激が強すぎたようだ。


「そ、そう……なら待ってるわ」

「ちっ……」

 

 それぞれ違う反応を見せつつも素直にリビングへと去っていった。


「二人と結婚、か……いろいろ大丈夫かな」


 将来二人と夫婦になる。そんなことに若干の不安を抱えるレン。 


 一時間後。


「レベッカ……マリーにも言ったがもう少し事前にだな」


「はぁ、またマリーの気持ちが分かってしまうわ。パパ。4,5日留守にするからその間教会のことよろしくね。それと一週間後の準備も。行ってきます」

 

「「「いってきます」」」


 全員魔石車に素早く乗り込んで、シロが猛スピードで発進させた。


「まったく……いや、レンには必要なことだと思うんだが、もう少し私に相談してくれても……」


 かなりの体格を縮めて地面を指でいじるウィリアム。夫婦とは妻が夫を立てるものだが、レベッカは割りと夫よりも自分でいろいろ決めてしまうことがあるようだ。


 少し哀れなウィリアムを無視して魔石車はほぼ一日中、夜暗くなってもライトをつけて走り続けた。猛スピードと安定感を両立したニエフでも1,2を争うであろうシロの運転技術のおかげで一日ちょっとでファルバに到着してしまった。


「相変わらず広い町ねぇ。建物も相変わらずきれいだし。でもやっぱり寒いのがいただけないわね」


 ファルバについての感想を述べつつ三人を引きずるように早足で歩くレベッカ。どうやら洋品店や装飾品店、化粧品店などの女性に必要な店の場所はすべて覚えているらしい。


 やはり化粧は分からないが、装飾品にレンは意見を出し、指輪もクロには大きいサファイア、シロには大きいルビー、指輪はレンも買わないといけないので、クロとシロがエメラルドのものを選んだ。指輪も銀製である。


 洋服に関してはウェディングドレスや男性用の結婚式衣装などオタク知識の範囲外なのでレベッカに任せると、鬼気迫る迫力でレンクロシロをとっかえひっかえ着せ替え始めた。


 ただ、クロとシロも女性としてのたしなみと個人的ファッションセンスが生まれてきたのか、レベッカが選んだ中からこれがいいといって自分たちで選んだ。


 クロが選んだのは淡い水色の少し胸元が開いたドレス。


 シロが選んだのは淡い赤色の背中が大きく開いたドレス。


 レンはクロとシロに選んでもらったダークブロンドのタキシードと淡い緑色のネクタイ。


 全部やはり銀製の糸が織り込まれているため、きらきらと輝いて見える。そこにさきほどレベッカが選んだ化粧品、レンクロシロが選んだ装飾品をクロとシロがさらに身につけると


「うん、三人ともよく似あってるわ。シンプルだけど色も装飾品と統一されててきれいだし、銀の糸のおかげで程よく輝いていいと思うわ」


「……きれいだ……」


 はじめて二人に会ったときのワンピースがよりしっかりと縫製され、多少フリルがつき、銀製の糸が織り込まれているだけなのだが、男性として成長した体になってしまったせいか、以前の様にだくだくと鼻血を流し、男性の生理現象も起きてしまっている。


「レ、レン!!また鼻血が!!それになんか膨らんで……?」

「クロ、大丈夫。あれは男性が女性を見たときの正常な反応。ふふふふふ」


 二人が心配したり妖しい微笑を浮かべていると試着室のカーテンがすばやく閉められ、


「クイックエイド」


 無言で魔法をかけてレンの衣装を引っぺがし、金貨袋をひったくり、店外へと押し出すレベッカ。笑顔なので大丈夫だと思うが、かなり怖い笑顔である。


 その後会計を済ませた女性三人がいまだボーっとしているレンを引きずってその日はファルバの宿に泊まることになった。レベッカはウルリア学院長やレイクウォーカー牧師のところへあいさつ回りをしていた。


 翌日、シロの超絶運転で再び1日ちょっとでイクスに戻ってきてしまった。出発から4日弱しか経っていない。


「ふぅ、年をとると長旅はやはり疲れるわねぇ。でも思ったよりだいぶ早く帰ってきたのだし、パパの準備の様子にもよるけど、明日か明後日には式が出来るかもしれないわね」


 レベッカはそういうが見た目からはまったく疲れが感じられない。むしろ生き生きとしている。クロとシロに似合う衣装がそろえられたせいか、早く三人の結婚式を開きたくてしょうがないらしい。


「母さん、そこまで急がなくてもいいんじゃないですか?二人と結婚できるって知ってから、だいぶ落ち着いているし……」


「それはそうかもしれないけど、落ち着いているもうひとつの理由はマリーたちをそれから見てないからでしょう。残った準備はこっちでやっておくから、クロ、シロ、レンを家につれて帰って」


 レベッカはそういって笑みを浮かべて去っていった。


 「「「レベッカ母さん、後はよろしくお願いします」」」


 レベッカに揃ってお願いする三人。


 翌日。


 ウィリアムとレベッカが大量の料理と用意した衣装を抱えてレン宅に訪れた。その後招待しておいたライオンハート一家も到着した。


「ふむ、やはりそういう結果になったか。まあ、動物時代からいい信頼関係があったしな。レン、クロ、シロ、お前達の愛情は本物だ。クリスチャンとしてはあまり感心しないが、お前達なら幸せな家庭を築けると信じている」


 ヨシュウは釈然としないところはあるものの、祝福の言葉を送ってくれた。


「俺達もクリスチャンとしてはちょっと祝福しかねるが……まあレンくんたちがいたからこその仕事ももらえたしな。君達三人の愛情も本物だと感じている。幸せにな」


「そうねぇ……確かにレンくんがビーストテイマーとして二人を強くするためじゃなくて、レベッカの話だとレンくんを支えるためにクロちゃんシロちゃんが結婚を選んだんだものね。クロちゃん、シロちゃん、レンくんを支えてあげて」



「そうじゃのう……わしもすこししこりが残る感じもするが、本当に愛しあっておる三人が結婚することで救いが神様に取り上げられてしまうということも無い気がするのう。三人とも、これから大変かもしれんが、力を合わせてがんばるのじゃ」


 ガッシュ、ソニア、ゴードンもそれぞれちょっと複雑そうな顔をしながらも祝福の言葉を送ってくれた。


「「「ライオンハート一家の皆さん、ありがとうございます」」」


 三人はまったく同時に同じ感謝の言葉を返した。

 

 結婚式自体は非常にシンプルなものだった。


「カシウス・クロ、カシウス・シロを妻とし、今日よりいかなる時も三人で結婚するという大きな罪の刈り取りの時も三人共にあることを誓います」


「「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、三人で結婚するという大きな罪の刈り取りの時も、死が私達三人を分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓います」」


 三人で結婚することの罪深さとその刈り取りを自覚していても結婚するという意志をこめてアレンジした誓約をウィリアムの前で終え、指輪の交換と誓いのキスをした。


 シンプルすぎる結婚式だったが、レンクロシロは満面の笑みを浮かべていた。

 

 ウィリアムは三人をみて複雑そうな顔を、レベッカは微笑みながらも涙を流していた。


 ライオンハート一家も三人の愛情は本物であるが、三人の結婚も罪であると分かっているため、少し微妙な笑顔を浮かべていた。


 食事が終わり、三人はウィリアムとレベッカ、ライオンハート一家にお礼を述べて、三人の結婚式が終了した。


 夜になり、レンの緊張は最高潮に達していた。


 新婚初夜なのだから当然だろう。しかも相手は理想のような犬耳美少女とカラス翼を持つ美少女だ。その二人ともが心からレンを愛してくれている。


 レンの心臓が破裂しそうなぐらいの鼓動を刻んでいる。体中大量に汗をかき、顔も赤くなり、呼吸が早すぎる。明らかな異常を示していた。


 そんな状態でも何とか勇気の貯金をすべて引き出し、二人が待っているレンの寝室のドアを開けた。


 寝室では三人で寝るために新調した大きなベッドの左右に眠るクロとシロがいた。


 シンプルだったとはいえ結婚式で疲れたのか、それともレンが悩んでいる時間が長すぎたせいか。


 眠ってしまった二人をみてレンはなんだかほっとした。ちょうど二人の間にレンが入れるぐらいのスペースが空けてあるため、レンは二人に腕枕をして眠った。


 かくしてカレンやレベッカ、トライアード、アイナスの心配は現実となってしまった。


 三人で結婚するという罪深い選択が果たしてどのような刈り取りとなるのか。


 問題は山積みだが、これで三人は本当の家族、夫婦となった。


 三人の家族としての物語が始まる。

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