表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/80

第三話 謎の男

食事会から数日後の事、私は華やかな帝都の裏で薄暗く佇む見世物小屋を見ていた。

簡素な動物園、その言葉が似合うだろう。

売値の書かれ、檻に入れられた品々が並べられている。


世間知らずの令嬢や年老いた者達は同情し、手で口を押さえ絶句している。

しかし、よく考えてみて欲しい。

価値があるだけマシなのだ。本当に価値が無ければ値札すら付かずに廃棄処分されているだろう。


生きているだけで価値があると言う者もいるだろう。

しかし、それでは横並びに等しい。

その集団から一歩抜けなければ、出し抜く事さえ出来ない。

そんな哲学的な考えを悶々と思い付いている中で奇妙な物を私は見た。


占い、出店だろうか?ローブを着た色黒の男が対面式の椅子に座り手招きをしている。


「もし、そこの紳士の方。不思議な縁があるようですね。お代は要りません。少し、私の話を聞いてはもらえませんか?」


「まぁ、暇を持て余しているし構わないよ。その水晶や不思議な絵柄のカードで簡単に未来が分かるとでも言いたいのかい?」


「いいえ、ですが人は言葉で動き出すもの。周囲は勿論、自分自身が望めばその通りの結果になると私は思っています。ご感想はお任せします、解釈も貴方だけのものだ」


そう言われると心理の誘導か?と疑いの目を向けるのと同時に、自由な思考をしても良いという一緒の安堵感を覚えた。自由とは不自由の中にしか存在しないとはこの事だろう。

そのあと、謎の男からこんな文言を伝えられ自然と噛み締めながら聴く事になる。


「これから貴方には同族を呼び寄せる機会に恵まれる事でしょう。その中心人物として人を束ね、組織を大きくするのが貴方の使命と言えると思います」


「商売ならもうしている。商会の集まりに意見を提案する事もあるが、それだけではダメなのか?同族というのは?」


「そう焦らず話をお聞きください。貴方の素晴らしい行動力を活かせば突破口は開けるでしょう。まずは自分の新たな一面を表に出し、自覚する事です。自分のルーツは時に大事にされるべきかと」


「少し自分の中で気になっている事があるんだ。それが何かのキッカケに...」


俯き、思考している間。物音がしたという記憶は無いのだがパッと顔を上げると目の前の男は消えていた。

それどころか、自分の座っていた椅子さえなくなり力が抜けた拍子にそのまま地面に倒れ伏す。


超能力を見た瞬間だった。

私はこの世の全てを把握し、それなりに上手くやってきた人間だと我ながらに思ってはいたが未知の怒りと恐怖を始めて感じた。

しかしだからこそだろうか?把握したい掌握したい全てを知りたいという思いに駆られるようにもなった。


「そこの男、こんな所で何をしている?」


次から次へと慌ただしい。路地の向こうから成人男性と少年が自分の方へと近づいてきた。

後の乙黒家の当主と海鴎少年なのだが身分も分からず、少なくとも自分の方が爵位は上だろうという憶測は当たっていた。


「私はただの男ではない。伯爵である富士宮家の次期当主だ。異様な事に巻き込まれて、此処で立ち往生していただけだ手助けは無用だ」


「わぁ!凄いお金持ちの家の方なんですね。もし良かったら僕と仲良くしてもらえませんか?駒使いでも構いません、貴方のお手伝いをさせてください」


お金目当ての純粋さ、権力に縋ろうとする強かを持つ少年を見て自然と悪い気はしなかった。

別に金銭など幾らでも取り戻せる。

しかし、人の縁とは出会っても繋ぎ止める事が不可能だ。


そう言うと心が荒んでると言われそうだが、全ての人が欲しいと思える物を自分が一心にかき集めてるという重圧。

生命を狙われるという危機感から逃れたいという思いから破滅的な行動を取る者も多い。


あの謎の占い師の正体は分からない。

自分の生涯でこれっきりの出会いだった。

しかし、その僅かなキッカケが波紋を呼び大波を引き寄せていく。


この出会いと荊子を巻き込み私は異能力に没頭していく事になる。

既存していた「黒蜥蜴」という一部門に携わり「運び屋」という存在が生まれた。


そうなればもう、自分の知らぬ物は無いと安心し。

たかを括っていた。

しかし、もっとも大事な考えは全てを把握しようとする事ではない。

自分にはまだ知らない事があると言う謙虚さだったのだと晩年になり気づいた。


皆、心の奥底で私を嘲笑っているのだろうか?

知っている事を知らないフリをして日々を営んでいるのだろうか?

私は人間を怖いと思った事は無いが、それを思うとまた見方が変わってくる。


妹はそれを思うに真面目で、自分には無い価値観を同じ家に育ちながら与えてくれた。

無償で見返りも期待せず、度胸を持って私と対峙してくれた事に感謝しなければならなかったのだろうが。

当時の私は梅雨ほどにも思えず、彼女が去ってから事の大事さを思い知る事になった。


【お知らせ】

いつも今作を読んで頂きありがとうございます。

次回、番外編も最終話となり【後書き】も投稿して完結とさせて頂きます。

宜しければ最後までお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ