第陸拾捌話 協力
剣城との連絡を終えた後「用事があると」二人に伝え本拠地を出た浅間が次に向かった場所は和田だった。
仲の良い谷川に声をかけようと近付くと別の答えが帰って来た。
「あっ、まーちゃんだ!今日のランチはもう食べた?谷川さん、パスタにしようと思うんだよね。トマトが入ってる奴」
「皆さん、麺類がお好きですよね。ただ、今日は大切な話がありまして高天原にある小山を攻略する為のメンバーを探してるんです。輸送作戦を遂行する為に協力して頂きたいと思いまして」
浅間は島全体の地図を可能に見せ、全体の内容を説明する。
まず、舞台を整えるには用具を設置する為の印が必要だ。
零央のように【怪力】で持ち上げるのは現実的では無いだろう。
破損のリスクを避ける為にも物そのものを空間転移させたいのだが協力者が必要だ。
その順路について彼女は説明を開始した。
「まず、私が信濃にある用具を小山に転移させます。細かな作業は山地に適性のある運び屋の皆さんに任せたいんです。余力のある方で構いません。お願い出来ませんか?」
「あっ、そっか。滑り台みたいにしないと行けないんだから少しずつ位置をズラさないとダメなんだね。じゃあ、まーちゃんのお願い受けようかな。残りの仕事は旭とみどり君に任せておこっと!」
しかし、次の瞬間背後に旭の姿が見えた事によって状況が変わった。
笑みを浮かべてはいるが威圧感のあるオーラが見え、浅間は彼が怒っているのであろうと感じ取ったようだ。
「鞠理、浅間と話をするのは良いが自分の仕事は終わったのか?角筈に大量の依頼人が残ってるの知ってるだろう?アイドルより忙しくて参るよ」
「しょうがないよ、谷川さん達人気者なんだから。と言う事で旭、オフを頂戴。そしたらもっと仕事が頑張れる気がするんだよね!」
「“気がする”ってだけで実際にそうなるとは限らないだろう?じゃあ、決めた俺も休む。仕事人間も今日で終わりだ」
冗談なのか?本気なのか分からない事を言われたのは勿論、普段から絶対に自分から仕事を投げ出すような事はしない彼の異常な行動に二人は仰天した。
目を見開き、旭の様子を伺うがその場から動こうとはしないようだ。
「だ、ダメだよ旭!一人ならまだしも二人がボイコットしたら仕事が回らなくなっちゃうよ!しかもそれからまーちゃんとの約束もあるのに」
「じゃあ、起動修正してこう言う案は如何ですか?お二人には私の手伝いをして頂いて終わり次第持ち場に戻ると言う事で」
「と言うより、その会話が聞こえてたから俺も協力しようと思って声をかけたんだ。仕事は早く終わらせるに限るだろう?まだまだやる事は沢山あるしな」
「そうだね。そういえば、他にもメンバーっているの?流石にトリオじゃ心許ないよね?」
そう言われた浅間は剣城と白山には声を掛けたと周囲に説明した。
これはあくまで彼女の仮説だが、島内のあらゆる箇所で印の適性を測る物差しがありそれを満たすメンバーでない限り輸送は難しいという予想だった。
実際にそれは実行した際に明らかになり大友から氷川まで用具を持って来た隼と颯にその適性は存在しなかった。
輸送規模に間違いはない、限界ギリギリの規模で指定の場所まで一時的に移動したのだが肝心の山に入った途端に印に念力を込める事が出来ないと悟った。
「颯先輩、これって誰かに操作とかされてないですよね?いや、でもおかしな話じゃないのか。前も不思議な事が起きてトンネルに印がつけられない事態に陥った事もあるし」
「後は、血筋との相性とかなんじゃねぇの?ルーツが違けりゃ土地との関係性も変わるだろうしな。俺達は配備が完了次第、翼に連絡を入れておく。明日には雪が積もってんだろ」
「ありがとうございます。そう言えば、颯さんを見て思い出した事があるんですが。貴方って一番答えに近い人なのかな?と思いまして」
突然、浅間にそう言われた二人はキョトンとした表情を浮かべるが何か気付いて事があるようで目を見開きながら口を開いた。
「あぁ!俺がばあちゃんと言うか、巫女の子孫だからって事か?噂が色々出回ってるらしいけど、ずっと昔に同じようにこの島に来た巫女がいてその子孫が小町だって言いたいのか?」
「はい。私はその人こそ、富士宮祝さんの妹なのかなと希輝ちゃんの話を聞いてそう思ったんです」
「確かに、それを彼が探しに来た。自分の片割れを探そうとして。でも見つける事が出来なかった。一体何処にいたんでしょうね。彼女は」




