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第陸拾陸話 片割れ

富士宮の元に向かった望海達は話の内容を彼女に伝えると案の定呆然としており頭が上手く動かないのか?その場の動作を全て停止させた。

それを見た隼は手の平を彼女の前に晒し労りの言葉をかけた。


「咲耶さん、大丈夫ですか?貴女の身体は自分だけのものじゃないので大切にしてください」


「あ、あぁ。その言い方だと変な誤解を生むからやめてくれ。始祖とお会いしたとさっき言っていたな、確か我が家の歴史は三百年程と聞いているからその前後で移住されてきたのだろうか?私はご本人では無く、子孫がと思っていたのだが」


「望海ちゃんの話だと祝さんは泣いていたのよね。家族を大事に出来なかった自分を悔やんでる。ねぇ、家系図にそれっぽい人っていないの?」


タスクの質問と、更に児玉の助言を伝えるものの当の本人は首を傾げた。


「もしかしたら富士宮祝には双子の兄弟がいた可能性が高いんだ。そう言った話を聞いた事はないか?」


「...良いや、兄弟の存在は未だに確認出来ないな。しかし、あり得ない話ではないんだ。望海と圭太同様、我が家では双子や三つ子の例が多いからな。それに希輝や小町の祖先の存在も気になる」


それを聞いた圭太は何か自分の中で引っかかる部分があったようだが気を取り直し、これまでの情報をまとめた。


「何か繋がって来そうだね。そう言えば、父さんから聞いた事あるけど昔の双子って縁起が悪いって言われてたらしいね。片方は影武者として生きてたとかね。僕らは男女だし別にそう言われた事ないけど」


「不審だな、そもそも家系図に載せられない存在だったと言う事なのだろうか?不義の子とも呼べそうだな。始祖はその存在を探しに此処に来た?だとしても、昔の自凝島に何があったんだ?殿もおられない時代だろうに」


更に疑問が浮かんだが、富士宮の苦労が増えてしまった為一度解散し喫茶店に戻る事になった。

店内に向かうと珍しい組み合わせを見つけ周囲は困惑する。


カウンターには店番をしていた花菜がおり、テーブル席で談笑している希輝と白鷺の姿があった。

外見や歳の差があるようだが、和気藹々と周辺の菓子屋について話をしているようである。


「ママ、ただいま!おててあらってくるね」


「皆んなお帰りなさい。さっき近所でお二人をお見かけしたから此処に案内したの。ほら、ヒヨコの形をしたプリンを購入したかったんですって」


「あっ、よっす望海!やっとアタシもチャレンジする挑戦権を手に入れたよ。これを崩さずに持って帰れば良いんでしょう?その前に食べちゃいそうだけどね」


「希輝さんはお変わりないようで良かったです。実は今さっき肆区の調査をしていまして。どうやら富士宮祝には双子の兄弟が居る可能性が出て来たんです。もしかしたら貴女のご先祖なのかもしれないと思って」


すると希輝は真剣な表情をし、首を横に振る。

以前から彼女は何も知らないと自分の能力の根源に対して意見を述べていた。

その意思表示ではあるだろうが、それと同時に以前聞いた話が何かの手がかりになるかもしれないと望海に伝える事にしたようだ。


「確かに双子なら遺伝子もほぼ一緒だろうし、重要人物の可能性は高いだろうね。でも、こうも思わない?歴史の表舞台に顔を出してるのは祝の方だとしたらその片割れは邪魔者扱いされててもおかしくない。生き方が異なってる可能性もあるよね?」


「後継者争いで離縁するに至ったと言う事でしょうか?でもご先祖様は相手を探そうとしていました、悪い方のようには...」


しかし、此処で希輝の様子が変わる。

それは時を超えた意識なのか?威圧感のある睨み、これ以上綺麗事を言うなという嫌悪感を望海は察知し口を動かすのを止めた。

仲裁に入ろうと圭太がカウンター席から声をかける。


「姉貴、真相なんて誰にも分からないんだからさ。余り特定の人の肩を持つような真似はしない方が良いよ。片割れを迫害していた本人がご先祖様の可能性だって十分に考えられるんだから。余裕のある立場になって今更手を差し伸べられても相手は困惑どころか怒りを覚えるだけでしょう?」


「そ、そうですね。配慮が足りず申し訳ありませんでした。確かに、今までこんな話題誰も話そうとしていなかった。タブーに近いものだったのかもしれません」


「いや、アタシ事ごめんね。別に望海を責めたい訳じゃないんだよ。会話の流れ的にそう見えてもおかしくないしね。とりあえず、今言っておきたい事はもしかしたらその片割れは“女性”なんじゃないかな?と思って。血統からしても母系に富士宮の血が入っているしね。それと以前教団絡みで聞いた話なんだけど、大鯰にはそれを制御する巫女の存在がいて皇族や貴族生まれの人が選出されてたんだって」


「じゃあもしかしたら双子の姉妹はその巫女になる為に此処に来られたと?まるで颯さんのお婆様のように。そうか、答えはもう出ていたんですね。ありがとうございます希輝さん」


すると彼女は機嫌が良さそうにするが、ふと苦笑いを浮かべる圭太の視線を見逃す事はなかった。



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