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第陸拾参話 限界

「あっ、旭さん!こっち、こっち!力持ち自慢大会の会場は此方ですよ。朱鷺田さんを担いで来てもらえますか?」


「いや、昔だったら良いがトッキーも重くなったしな。と言うか、今回の集まりは物理的な力自慢をする事じゃないだろう?」


望海と旭の会話に側で聞いていた希輝は苦笑いを浮かべながら以前の事を思い出していた。

何故なら過去に彼に宅配の依頼をした事があり物質を転移させるという経験がある。

今回の輸送作戦の参考になるのではないか?と思ったようだ。


「だけど旭さんがオーパーツって言われてるのを改めて納得しました。とは言え、説明を聞いた時は正気?って思いましたけどね。翼が最初にそれに気づいて感じの本人はタワマンの中なんだとか?」


「そうなんですよ!翼の癖に生意気だと思いませんか!?上から私達に指示を出すなんて何様のつもりなんでしょうね。とは言え、新しい手がかりを得られたのは間違いありません」


凛々しい表情で前向きな言葉を紡ぐ可能とは裏腹に不機嫌な表情をする朱鷺田の姿とそれを宥める谷川の姿もあった。


「なんだよ、旭は俺の事を太ってるって言いたいのか。普段は嬉しそうにしてる癖に、こう言う時だけ都合良いよな」


「いやいや、みどり君の場合幸せ太りでしょう?...と言うか定期的に持ち上げる機会があるのか。ふーん」


世間話は終わり、今回は山岸が中心となって会議を進行する事になりそうだ。


「皆んな、業務の合間を縫って集まってくれてありがとう。バディの代理として冬季の大祭をスムーズに進行する為に指示を此方から出させてもらう。結論から言うと前回同様、皆の協力が必要だ」


「俺達で大規模な舞台を作れって言いたいんだろう?特にスキージャンプは花形競技だし、待ち侘びてる人も多いだろうな。それが無い?って事は開催以前の問題だろう?」


旭の真実かつ的を得た発言に周囲は暗い雰囲気につつまれる。

しかし、その流れを断ち切るように発言をしたのが光莉だった。


「良いや、実際にはあるんだよ。一〇〇メートル以上の高低差が必要なのは勿論、長い滑走路が必要なのは分かってる。そしてその施設や用具は解体されてバラバラの所に置かれてる。これを適切な場所に送り届ければ良いって言う話なんだよ。ほら、簡単でしょ?」


しかし、その発言にガックリと肩を落とした者が数人いると言うのも事実だった。

その中で希輝はまず、場所の候補地を定めた。


「まぁ、この島で一番高い場所ってなったら高天原にある小山しか思い浮かばないけど。そもそも私達印を持ってないし。地形に適正があるとも限らない。それと肝心の設備の残骸は?」


それと同時に仕事の早い山岸は自分用に制作した資料をタブレット越しに確認している。

その中で二つの地名が出ており、それは一部の運び屋達には馴染みの深い場所であった。


「そもそも、この大祭のメイン会場は大友だ。調べてみたらそれらしい設備の残骸を見つけた。後は浅間の協力もあって信濃でもある事が事前調査で分かってる。それを野外に持ち出せれば...」


「それが一番難しいだけどな、そもそも俺達運び屋は建築家でも無ければ大工でもないんだぞ。施工にだって時間がかかるんだから完成までに普通に考えたら間に合わないだろう?そもそも現実的じゃないんだよ。この案件は」


旭の苛立ちを隠せない表情と声色に待ったをかけた人物が居た。

周囲はそれを珍しいなと思い眺めて居たからである。

その正体は颯だった。

普段、病弱で発言に一番程遠いと思われているからであろう。彼には何か考えがあるようである。


「勿論、アンタの言う事はごもっともだ。俺たちには時間がない。ただ、今の比良坂町は少し違う点がある。“真実を映し出す鏡”があり物体が顕在化している事だ。流石に俺達じゃ時を戻したり進める方法はない。でもこれなら」


「...颯さん、貴方凄い事を考えますね。もし仮に相応しい場所に舞台を設置する事が真実なのだとしたら材料を全て揃えるだけでも顕在化してしまうと言う事でしょう?それを考えると警戒した方が良いのかもしれませんね。この町中事態が表面化した真実によって歪められている可能性があるんですから。最早、別世界に私達は迷い込んでいるのかもしれません」


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