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第伍拾仇話 閉幕

「...以上が海岸や湖で私達が目にして来た物となります。報告は以上です。長話にお付き合い頂きありがとうございます」


島内の調査を終え、浅間達三人は協会の会長室へと足を運び証拠の写真を親子に見せた。

それだけでなく、扉の向こう側には様子を見かねた阿闍梨と朝風の姿もあった。


予想の範囲内か、報告を聞いた二人は目を泳がせるのは勿論。顔を真っ青をしに身体を震わせる。

色々と質問や反応をしたい所なのだが、情報の多さから頭の処理が追いつかず何も言えずにいた。


こうなる事を最初から分かって居たのか?

朝風は溜息を一つ吐いた後、こう口を開いた。


「隠すつもりも無かったが今は町の事を優先して欲しいと思い。敢えて言わなかった。あの巨大湖はワシが自凝島を視察した時からあの様子でな。楽観的だと言われそうだが神秘的な場所だと思った」


「...ま、まぁ。お殿様の仰りたい事は分かります。でも、私達が驚いているのはこの島に先住民がいて。今までの手がかりだと戦争の影響で亡命してきた人達が比良坂町に住み着いたと思ったの。しかし、そうではなかったというの?」


節子の疑問に谷川は首を傾げる。

今までの町の状況、そしてこの島の歴史に何か食い違いがあるのだろうか?

いいや、そうではない。この二つの問いは矛盾するものではない。それを周囲に伝える事にしたようだ。


「別に節子お嬢さんの考えも谷川さん達が見て来た事も矛盾しないんじゃない?元々この町って壁で囲まれていたし、周囲の状況なんて分からない。だから外に住民がいても民家が立っていてもおかしくない。割となんでもアリの状況だったと思うよ」


それに助言をするように阿闍梨もこれまでの事を振り返りながら順序立てて話を進める事にした。

一番最初に自分達が外の世界を知るキッカケになったのはなんだったのか?まずはそこからだと思いながら説明を始める。


「元々以前の比良坂町は人の流れも制限されていました。ただ、私達は漠然と外の世界があると言うだけ知らされていた。その規模が思ったより狭いか?広いかは皆さんの考えにお任せします。ただ、事実として私達の住む比良坂町は人工的に区画化され人も同じ管理されていました。しかし、今回見た民家達に法則性のような物はまだ発見出来ていません」


「確かに。私は地理や地形に疎いんですが、少し気になったのは楽器ですね。もしかしたらそれらを制作職人が住んでいた可能性があるのかな?と考察しています。芸能家系も此処には多いですから子孫が町に流れ着いていてもおかしくないかと」


すると節子は目を見開きやっとペンを持つ力が入ったのかメモを書き始める。自分の考えをまとめているようだ。


「比良坂町に昔からいる一般人並びに青い血を持つ皆さんの祖先は海岸や湖の底で暮らしていたという事かしら?楽器や工芸品をかつて存在していた帝国に売っていたのかしらね?物々交換とか?お殿様の頃はどうなっていたのかしら?」


「ワシが赴いた時には遺跡のようになっておった。もうその頃には湖の底に沈んでおったよ。ただ分からんのが、ダムの用途として水没させてのではなく自然の力によってあの状況が作り出されたと言う事じゃな。そこの裏話までは流石にワシも知らんよ」


これまでの話を聞き、敷島会長が総括する流れとなるが。

正直、これまでの島の歴史を振り返るにも空白があり全てを解き明かすとまではいかない。

古い歴史を持つ富士宮家に頼りたい所だが、もうこれ以上情報が出て来るという可能性は低いだろう。


「皆さんの意見からして民家の劣化具合から二〇〇年の歴史があると言う事で結論付けるとしても運び屋は歴史学者ではないし、真相を知る物は恐らくこの町にはいないでしょう。朝風名誉会長ですら正確に当時の島の様子や用途を知らないとなると時代を遡るのも難しいと思います」


「済まんな、何か古い記録でも持っておけば良かったが戦火の中。悠長に書物を持ち歩く者もおらんじゃろ。ワシも当時は驚いたからな、突然現れた島に避難せよと言われた時は目を丸くした」


「じゃあ、お殿様のご友人に聞いても同じ話しか聞けないと言う事になってしまうわね。当時の島の事を知ってる人は居ないのかしら?それこそ、始祖である富士宮祝さんなら何かご存知かもしれないわね。はぁ、幽霊になって出てこないかしら?そしたら面白い話も聞かせて頂けるのにね」

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