第伍拾漆話 街道
普段から人の賑わう角筈に、珍しい面子が揃った。
純粋で好奇心豊富な零央は周囲を見渡し、興味深いと思っているようだが近くの大人達はバツが悪そうな顔をした。
「ゆかりおにいさん、ここすごいキラキラしてるね!ほうせきみたい」
「...あぁ、済まない零央。欲望渦巻く大人達の場所に連れて来てしまって。浅間、夜には梓と甲斐路が来るから情報交換だけはしておいてくれ」
「此処、マラソン競技のルートに入ってますからね。信濃や甲斐も範囲に入ってますから下見をしておかないと。此処のルート、特殊ですから」
その会話を側で聞いていた谷川は懐から地図を取り出しルートの書かれた赤い線をなぞっている。
「当たり前だけど、町の中だけじゃ競技として距離が保てないから島を周回するように構築されてるんだよね。ランナーに付いて行ったら分かるかも?」
「みんなすごいね。れおとどっちがはやいかな?」
それを聞いた三人は即座に彼の方に軍配を上げるが、目を合わせて全員何も言わないでおく事にした。
零央はこれから島の外へ出る準備をしており、肩にかけたポシェットを触っている。
以前、彼は島の外に行き人魚を発見した経験がある。
浮遊とナビゲートは広範囲の探索に向いていると白羽の矢が経った。
競技場をスタートし。角筈や甲斐、信濃を抜けて比良坂町そのものから出る。
その後、自凝島を周回し再び町に戻る。
しかし、完全な周回というには及ばない。
マラソン競技は約四十二キロメートルと決まっている。
片道二十一キロの地点で折り返す計算だ。
運び屋達はこの範囲の安全を確保すれば良い。
しかし、先日の件で周囲に疑問が生じた。
「確か、朱鷺田さんが光莉ちゃんと一緒に牧場に行かれた時に謎の石碑を見つけたんですよね?もしかしたらそれに似た物が島のあちこちに散らばってる可能性があります。私達は考古学者ではありませんが、調査して島の真相を知る必要があるかと」
「とは言え、仕事も裁きながらそれをやるのは苦行だな。俺は依頼に戻る。谷川、二人の案内を頼むぞ。いつもキリギリスなんだから、こう言う時ぐらい働きアリになってくれ」
「違うよ、みどり君。働きアリにだってサボる子はいるよ。組織に何かがあった時に火事場の馬鹿力でサポートするのが谷川さんの役目なんだ」
その言い方では自分がサボっている事を認めてるような物なのでは?と朱鷺田は思ったが時間が押している為、その場から離れた。
零央は地面を見つめてアリの巣を探しているがアスファルトの道にそれは存在しない。
「あっ、ネズミさんがいる。おうちがちかくにあるのかな?」
「零央君、触ったらネズミさんが驚いてしまいますから見守っておきましょう。後、数日すれば閉会式。そうすれば、夏季の競技は終わります。これで一息つけると思いますし、もう一踏ん張りです」
「早く平穏な日々が戻ると良いんだけどね。気が遠くなる話だよ。とりあえず、もう既に警備体制が引かれてるし一般人の立ち入りは出来ない箇所があるからそこを中心に見て行こうか?」
零央の【ナビゲート】が届く範囲で建物のスキャン、生体認証を行うが人の波が押し寄せ。
不審人物の挙動を把握し監視する事は不可能に近かった。
此処には下町もあり、地下も複雑に入り組んでいる。
谷川は待ち合わせ場所以外にも要所は把握しているが完全に網羅してるとは言えない。
この手段は現実的ではないと悟ったようだ。
「流石にこの人混みじゃ逆に情報が手に入らないよね。此処は町長さんに車を出してもらって外に行こっか?零央君、ドライブしよう。今、手配するからちょっと待ってて」
それを聞いて浅間は申し訳ないという思いが優ったが、これなら新天地に向かえ調査も出来ると新たな可能性を見出す事が出来た。
「じゃあ、れお。また、うみにいきたいな。あそこもね、たいようでキラキラなの」
「確かにセーリングやカヌーの会場になってる場所はチェックしておいて損はないと思います。私は湖も気になりますね。何か打ち上げられているかも」
「じゃあ、行き先は決まったね。まずは水辺を中心に見て回ろうか?何か新しい手がかりが掴めるかも」




