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第伍拾壱話 声

「姉貴がこんな所にいるなんて珍しいね。どうしたの?不祥事がありすぎて担当から外されちゃった?」


同じ、武道場内。観客席にいる圭太にストレートな疑問を言われた望海は苦笑いを浮かべたが確信に迫るような事は言わなかったのでそう言う意味では安堵していた。

本心を誤魔化すように、気疲れした様子でこう言った。


「名誉会長からの指令で私の周囲にだけハプニングが起きるので調査から外されたんですよ。ほら、裏で工作してないとも限りませんからね」


そう返事すると彼は目を見開くのと同時にクスリと笑みを浮かべ笑っていた。

それではまるで自分の姉がこの騒動を招いた原因だろうと思ったのだろう。


「じゃあ、暫く大人しくしておかないとね。そうだ、その間僕に手に持ってる懐中電灯貸してよ。ティムと一緒に近くに霊がいないかどうか?調べてみるからさ」


「そうですね。色々な事がありすぎて気遅れしている部分もあるので私は此処で休んでます。くれぐれも注意してくださいね」


そのあと、圭太とティムは会場の外へ向かい外観を調査していた。


「此処って確か、新しく作られた建物だろう?正にこの大祭の為に作られたと言っても過言じゃない。こんな場所で本当にハプニングが起こるのか?」


「まだ分からないよ。でも、かなりの収容人数が見込まれるし。人の波に乗じて何かあってもおかしくないし。気を引き締めないと。何より姉貴が困ってるしね」


「あの普段、落ち着いてて冷静なセカンドがな。なぁ、東。お前は知らないのか?こうなった原因とか」


「でも、それは開会式というか聖火が影響してるって皆んな言ってたけどね。なに?納得行かない顔して。僕達が隠し事をしてるとでも言いたいの?」


ティムもそうだが圭太も異国の運び屋だ。

此処の人間ではない。だからこそ、この異常事態に何か気づける事もあるのだろうと彼は思考を巡らせているようだ。

それは使命感に似た感情であり、自分達の滞在している間にこの問題を解決しておかなければならないと思ったようだ。


「良いや、まだ分からない。でも、俺達が無意識下で大きな勘違いをしている可能性だってあるだろ?東、お前はセカンドの一番側にいる人間だ。何か違和感や疑問を抱いた事はないのか?」


「別に姉貴が隠し事をしているようには思えないけどね。あったとしても僕なら直ぐに分かるよ。でも、そうだな。あるとするなら両親の方じゃない?ほら、僕らって親といられた時間がそこまでなかったし。流石に父さんと母さんの生い立ちを全て知ってる訳じゃないからさ。でも、これを聞いて問いただすのはやめてよ?それが一番嫌なんだからさ」


「分かってる。だからこそ、遠回りでも良い。親戚に聞いてみるのはどうだ?関係者の中に誰か知ってる人物がいるかもしれないだろう?」


その言葉に圭太は素直に頷き、無線で富士宮の方へと連絡を入れる事にしたようだ。


「此方、富士宮。圭太から連絡が来るとは珍しいな。君たちは武道場の担当だったか。何か問題でも?」


「良いや、そう言う訳じゃないんだけど。ちょっと、母さんの件で聞いておきたい事があって。実家の方で何かハプニングとか事件が起こってないか調べてたんだ。...何か子供達には言えない隠し事があるんじゃないかと思って」


「成る程な、確かに富士宮家は特殊な場所だ。何があってもおかしくないが、彼女の縁談から今日に至るまで不祥事が起きたという話は聞いた事がないな。花婿、君達の父上の体調も良好だったと聞いている。ただ、言わせてもらうなら二人して出産前後に暫く表に出ていない時期があった。舞台の関係者も通常通りの活動が出来なかったと当時話していたのを覚えている」


「それは僕達を育てる為にって事じゃないのかな?育児の為に仕事をセーブするのは可笑しな話ではないと思うけど」


「そうだな。私達も当時、そう思っていた。ただ、違和感が残るのも事実だ。後になって、この事を掘り返す事になるとは思わなかったが。富士宮家の女性は精神をすり減らす機会が多い。それは共通して出産へのプレッシャーだろう。君達の母親も一緒だと私は考察している。出来れば彼女の口からその話が出るまで見守ってはくれないか?」


どうやら富士宮は母親の隠し事についてある程度の理解と検討がついているようだ。

他にも違和感が無かったかどうかを聞き出していたがそれ以上に興味深い話を聞く事は出来なかった。

圭太はもう一人の関係者に話を聞いてみる事にしたようだ。

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