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第伍拾話 隠し事

翌日、調査を終えた望海は喫茶店のカウンターチェアに座り俯きながらカウンターの上に置かれたコーヒーカップを凝視していた。


「...の...み!望海!私と玉ちゃん次の依頼があるからもう行くよ。零央君の事よろしく。昼休みには戻ってくるから」


「は、はい!分かりました、行ってらっしゃい気をつけて」


全ての会話を聞き取れず、途中までしか内容を理解出来なかったと彼女は溜息を吐いた。

それは周囲も何処となく察しており、彼女から相談がある限りは聞かないという信頼に近い物があった。


確かにいつも通りの問題なら、望海は周囲に相談していただろう。

しかし、今回の問題は直感的に何故か隠し通さなければならないという思いがあった。


理由は彼女でさえも理解出来ない。

しかし、心の片隅で何か引っ掛かる事があるのだ。

その答えが出るまではと思っていたが隣でブドウジュースを飲む純粋で天使のような彼を見ると隠し事は出来ない様にも思えた。

どうしたら良いのかわからない中で、こんな風に相手に伝えた。


「零央君、私。見えない誰かと鬼ごっこをしているんです。どうやったら逃げ切れますかね?」


「おにごっこ?れおなら、みつからないところにかくれるよ?それじゃあダメなの?」


「いいえ、今回の鬼は厄介みたいで。私の行く先々で現れるんです。でも、見えないから怖くて。どうしたものかと困っているんです」


そんな会話をする両者のリアクションは違っていた深刻な表情をする望海とは対象的に零央は嬉しそうな笑みを浮かべる。


「きっと、のぞみおねえちゃんのことがすきなんだよ。あいたいからいっしょにいるんだ」


そんな前向きな言葉に勇気付けられながらも、昨日の調査報告をする為。瑞穂と合流し協会へと向かった。


「えっ!?隼さんが夜間に姿を見られた?大丈夫なんですか?問いただされたりとかは」


ドンドン、平和から遠のき望海の思惑から外れて行くのを肌で感じていた。

側にいた瑞穂は自分も此処に居れば違和感を持たれるとその場から立ち去る意思を固めていた。


「とは言え、あの2人だからな。幸運な事に詳細を迫られる事は無かった。俺が先に気づいてその場から立ち去った場所にも偶然武曲さん達もいて調査協力をする様に頼まれたんだ。殿から仕事を押し付けられたと思ったらしい」


「それなら良かったわね。私も昼に能力を使ったら危ないし。余り手の内は晒さない方が良いかも。とは言え、緊急事態なのは確かだから隼君にも伝えておくわね。望海ちゃんの関連する場所に幽霊の痕跡があったのは確かよ。そう言えば、あれから家の探索はしたの?」


「...は、はい。裏口、玄関。個人の部屋は流石に無理でしたら出来る所は調べて来ました。以前から心霊現象がある家とは思っていなかったのですが。大祭が始まる前後の物の動きや配置が変わっているんです。私はてっきりお母さんや圭太が動かしたと思っていたんですが」


「そうじゃなくて、競技中と同じ事が望海の家で起こっていた可能性が高いって事か。確かに、俺も母さんが家にいるようになって物を探すのに苦労するようになったから違和感を感じにくい場面ではあるか。家族が動かしたと思っても仕方ないしな」


「どうしよう。一度、家族を別の場所に避難させるのは違うというか難しいわね。だって家そのものじゃなくて人物を狙っての反抗でしょう?注意を引きたいとか思えないわ」


「此処は潔くスルーして相手の興味関心が収まるのを待つしかないと思います。相手の狙いは私だったとしたら自分が動かなければどうにかなりますから」


「とは言え、現実問題としてそう言う訳には行かないからな。選手の送迎や護衛は場所が限られているし。代替が不可能だ。特に望海は表で活動してもらわないと困るしな」


どうやら今の段階ではベストな答えを導き出すのは難しいようだ。

それでも、大祭は止まらないし奇妙な出来事は続いていく。

しかし、この状況でも分かる事があるのも確かだった。

望海の行動が今後の明暗を分ける。それは揺るがないだろう。

開催6日目、望海の姿は武道場にあった。

朝風の采配により、競技対象外。デモンストレーションで行われる会場へ足を運ぶ流れになったのだ。


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