第肆拾仇話 帰り道
「では、隼さんに壱区を見廻って頂いてる間に私達もそれぞれの担当場所に向かいましょう。弐区は私が担当しますので安心してください」
「でも、単独行動は危ないんじゃない?此処は私と望海ちゃん。咲ちゃんと剣城君で別れましょう。じゃあ、案内よろしくね」
瑞穂と共に弐区に向かった彼女だが、まずは自分の身近な所を調査しようと真夜中の喫茶店に向かった。
静寂の中、まずは外壁や看板。花壇を調べようと照射したが地面に足跡がある程度で大きな異変はなかった。
それ以上に違和感を持ったのは望海が普段水やりをしているジョウロの取っ手にそれが付着していた事である。
しかも、最早斑点ではなく覆うように模様が出来ている。
これでは側から見れば長方形だ。
「変ですね。このジョウロ普段は私と零央君だけが使っているはずなんですが。日にちが経つにつれて模様が増えたとか?いいえ、だとしてもおかしな話ですね。この斑点は正に私達の探してる物なはずなのに。こんな場所にだなんて」
「ねぇ、もしかしたら望海ちゃんか零央君が普段使用してる物に反応してるんじゃないかしら?中に入って詳しく調べてみない?お気に入りのマグカップとかないの?」
突然言われた瑞穂から助言に望海はハッとし、中に入ってまずは彼が普段から使用している子供用のコップやカトラリーを確認するが、そう言った特徴は見受けられなかった。
これに彼女は安堵し、近くのカウンターチェアに座り込んだ。
「良かった!もしかしたら零央君が狙われてるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしましたよ。彼の実力なら大丈夫だと思いますけど、相手は目に見えないですからね。どれだけ強くても幽霊相手じゃどうにもなりませんよ」
しかし、ほっとしたのも束の間。
瑞穂から「きゃあ!?」という悲鳴が聞こえ、視線の先を凝視すると望海が普段使ってるコーヒーカップに同じ模様がある事に気付き2人は背筋を凍らせた。
望海は自分の人生経験の中で初めて自分にストーカーのような存在がいるのではないか?と思い至り、精神を消耗している感覚があった。
しばらく動けそうに無く、足が震えて動かない。
相手の目的はなんなのか?
彼女にとっての貴重品といえば、この地下にある倉庫の妖刀だ。
それだけでも安全確保しておきたいと瑞穂に指示を出し、その恐怖を押し殺して下に向かう階段を降りた。
この間も下に足跡の様な斑点があり、ドアノブも握られたような痕跡もあった。
調査を進めるにつれて、奇妙な生活感や行動パターンがある様に思え好奇心以上に知りたくないという拒絶反応が起こる。
気を取り直し、妖刀の行方を探すと無事にあるのを確認する。他の道具も破損はないようだ。
再度上に戻り、喫茶店の異常を確認した後。外に出た。
「一応、確認の為に私の実家に行っても良いですか?夜間なので裏口からになってしまいますが。瑞穂さんも一緒について来てください」
「勿論!ご家族は無事なのかしら?ずっと暮らしてて違和感はなかった?」
「と言うより、深く考えた事がなかったんですよ。お母さんやティムさんが家で過ごすようになって。現実でも忙しい日々を送ってましたから」
それに瑞穂は頷きながらも、疑問を浮かべているのも確かだった。
なぜ、幽霊は望海に固執するのか?そのキッカケはなんなのか?
「望海ちゃんは今回の件で自分が関係者っていう自覚がないのね。何か引っ掛かる事ない?」
望海は少しの沈黙の後、首を横に振った。
彼女の中でも不明な点が多いのだ、説明しようにも空白だらけでそんな事を出来る状況ではなかった。
今ある現象の中で手がかりを得ようと家の外観を調べると案の定と言うべきか裏口でさえも把握されており、何度も出入りした痕跡がある。
まるで自分の生活行動を模倣されているようにも思えた。
もし、自分の背後に何かがおり活動しているとしたら?
確かに、行動の矛盾は無さそうに思える。
「自分のいる場所に幽霊がいる?そんなの事あり得るの?だとしたら私は、いない方が良いんじゃ」
そんな真相に気付きながらも何も出来ないでいる彼女の姿があった。




