第肆拾漆話 点灯
深夜24時を過ぎた協会に武曲と五曜の姿があった。
2人の目的は名誉会長室に向かう事であり、其方へと向かうが歩調や行き場所が同じな事に次第に苛立っているようだ。
「なんだ、五曜。仕方ないだろう?殿からの命令なんだから。なんでも昼間、異常な出来事が起こったらしい。というより、そればかりだ」
「分かってるわよ。だから、余裕のある夜のうちに犯人を探そうっていう戦法でしょう?殿が何か閃いて手段を私達に教えてくれるというから此処に来たの。失礼します五曜妃翠、冬楡武曲只今参りました」
五曜はこの後、詳細な説明や指示が飛んでくるだろうと予想していたのだが。
突然、朝風から懐中電灯を渡された困惑する。
「よぉ、同じタイミングで来るのぉ。これを持って町中を照らして来てくれ。斑点を大量に見つけたらワシに教えてくれ。頼んだぞ」
「ちょ、ちょっと!お待ち下さい!何かと思えば肝試しですか?そんな場所なんてあるのかしら?それに私達では全ての町を回る事は出来ません」
「分かっとる。相手は厄介じゃからな。今は少しでも人手が惜しい。お前たちは壱区を回れ、ワシらはそれ以外の区に向かう」
そのあと朝風は小坂の秘密倶楽部へと向かい、メンバーがいる事を確認した。
そんな中で望海は不安な表情をし、周囲を見渡していた。
「なんだが、大騒動になってきましたね。とりあえず私達も一目につかない場所を意識して調査してみましょう。この懐中電灯を使えば良いんですね」
「これに黄泉達と同じ能力が宿るようにしちょる。照射した範囲なら可視化が可能よ。暗所である必要はない。試しにやってみようか?」
彼は、周囲に説明するように光を当てると人の足跡らしき物が映し出された。
これは通常であり、彼も気にする素振りはない。
問題なのは斑点状の模様であり、この痕跡を追う為に行動を止めずにいるようだ。
しかし、朝風にはある考えもあった。
此処はセキュリティを強化しており、彼が現実へ帰ってきたのに合わせて更に力を入れた部分だ。
それを食い破って侵入出来るような存在はいないと思っていたがそうではない。
斑点はカウンターテーブルにチラホラ見え、更には絵のある部屋の方向にまで伸びており。
この事実は彼を驚愕させた。
「なぜじゃ?まるで構造を知ってる。情報が筒抜けになるなんてそんな事ありえん」
「スパイがいるんじゃないか?或いは情報を漏らした奴がいるとか?正直、不可解だろう。会場内も計画的に犯行に挑んで成功してるんだから。完全犯罪と言って良い」
「確かに隼さんの意見も分かりますが、となると比良坂町の地理を知ってる。ずっと暮らしてる人物でないと可笑しいですよ。朱鷺田さんとまでは言いませんが、それなりに熟知してる人でないと」
「確かに、まるで運び屋みたいよね。だってそうじゃない?行動パターンが私達と似てるんですもの。儀式に協力するくだりから大祭のハプニングに至るまで私達をまるで監視してたみたい」
その瑞穂の助言に剣城は何か思う事があったのか。
目を見開き、口を開いた。
「確かに全員の住所を把握して、手紙を入れるなんて身内じゃないと不可解だ。監視カメラ?位置情報以外となると誰かに霊が取り憑いてる可能性は?」
「そんなまさか。理知的な剣城さんらしくないですよ。もし仮にそうだとして正体はなんなんですか?妖怪とか?」
「不明な点が多いが、探索出来る手段があるというなら試してみる価値はある。街中で気になる場所があれば積極的に利用しろ。時間が惜しい」
咲羅の号令によって皆外に出て懐中電灯を照らす。しかし、そこに現れたのは異常な光景だった。斑点が複雑に絡み合いチェーンのようなまるで何重にも往復したかのような複雑な模様を描いているのだ。
それには望海も仰天せざるを得ない。
「何が一体どうなって?ずっと亡霊は此処の近くにいたんですか?それで秘密倶楽部の中に入ってる?私達の生活範囲にも侵食してるなんて。こんな事、ありえないと思ってた」
どうやら、新しい手がかりを掴めそうである。
しかし、町中を探し回るのにはまだ時間を要するだろう。
望海達は夜明け前まで調査に乗り出すようだ。




