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第肆拾肆話 マーメイド

大祭の二日目となり、昨日のハプニングに備えて水泳競技が行われる会場へと主要メンバーが集結していた。

聞き迫る状況の中、なぜか山岸は泣きながら翼を抱きしめていた。


「やっと会えたよ翼!俺、嫌われたと思って心配しちゃった。だって数ヶ月も全然会えてなかったんだよ?今まで何処に行ってたんだよ」


「ちゃんと連絡入れたじゃないっすか!マンションのエレベーターが壊れて降りられなくなったって。俺の方がハラハラドキドキしたっすよ。閉じ込められてるようなものなんだから」


感動の再会に目もくれず、隼や青葉を中心に昨日の出来事を周囲に共有し今日に向けての対策を念入りに行なっていた。


「とは言え、俺達はあくまで試合を見守るだけなんだけどな。試合中に起こるなら事前準備している冬季の競技は候補から除外して良い物として警備を協力して行ってもらう」


「メダルの期待のかかる選手には特に目を離さないで。直近の大会で功績を挙げた人たちも多くいるわ。自由形は今日と明日で表彰もあるから特にマークしておいて」


望海と光莉は2人の落ち着いた姿勢に感心し頷く。

まずは選手達の練習風景を見ようと見学していたのだがある事に気づいたようだ。

それぞれのレーンで泳ぐ選手の技法が異なっている。


「ねぇ、望海。あの泳ぎ方、結構早いタイム出そうだけどなんて言うの?私、知らないかも」


「えっ、クロールですよ?知らないんですか?...そう言えば、地元の選手の方達。横泳ぎですね。そんな事ありえます?」


しかし、望海の疑問は大きな問題へと繋がって行ったようだ。

国によって文化や情報網が違うため、特にフリースタイルとなると差異が出てしまうのだろう。

1秒コンマを争うこの世界では無慈悲なハンデだった。


「いやー、強いね。ホーネットの選手層は厚いな、流石スポーツ大国。今回でメダル何個持ち帰るだろう?個人の他にも団体競技もあるしね」


「水泳や飛び込みは8日間の決着ですからね。同じプール競技となると水球も当てはまりますか。其方も異常がないかどうか?チェックしておかないと」


どうやら、つつがなく進行しているのを見た他のメンバーは穏やかな時間をこの目で確かめた後自分の持ち場に戻るようだ。


「寿彦さん、私達も帰りましょう。見るべき所は沢山あるわ、どうしたの?辺りを見渡して。何かあった?」


「いや、気のせいかな?何かの視線を感じてさ、誰かに見られてる気がするんだよね。鶺鴒はさっき飛ばして異常はなかったから何もないとは思うんだけど」


「流石、山ちゃんは仕事が早いな。結構な人が集まってるしそれじゃない?メディアとかもいるからね。誰かと目が合ってもおかしくないよ」


「メディア...あっ、もしかしてカメラじゃないですか?山岸さんが言いたいのって。会場内で盗撮が起こってるとか?」


すると光莉と青葉は腕を鳴らして今にもその拳で破壊しようとしそうな仕草を取る。

それを見た2人は苦笑いを浮かべた。


「青葉さん、気持ちは分かるけどさ。証拠品として運営に提出する義務があるから壊さないでね。あるとすれば観客席かな?下はテレビ局のカメラで盗撮か分からないや」


そのあと、2人は会場内を探し回り十数台の盗撮カメラは勿論盗聴機を発見する。

内容は全て水着姿の盗撮であり事件性のある物として関係者に渡す事が出来た。


「スポーツを嫌らしい事に使うなんて許さん!私が成敗してくれるわ!にしても、早く見つかって良かったよ。まだ競技初日だから良いけど、後半になって見つかったとなれば大騒ぎ待った無しだからね」


「そうですね。それだけは不幸中の幸いだったと思います。スポーツはハプニングだらけですね。まぁ、こうなるのも私達だけだと思いますが。そもそも、開会式前のテロの時点でおかしいんですよ。穏やかな大祭はいつ始まるんですかね?」


「さ、さぁ?恐らくだけど、全てが終わった時。次回に期待と言って良いそうなぐらいのクオリティでしょうね。行う意味は必ずあるとは思うけど」


3日目はまだこれで終わったという訳ではない。

運び屋達はそれぞれの場所でそれぞれの使命を果たす事になるだろう。

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