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第肆拾参話 力持ち

「良かった、重量上げは皆さん調子が良いみたいですね。今日中に決着がつくならメダルも夢じゃないかと」


バレーボール会場の最中、別の会場では阿闍梨がウエイトリフティングの競技を妹の実梨や凛と共に見学をしていた。

競技によって開催期間が異なる為、スケジュールを組み合わせれば対応できると節子は考えたようだ。


「此処は、7日間で次に向かうカヌーは3日間で決着だね。でもお兄ちゃん、別の競技は大丈夫なの?体育館で騒ぎがあったみたいだけど」


「彼方は人がいますし、今重要なのは目を離さない事です。とは言え業務の間にこんな事をしている訳ですから、必ず隙は生まれるでしょう。その間に何か仕掛けられていないと良いんですが」


「でも、此処は凛達三人で巡回してるし。選手も関係者も男性が多いから何かあっても対象出来そうだけどね」


確かに周囲は穏やかな時間が流れており、何か起こりそうな気配はないように思える。

しかし、阿闍梨は微かな違和感に気づいたようだ。

親しい朱鷺田の話を思い出し、過去にシャンデリアが上から落ちて来たと聞いたのが理由だった。


「おかしいですね。照明が微かに揺れているような。地震でしょうか?」


「えっ、そんな事誰も言ってないよ。見間違いじゃない?それか誰かが意図的に細工をしたとか?落下したらどうなるの?」


「垂直落下だと、(おもり)が置いてある場所に当たる事になるね。移動は...現実的じゃないな。少なくとも凛達じゃ動かせないよ。とりあえず下に行って、事情を説明しておこうか?」


しかし、その問題が直ぐに解決する事はない。

翌日には移動させるという約束をし、再び観客席に戻る他ない。

ただ、これが大きな問題になるとも思えなかった為三人は見守っていた。

そのあと、彼の元に無線が届く。


「阿闍梨さん、ご無事かしら?敷島節子です。今、体育館で騒ぎがあったようで全員の無事を確認しているの。其方で何か違和感や危険な事に巻き込まれているという事はないかしら?選手村のテロリストは逮捕されたけど何も口を割らなくてね。何処に雇われたのか?も教えてもらえないのよ」


「此方なんですが、照明に僅かな不備があるようなので関係者に伝えておきました。私の飛躍した考察なのですが、おそらく財閥関係者が派遣した存在なのかもしれませんね。だって可笑しいと思いませんか?これだけセキュリティを万全にしながら、問題が多々起こっている訳ですから内側で細工が行われていてもおかしくないかと」


「まぁ、名探偵みたいね。皆さん色んな意見をされていてね。カードを送ってきた相手が同じく大祭の騒動を起こしてるんじゃないか?っていう人もいるのよ。悪戯にしては大掛かりだし、複数犯や貴方と同じ組織的な犯行だと予想するけどね」


その言葉に彼も疑問は持たず、納得しているようだが節子の意見に対して追加の意見を出した。


「体育館の件、かなり大騒ぎになったようですね。身内でなんとか片付けたようですが、器用にボールが切り刻まれていたとか。かなり入念に時間をかけなければそうはならないでしょう。夜間にこっそり行ったのか?それ以上に鍵はどうしたんでしょう?殿と同じく開けたんでしょうか?」


「皆さんまだ残って調査をされているけど、鍵は関係者が持ってるから夜間に事務所で手に入れるしかないの。大祭関係者がっていう可能性があるけど皆さんお互いにアリバイがあるみたいだし、これ以上疑っては何も出来ないわ」


「犯人の目的はこの大祭の妨害ですからね。それが達成されれば、ある意味騒動は治るでしょうが。それでは何もなし得る事は出来ませんからね。私達に今出来るのは騒動の鎮圧と大祭の進行。犯人を掴めるのは二の次にしましょう」


そのあと会話を終え、メダルの表彰式を三人で見守っていた。

慌ただしい大会1日目が終わりを告げ、運び屋の業務を終えた中。真夜中の小坂に望海の姿があった。


「久しぶりですね、此処に向かうのも。名誉会長いらっしゃいますか?」


ドアを開け、中に入るとカウンター席に朝風の姿があった。

彼女の方へ手を振り、大会の予定表を見せている。


「節子から移しをもらってきた。明日は水泳競技が目玉になりそうじゃな。外国人選手に有力人物がいるとか。要人警護も手を抜く訳にはいかんが、いかんせんこのワシでは昼間は何も出来んからのぉ。これでも歯痒い思いをしてるのよ」


「仕方ありませんよ。夜間能力を持つ運び屋ですからね。行動時間が限られるのは仕方ありません。夜もどうかお気をつけて。犯人が暗躍している可能性もありますからね」


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