第肆拾壱話 破壊
偵察を終えた望海達は手分けしてボールの行方を追い始める。
動揺を隠せない希輝は単独で行動しようとした彼女に追従する形で体育館内を動き回ろうとしていた。
「いやいや、アタシら何やってんの!?これ、運び屋の仕事じゃないでしょ。警察に任せれば良いじゃん」
「でも、爆弾がいつ起動するかわからないんですよ?まずは鍵のかかってる場所の確認に向かいましょう。それからでも遅くありません」
希輝は不服な表情をしながらも望海の言う通りにするようだ。試合会場を離れて関係者入り口に潜入しバックヤードを確認する。一つ錠前のかかった倉庫を見つけて刀で切れるかどうか?の確認をしているようだ。
「これだとチェーンが太すぎる。専用の鋏か鍵を持ってこないと此処は開けられそうにないですね」
「此処でも脳筋プレイが見れるとは思わなかった。マスターキーは事務所にないの?スタッフの誰かが持ってるでしょ?」
「この会場に何人いると思っているんですか?全員に聞いたらそれこそ時間がかかってしまいます。私達に猶予がないんです。しかもこれ、予想通りならディンプルキーですよ。此処はもう素直に殿に頼むしか無さそうですね」
連絡を入れ、朝風の到着を待つ間。
希輝は自分の抱えていた疑問を望海に投げかけた。
「望海は殿と仲が良いんだね。あの人がピッキングが出来るなんて良く知ってるなと思ってさ。まぁ、隼この前同じ事を言ってたけど。なんか私だけ除け者にされてるみたい」
「すみません、そんなつもりじゃ。ただ、私はどれだけ時間をかけてもその全てを貴女に話す事は出来ないので。人には誰しも一つや二つ隠し事はありますよ。そう言っておかないとキリがないですし、人付き合いもできませんから」
「まぁ、そうだね。子供みたいな事言ってごめん。あっ、ほら殿が来てくれたよ。早く!コッチに来て解錠してください!」
「そう急かすな。専用のピッキング道具を持ってきたから安心せい。他の奴らも開けてきた。しかしどこにもそれらしい物はなかったようじゃ」
という事は全てのボールは此処にあると期待した2人は中を開ける。すると異様な光景が広がっていた。
全てのボールは皮が剥がれた状態で解体され、廃棄物と化している。
「な、なにこれ。バレーボールにでも怨みがあんの?これは流石に関係者に報告しないとダメだわ。事情を説明してボールを取り替えてもらう方が建設的でしょう?」
「そうですね、此処は素直に従います。ただ、この場合犯人の足取りが終えなくなる。捕まえないとまた同じ事をする可能性もありますし防犯措置は取らないと。何か手がかりが掴めると良いんですが」
「にしても器用な奴じゃな。ボールを解体して内側から閉じたんじゃろ?手先が器用じゃなきゃこうはいかん。専用のミシンでも使ったんか?」
「中に空気を入れる必要もあるしね。とりあえず、今からでも公式試合専用のボールを準備してもらおう処理は自分達で行うって事で」
試合も中盤、3セット目にて状態が良行に変わるかどうかは運び屋次第だ。
「本当に気づいてくれて良かった。試合開始前に謎の電話がかかってきてこれを使用しないと家族を人質にとるって脅されたの。でも気をつけて、子供だけでどうにか出来る問題でもないから」
「そこはお任せください。幼い事が未熟だとは限りませんから。とりあえず、野外の開けた場所に移りましょう。方法はシンプルです。これを零央様にトスしてもらいます」
体育館を抜けて野外に向かい開けた公園に移動すると望海は皆に指示を出した。
「もう此処で爆弾を解体する時間も技術もありません。皆さんなら拳銃を携帯していますよね?空中に放り投げたタイミングに合わせて狙撃してもらいます」
「最後の最後で頼りになるのは異能力じゃなくてまさかの拳銃?私、練習なんてしてないよ。斑鳩様に頼んだ方がいいんじゃない?」
「それがそうも行かないらしいぞ、光莉。機能のテロで番狂せが起きて、競技の無い馬術競技の選手達を保護する役目を担ってるから此処へは向かえない。まぁ、6人もいるんだ。まぐれで1人ぐらい当たるだろう」
「...あの子みたいに射撃が上手いと良かったんだけどな。漫画みたいには行かないか。とりあえず、やれる事はやってみよう。運試しになっちゃうけど」
「じゃあ、れおがおそらにもっていくね。みんながんばって」
全員で銃を構え零央がボールから離れた瞬間に一斉に狙撃を開始する小さな的にリロードする暇もない為、与えられたチャンスは少ない。
「集中!」
誰の弾丸かは分からない。しかし、ボールに命中したのは確かだった。その拍子に空中で爆破し地上にはその破片だけが残った。
それに望海は一安心すると同時に落胆する他なかった。




