第肆拾壱話 破壊
開会式を終えて翌日から各競技の試合が開始される。
特に数日間目玉になる予定なのはメダルが期待されているバレーボールだ。
望海達は仕事に一息付いたと喫茶店のテレビ越しに鑑賞をしていた。
側には零央もおり、常時笑顔で声援を送っているようだ。
「みんな、がんばれ!ねぇ、のぞみねえちゃん。なんであのおねえさんだけふくのいろがちがうの?」
「あれはリベロと言いましてチームの縁の下の力持ちなんですよ。攻撃が出来ない代わりに防御する事がお仕事なんですね。スポーツのルールも分かると面白いですよ。零央君のお父さんの方が詳しいと思いますが」
そんな穏やかな時間を過ごしていた中、試合の雰囲気が変わり始める。
ずっとボールを空中に上げるばかりで誰も攻撃へと移ろうとしない。
それにテレビの向こうにいる観客は勿論、望海も疑問に持ち始めていた。
零央は純粋なもので、上に向かった回数を数えている。
「可笑しいですね。いつもの回転レシーブはどうしたんでしょうか?何か変な違和感が。零央君、一緒に会場に来てもらえませんか?関係者として入る事が出来ると思いますし」
その言葉に彼は素直に頷き、会場である体育館を訪れた。
入る前からもブーイングの嵐であり、それがなりやむ事はない。
座席の後方からそれを見つめる望海は選手の険しい表情とタイマーを重ねて見ていた。
「もう20分以上この状態が続いてるという事ですよね?これだけ試合が進展しない事もあります?ちょっと助けを呼んだ方が良いかも」
一度外に出て無線で連絡を入れたのは光莉と児玉だった。彼女らなら、以前の大祭経験もありバレーボールチームとも面識がある。
直ぐに問題解決に動き出せると踏んでの事だろう。
要請を受けると直ぐに駆けつけ、試合の様子を眺めていた。
「何これ、こんなの絶対におかしいよ。誰もアタックしてないなんて、調子が悪いとかそんなレベルじゃないでしょ?これは誰かに脅されてるな?零央君【ナビゲート】お願い出来る?」
「うん!チョキだよ!」
【Code:000 自動承認 ナビゲートを起動するね!】
しかし、選手、観客、関係者どれをとっても不思議動きをするものはいなかった。
逆に1番怪しいと思えるのは選手達であるとも言えるだろう。
一セット目を終え休憩に入る。この様子も望海は見逃さずにいた。
「あのボールってスペアないんですかね?パンクした時にどうするんでしょうか?...いいえ、ちょっと待ってください。もしかしてあのボールに仕掛けが?」
「ボールに?いやいや、そんなことはあるかもしれないな。こう言う時は爆弾が埋め込まれてるって相場が決まってる」
「いやいや、どんな場面!?嘘でしょ?と言う事は接触型?地面に落ちた途端にっていう可能性があるよね?不味い、試合が終わるまでにスペアもそうだし犯人を捕まえないと!5セットなら後2時間しかない!」
物体の探知は零央では不得意の為、専用の偵察を入れなければならない。4人は直ぐに合流出来る事に成功した希輝達3人に協力を要請した。
【Code:007 承認完了 メガネウラを起動します】
「ごめんね、望海。浅間先輩は別の競技があって其方に向かってるから皆んな忙しいだ。アタシらはバスケの担当だし近くにいたからなんとか合流出来たけどね。こんな感じじゃ先が思いやられるよ。14日間の開催だっていうのに」
「それは言えてる。と言うか、同時開催の競技が多すぎて運び屋が分散状態なのが1番の問題。こうやってなにかあった時に駆けつけられないし。今は運良く集まれても次回がそうだとは限らないしね」
「とりあえず今は剣城の偵察情報を待とう。何処かに別の場所に移動してあるのかもしれない。後は犯人が隠した。持って行った可能性だな」
その後、偵察を終えた剣城が館内の簡易的な地図を書き皆に見せる。それは零央のナビゲート情報とも一致する箇所が多々あった。
「まさか零央のナビゲートに欠点があるとは思わなかった。ただ、安心して欲しいこの体育館何箇所か鍵のかかった部屋がある。それをしらみ潰しに調べる方が案外答えは早く出るかもしれない」
「...アナログな方法にはなるけど何もやらないよりはマシか。なんでバレーボールなんだろうね。球技は幾らでもあると思うけど」
「野球だと小さくて爆弾が入らないし、バスケボールだと大きすぎるから?いや、そんなわけあるか。どちらかと言うと話題性だろうね。視聴率が高くなるんだよ。望海もさっきまで見てたっていうし」
「だって、開催中はずっと放映されてますし純粋に気になるじゃないですか?どうしてそんな事を?謎は深まるばかりですね」




