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第肆拾話 救出

「ちょっと待ってください!中の状況は一体どうなるってるんですか?」


望海が困惑するのも無理はない程に状況は劣悪だった。

開会式まで1時間と満たない上に選手達はミーティングルームに閉じ込められ、銃を突きつけられている状態だ。

部屋のスペースも狭く、大人数では抵抗出来ず身動きが出来ない。


この最悪の場面でありながらも朱鷺田は冷静に状況を見つめていた。

父親である町長の護衛経験も生かしての事だろう。

射線や体術に関わる知識が備わっているようだ。


「こうなったら、ヒットアンドアウェイ作戦で行くぞ。望海が敵を個々に誘き寄せて撃破する。それが一番効率が良いし負傷率も低い。確か外に自力で脱出して保護された関係者がいたはずだ。それに変装して相手を誘き出す。行けるか?」


「分かりました。上手く出来るか?いいえ、選手の皆さんの命がかかってるんです。この作戦、必ず成功させます」


【Code:700 承認完了 狸の八変化を起動します】


「これはどう言う事だ!お前達一体何をしている!」


「コーチ、ダメです!逃げてください!コイツら、本物の銃を持ってます!」


関係者に化けた望海は裏口へと走り出し、二手に別れたテロリスト達を誘き寄せる。

もう既に旭と谷川は準備が出来ており、今にも鞘から刀を抜き斬りかかろうとしていた。


「悪いな、俺たちも仕事なんでね。鞠理、どっちが良い?獲物を先に選ばせてやるよ」


「えー、おニューの服が汚れちゃうよ。旭って本当にみどり君に甘いよね。汚れ役させてる所見た事ないし。よし、決めた!あっち!」


【Code:007 承認完了 山鳥毛を起動します】

【Code:007 承認完了 姫鶴一文字を起動します】


同時に大きく踏み込み、一気に距離を詰め下から上に切り掛かる。

相手が油断している隙に鞘にて重い打撃を与え、武器を振り落とした。


「私、久しぶりに旭さんが居合をされているのを見ました。やっぱり速いというか、美しいですね。芸術品のようで。朱鷺田さん、どうしました?呆然として」


「へっ!?いや、今になって旭はこんな動きをしていたんだなと思ってさ。型は変わらないはずなのに、動きが以前より細かく見えるようになったんだ。知識がついたからかな?」


三人の協力もあり、この事態は治りそうだ。

警察へと無事に届けた後も運び屋達の仕事は終わらない。

選手達を送り届けなければならないからな。


「あっ、姉貴。こっちこっち。朝から酷い目にあったね。誰の差金だろう?僕としては裏で財閥が糸を引いてるんじゃないか?ってティムと話してたんだ」


「まさか、そんな。第一、被害に遭ったのは運び屋じゃなくて選手の皆さんでしょう?不謹慎な事を言わないでください。確証もないのに」


「でもわからないだろう?今はそうでも、後からそうだったっていうオチかもしれない。これから忙しくなるぞ。警備も固めていかないとな」


ティムは過去の大祭経験もあり、気合いを入れているようだ。

しかし望海としてはこれ以上にアクシデントがあるのは困ると言うのが正直な発想だろう。

出来るだけ、穏便に行きたいと言うことだが蓋を開けて見れば問題だらけ。

そんな出来事の数々が彼女達を襲う事になるだろう。


開会式もなんとか無事に終わり、青い炎は台座に灯されメラメラと燃えている。

そのあと、光莉と児玉と合流し過去の思い出について聞き出しているようだ。


「災難だったね、望海。私らの時でもそんな大事にはならなかったよ。あっても競技中に動物が侵入してきたレベルだしね。まさか、それじゃなくて人間をとっ捕まえる事になるとは思わないじゃん」


「野良猫にまたたびをあげるのとは訳が違うって事だな。権力や金が動いてる分、それによる妨害も表面化しやすいんだろう。まずは怪我無く俺達がいつも通りの業務をおくれるようにしないとな。ハプニングが起きたら客も自然と離れて行くのが自然の摂理だ」


「そうですね。そもそも私達の強みは依頼人を無事に目的地に送り届ける事。...でも、それが出来なくなったら?運び屋は本来の意味を失うと言う事になりますよね?まだ、この一連の流れは終わっていないのかもしれない。やっぱり油断は出来ませんね。相手は何を考えてるんでしょうか?」


やはり彼女の直感は当たるようで、競技が始まると新しい問題点が発覚してくる。

それは同時期に起こり、運び屋達を翻弄していく事になるだろう。

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