プロローグ
目を開くと世界は眩しすぎて、ろくに物が見えない。気が付くとそんな状態に陥っていた。
流石に死んだと思ったのだけど、結局助かったのかしら?ここは病院?
ナースコールを押そうと思ったが体が動かない。すみません、と声をあげようとしても上手く喋れない。「あうぁ……」と弱々しい甲高い声が喉から出てくる。この懐かしい声は……!
「お母様!タルジュが起きましたわ、抱っこしてもいいかしら?」
「ふふ、アイーシャ嬉しそうね。気を付けて抱っこするのよ?」
若かりし頃のお母様の声。誰かに抱き上げられ、濃い褐色の肌で頬擦りされる。金色のシャラシャラした髪飾りが黒髪と一緒に降ってきて……私はこの光景を知っている!
「タルジュ、タルジュっ!あぁなんて可愛い妹なんでしょう!こんな真っ白で神々の遣いに違いないわ……お母様見て?こんな小さな手の先まで白いのよ!」
アイーシャお姉様が興奮した様子で、抱っこしたまま私の指先を摘み上げる。感覚的に私の手だと思われる手は当然赤ちゃんだった。
夢かなと思ったけれど、感覚があるという事は夢では無いのだろう。
訳がわからないけど、これはもしかして本当に、生まれ変わって異世界転生ではないだろうか?私はあの世界に、ウリクセス様が存在する世界に、戻って来たのかもしれない……!
ああ神様仏様、いやこの世界だとアズィーム山脈様、か?とにかくありがとう!もう一度ウリクセス様と生きるチャンスをくれて、どういう原理か分からないけど……とにかくありがとうございます!
あまりの嬉しさで涙が出る。もう会えないと思っていたアイーシャお姉様にもまた会えた!名前を呼ぼうとするが「ふ、えぇぇあ」と泣き声のような声しか出ない。さすが赤ちゃんの体、前回とは違って言語の聞き取りは完璧なのに、発声が上手くできない!
「ああタルジュ、泣かないで!よしよし、お姉ちゃんがずーっと守ってあげますからね」
アイーシャお姉様がゆらゆらと体を揺らしてあやしてくれる。
いくら考えても何の世界に迷い込んだのか分からなかった前回とは違う。今の私は、結局初めに作ったストーリーは全く思い出せなかったけど、中学生の時に作り上げたこの世界を愛しすぎて十年も妄想創作に励んだ「作者」なのだ。例えこの物語が思った方向とは違う向きに走り出したとしても、軌道修正し望む結末へ辿り着かせてみせる力は、誰にも負けないはず!
もう今回は守ってくれなくていいのよ、お姉様。どこぞの転生物の物語のヒーローのように、私が皆を守ってみせるから。武器は……想像力?って感じかな!




