↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/47

やっと同じ世界へ

21時にもう1話ありまーす!

「利麻聞いて聞いて!この前アップしたウリクセス様とタルジュのイラストさ、」


「えー、真白最近アップしすぎだからどれの事か分かんないって。どのイラストの事?」


「結婚式妄想のやつ!」


「あ〜、あれね。確かに愛に溢れた絵だったよ、うん」


「ちょっと利麻、今適当な返事したでしょう!」


「あーバレた?だってさ、あれから十年。私らももう三十路!そんなロングスパンで想い続けるとは思わなかったし、通話するたびに聞いてあげてる私の身にもなってみ?ほんと真白のウリクセス様愛ナメてたわ。愛されすぎてるウリクセス様に、私が嫉妬しそうなレベル。親友の私の事も少しは愛してよ」


 利麻の言う通り、あれからもう十年の月日が流れた。

 利麻は昨年結婚して今は妊娠中。今でもぼちぼち創作はしているらしいが何を書いているかは内緒らしい。私は相変わらず同人作家……は副業の、本業はNPOの人権擁護団体スタッフ。ウリクセス様が目指したかった、見た目や生まれに関係なく生きていける世界……そんな理想を追う仕事を、真白でもやってみたかった。今でもウリクセス様だけを愛しているので、誰に言い寄られたって結婚はしない。付き合う事すらない。


「ごめんごめん、利麻も大好きだよ。利麻くらいしか聞いてくれる人いなくて……また聞いてね?」


「……」


「え、なんで無言?も〜都合悪くなると黙る癖、通話ではやめてよー!」


 利麻と適当に会話をして通話を切った後、パソコンで自分のアップした小説と絵を眺める。この電子の世界ではタルジュとウリクセス様は恋愛して、結婚して、子供もいて。なんならいくつもの並行世界に存在し、色んなIFの世界を生きている。さまざまな舞台設定で書いたが、絶対に悲劇は書かなかった。もう二度と二人を離したくないから。

 勿論、なんでこんなことしているのだろうと虚しくなる事だってある。いくら電子の世界で二人を幸せにしたって、私は幸せになれないのだから。


 出窓に置いてあるスズランの植木鉢に目を移す。あの時のタルジュのように花を貪り食ってやろうかと思ったことも一度や二度ではない。そのたびに「今私が死んだらあの電子の世界の二人の生活が終わってしまう!」と自己を奮い立たせて頑張ってきたのだが……年々虚しさがひどくなってきた。


「はぁ……利麻も結婚しちゃったし。とりあえずお酒飲もっと」


 冷蔵庫から酎ハイを出してプシュッと缶を開ける。そういえば同僚が山菜の天ぷらをくれたなと思い出し、つまみに食べながら酒をあおる。こんな姿ウリクセス様がみたら引くだろうな……とはいつも思うのだが、もう会うことはないだろうから関係ない。ため息をつきながら食べるせいか、山菜の味もよく分からなかった。形状はニンニクっぽい気がする。


「会いたいよお、ウリクセス様……」


 もう二缶も空いてしまった。飲み過ぎは毒だとわかっているのだが、飲まないとやってられない!

 再び冷蔵庫からお酒を出そうと立ち上がると、足元がふらついた。もう酔っちゃったのかな?……いや、なんだか体調がおかしい。脈が変な気がする……不整脈?


「あれ?……なんか変だな、ちょっと横になろうか、な……」


 だんだん息が苦しくなってきて、ベッドに辿り着く頃にはもう立っていられなくなっていた。


 この息苦しさを、私は知っている。

 出窓にあるスズランの花。今回は貪り食ってないし、その毒が溶け出した水だって飲んでない。なのに何故?お酒?山菜?


 でも、これでやっと……やっとウリクセス様と同じ死後の世界に行けるのね。アイーシャお姉様だって待ってくれている。何も怖くなんてない。

 朦朧としていく意識の中、ふと懐かしいウリクセス様の声が聞こえたような気がした。



「タルジュ、どこに行っていたの?……ずっと探していたんだよ、やっと見つけた。私をこれ程待たせるなんて、相応の覚悟があってしたんだろうね?」



 ――ああウリクセス様、やっとお会いできましたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。