名実共に(1)
2話構成です、続きは明日20時更新!
明日の(2)は少し甘いシーンあります
疑問点をあらかた書き出し終え、お待たせしましたと言いつつ顔を上げる。
お忙しいはずなのに私のペースに付き合わせてしまって申し訳ないと思い急いだのだけど、当のウリクセス様はこちらを見つつ紅茶のおかわりとクッキーを食べていた。いつもしている手袋も外しているし、結構寛いでいるようにも見える。
……もしかしてそんなに気にしなくても良かった?
「お疲れ様、思ったより早かったね。タルジュも食べる?」
「いえ……カロリーが気になるので結構です」
基本室内から出ない私にとって、高カロリーなお菓子は危険だ。勿論甘い物は好きなのだが、考え無しに食べると……きっと後で痛い目を見る。
「かろりー?それはアズィームの言葉かな?辞書にも載っていない気がするけど」
「太ると嫌って意味です!それよりもウリクセス様、クッキー結構減ってる気がするんですけど、もしかして甘い物好き?」
ウリクセス様がティーカップを置いて本棚の辞書に目を向け始めたので、内心慌てて話を逸らそうと試みる。カロリーなんて言葉載っている訳がない、追求されると誤魔化すのが大変すぎる。
「うん。結構無意識に口に運んでいる事もあるし、人並みに甘い物が好きな自覚はあるよ。タルジュの方がふわふわしてて、ケーキとか甘い物が似合いそうな可愛い見た目なのにね」
「甘い物は美味しいけど、ぶくぶく太った妖精姫なんて洒落になりませんから。それに書き物や読書をしていればお菓子を摘もうという発想も湧かないし……」
無意識にお菓子を摘んでも太らないのが羨ましい。いや、もしや無意識に食べないといけないくらい忙しくカロリー消費が多いのだろうか?
「凄いね。私なんて真剣な表情のタルジュを眺めて楽しんでいたら、ついつい手がクッキーに伸びてしまって。ほら、クッキーなんて1人の時か手袋を外せる相手とじゃないと食べれないから」
甘い物好きでついついクッキー食べちゃうとか、年相応な可愛い所あるじゃん!と一瞬思ったけど、人前で手袋外せないとか不便極まりないし、不遇で可哀想な案件だった。でも私を眺めて楽しむのは恥ずかしいからやめて欲しい。
「……恥ずかしいから、あまり眺めないで欲しいんですけど。あと、お仕事中なのにティータイムって寛ぎすぎでは?」
「私は今日休みなんだ。折角公務を休んでタルジュの部屋に来ているのだから、これくらい許して欲しいね」
そうか、休みなんだ。休みなら自由だよね、しょうが無い。……ん?休み!?
「休みなのに早朝から来てたんですか!?」
信じられない。休みならば惰眠を貪ってゆっくりするべきよ!ゴロゴロと二度寝をする時程、至福な時間は無い。あと私の公務という名の何かに付き合う必要もない。
「休みだからこそ早く起きて来たんだけど?タルジュとゆっくり議論する時間が欲しかったからね。さて、ではそろそろ政策に対する意見を聞かせてもらおうかな」
本当に信じられない。休みなのに仕事しに来ていたのか、この人は。基本的に話は合う人だけど、こういう所は合う気がしない。
「今回タルジュに考えて欲しいのは、優秀な人材の育成確保について。マニュス帝国では、他民族であっても優秀な人材は登用する文化があるのだが、これの拡大拡充について検討している事がある」
そう言いながら私に一枚の用紙を手渡してくる。ざっと目を通すと、平民に対する教育についての見解が纏められているようだった。
「そこに記載してあるように、平民に対しても一定の教育を行う事で優秀な者を炙り出し登用できると考えている。今はどうしても優秀な者というと貴族が中心になってしまっているが、それは身分によって優秀さが決まるのではなく、単純に幼い頃から教育を受けれたかどうかの差でしかないと思うんだ」
「まぁそうでしょうね。当たり前の事です」
「話が合って助かるよ。しかし当たり前に帝国の為になると思われる事でも反対してくる者がいる」
「まぁそうでしょうね。貴族とか」
もう話の展開がテンプレすぎて読めてしまう。そりゃ貴族からすれば嫌だろう、自分の地位が平民に脅かされるようになるのだから。
「話が早くて助かるよ。彼らは平民の教育に資金を当てるくらいなら災害対策を進めるべきだとか、表立って反対する訳ではない。他に優先すべき政策があるだろうという意見がある事も重々承知した上で、どのように進めるべきか考えを聞きたい」
なるほど、転生物のお話にはありがちなやつですね。ここで良い政策を導入していって教会で孤児に教育の機会を設けるとか、そこで先生として活躍するとか、物語内でよく見かけたように思う。上に立つ者にとって、教育は切っても切れない問題なのだろう。
「貴族の反対を抑えつつ政策を通したいということですね?」
「私は嫌われ者だからね。嫌いなやつが出してきた政策でも賛成したいと思うようなものを作りたい」
嫌われているのはやっぱり腕の白斑のせいなのだろうか。他民族には抵抗なく道が開けるのに、何故異端な見た目の者を差別するのかよく分からないが……。
「私が嫌われている理由はね、勿論この腕が原因なんだけど……先程話した伝説には続きがあって、異端者が災を引き起こすとうたわれている。だから生を受けた瞬間に、この世に生まれなかったことにされるんだよ。災害なんて起こって欲しくないから」
「そんな……ひどい、無実なのにそんな扱いを」
「それが私の場合無実なわけではなくてね。私を出産した後、産後の肥立が悪く実家のある自領に帰ろうとした皇妃が、土砂崩れに巻き込まれ亡くなっている。異端の皇子なんて生まれなかったことにしておけば良かったのにと、皇帝である父上は帝国中から責められたようだ」
こんな暗い話なのに、さも当然で当たり前の事といった風に話をされる。そんな環境で育っていれば自分を醜いと思って疑わない子に育って当たり前だ。幼い頃のウリクセス様の心情を考えると……心が痛い。生まれた土地が違うだけで、これ程までに環境が違うのか。
前世の知識から考えれば、異端の者が災害を引き起こすだなんてある訳がない……何故そのような伝説が生まれてしまったのだろう。どちらの伝説も、もっと勉強すれば詳しく分かるのだろうか。




