第96話:偽りの神と絶対の騎士
【サングリア領内・大聖堂最深部】
開かれた大扉の先、漆黒と黄金の光が渦巻く玉座に鎮座していた「教皇」。
その姿を目にしたリンドは、言葉を失い息をのんだ。
「……お前……シアン……!?」
そこにいたのは、かつて【ランカーズ】として1年ほど共に旅をした僧侶の少女、シアンだった。だが見た目は少し変わっており、全体的に神を連想させるような服装、さらには額に俺の【神眼】のような第三の目を開眼させ、ところどころに人間を感じさせない姿なっていた。
『……ようこそ、哀れな【捕食の王】よ』
少女の口から発せられたのは、幾重もの老若男女の声が重なった、耳障りで不気味な複層音だった。
『カティアの遺志を継いだか。……だが、その娘もまた、我ら神の意思を宿すためのただの『器』に過ぎぬ。お前が喰らってきた力も、全てはこの絶対なる神体へと捧げられるために集められたのだ』
「……黙れ……ッ!!」
リンドの【深眼】が過剰反応を起こし、殺意で黒い血の涙が頬を伝う。
亡き少女の面影を汚し、傀儡として弄ぶ教皇の存在に、リンドの理性が完全に焼き切れた。
「カティアを......お前が語るな....!!」
空間ごと断ち切る【深眼】の死線殺術が、教皇へ向けて一閃される!
しかし、教皇の前に展開された透明な膜に触れた瞬間、リンドの攻撃は跡形もなく「消滅」した。
「何....!?」
『無駄だ。神の領域に達した我が体に、この世の現象は届かぬ』
「ハッハッハッハ!さぁ、儀式の始まりだ.....!!」
シュウがその様子を見て笑う。
【サングリア領内・大平原(アイリス側戦場)】
一方、大聖堂から解き放たれた神威に空が割れる中、グラルド・ソノザキは静かに大剣を引き抜いた。
「教皇様の『神降ろし』が始まった以上、もはや余計な戯れは不要。……これより先は、サングリア最強の騎士として貴様らを迅速に処刑する」
ズゴォォォォォォンッ―――――ッ!!
ソノザキが一歩踏み出した瞬間、大平原の半分が沈下した。
【五角】の桐原が即座に時間を加速させて割り込むも、ソノザキの剣圧だけで吹き飛ばされ、召喚体である肉体に亀裂が入る。
「くっ……重い……!? 時間の加速すら力ずくで押し潰すというのか……!」
「ハッ……いいねぇ! そうでなくっちゃ倒し甲斐がねぇッ!」
ラーミリアが巨大鉄球を全力で叩きつけるが、ソノザキはそれを素手で受け止め、そのままラーミリアごと大地へ叩きつけた。
「全員でかかるわよッ!! 【魔法の王】――『全属性極大複合魔法』!!」
アイリスの解き放つ色とりどりの極大破壊魔法がソノザキを包み込む!
だが、煙の中から現れたソノザキの身体は一傷すら負っていなかった。
「サングリアの絶対防衛線……グラルド・ソノザキ。我が鎧に、生半可な魔法も理も通じぬ」
圧倒的な実力差を見せつけるサングリア最強の騎士。肉人形を倒し終えたライオもすかさずグラルドを攻撃する。しかし。
「くっ....死角ねぇのかよこいつ!!」
「【神域剣技・二之型】----。不意打ちなど私の前では無力だ。」
常人ならば受けきれない複数人からの攻撃を易々と受け流すグラルド。次第にアイリス達は攻め手を減らし、逆に防戦一方となってしまう。
「先ほどまでの勢いはどうした!ここで散ることになるぞ!!」
グラルドはサングリアにて最強だった。あらゆるチートスキルをも凌ぐ最強のスキル【神域剣術】は、【深層】以外のあらゆる攻撃を受け流す【神域剣技・二之型】によって絶対防御を誇りながら、【神域剣技・三之型】による連撃で相手を一瞬で崩すことができる。正に騎士の完成形である。
「どう倒せばいいんだこんなやつ....!!」
力量、スキル、戦場経験、全てにおいて格上。【戦いの化身】とも呼べるその姿にサウスは未だかつてない絶望に突き落とされる。
「魔法すら無力化するなんて.....そんなのってアリなの....?」
「ナハムさん、落ち着いて。絶対に攻略方法はある....!!リンドはいつもそうやって弱点を見つけ出していた....!」
アイリスはそれでも冷静に分析し、勝機をつかもうとしていた。
「そうだ!!全く死角の無い人間なんておりませんぞ!!」
「必ず....突破する.....!!」
リンドの仲間達はまだあきらめていない。
満身創痍の中、グラルドの攻略が始まる。




