第95話:嗤う道化と静寂の玉座
【サングリア領内・大聖堂前参道】
「あははっ! 最高だよ山城クン! 本当に素晴らしい【捕食の王】に育ってくれたねぇ!」
かつての仲間を喰らい尽くし、更なる禍々しい魔力を全身から溢れさせるリンドを見下ろし、シュウが両腕を広げて狂喜する。
「お前を殺し、教皇を殺せば……俺の復讐は全て終わる」
リンドの左目――【深眼】が漆黒の光を放ち、足元の影がドス黒い顎となって広がっていく。
ランカーズから奪い取った【金剛力】【剣王】【高速詠唱】が、既存のスキルと混ざり合い、リンドの存在そのものを「災厄」へと昇華させていた。
「殺す? 僕をかい? あははッ、無理無理! 君はまだ完成していないんだからさぁ!」
ズバァァァァァンッ―――――ッ!!
シュウが背中の翼を羽ばたかせた瞬間、空間を割って無数の【神眼の残渣】――光の刃がリンドへと降り注ぐ。
だが、リンドはただ一歩前に踏み出すだけで、その全攻撃を【深眼】で解体し、無力化した。
「遅い。お前の動きも、思考も……全て見えている」
「ッ!?」
次の瞬間、シュウの視界からリンドの姿が消えた。
【高速詠唱】と【時間操作】を掛け合わせた超絶的な神速。シュウが背後へ振り向くより早く、リンドの漆黒の刃がその胸を貫いていた。
ガキィィィィンッ―――――ッ!!
「……っと……危ない危ない……。 ほんと、容赦ないねぇ!」
寸前でシュウの体に展開された【絶対結界】が砕け散る。
額に冷や汗をかきながらも、シュウはなおもニヤニヤと不気味な笑みを崩さない。
「でもね、山城クン。僕を殺したところで……もう遅いんだよ」
「……何?」
「君がここで殺戮を楽しんでいる間に……『器』の充填は終わった。教皇サマが……お目覚めだ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
大聖堂の最深部から、地鳴りのような重低音が響き渡り、空がドス黒い赤色へと染まっていく。
リンドの【深眼】すら一瞬眩むほどの、超巨大で禍々しい「神の気配」が大聖堂全体を包み込み始めた。
「さ、僕は引き続き”観測者”としてやろうか。」
シュウが道を外れ大聖堂の奥の扉がハッキリと見える。ゆっくりと扉が開き、そこから無数の槍が飛んでくる。
俺は全て無力化し、扉の向こうにいるであろう【教皇】とやらに問いかける。
「出て来いよ!....ここがお前の墓場だ....!!」
ゆっくりとその姿を現す。
「.....!?お、お前が....教皇なのか....!?」
その姿を見た俺は、驚きを隠せなかった。
【サングリア領内・大平原(アイリス側戦場)】
「くッ……これがサングリアの騎士の力……!」
アイリスの『極光穿孔』を受けてなお、けろりとその場に立つグラルド・ソノザキ。
【五角】とラーミリアの活躍によって肉人形はかなりの数を減らしたが、グラルドは一切動じない。
「それでも....私達は負けるわけにはいかない!!」
アイリスが叫ぶ。
その時だった。大聖堂から神々しいながらも、禍々しい激しい魔力の波を感知した。
「教皇様が動き出したか。あの【深層の王】も終わりだな。サングリアは安泰だ。」
「……!? なんですって……!?」
アイリスたちの表情が凍りつく。
サングリアの中心地から解き放たれた禍々しい光柱が、天を穿ち、世界を揺らし始めていた。




