第94話:断絶の顎と狂王の嘲笑
【サングリア領内・大聖堂前参道】
「死ね……死ねぇぇぇッ、リンドォォッ!!」
理性を失い、限界突破した能力を暴走させるガルガンとランカーズの面々。
だが、その猛攻はリンドの髪一本すら揺らすことはできなかった。
「……あの時、踏みつけられ、突き落とされた痛みを……絶望を、忘れたことはない.....!!」
リンドの左目――【深眼】から黒い渦が解き放たれる。
「だが、お前達のおかげで俺はこの力を得た....復讐のための強さを!!」
ズバァァァァァンッ―――――ッ!!
空間ごと切り裂く漆黒の閃光。
ガルガンたちの放つチートスキルが概念ごと崩壊し、絶叫を上げるヒマもなくその身体が断ち切られる。
態勢を崩したゲステスを捉えた俺はまずゲステスから葬る。
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゲステスを血肉をすすり、【捕食】を開始する。
『ゲステスの【捕食】を完了。スキル【高速詠唱】を獲得。』
「なっ.....!?こいつ、人を食った.....!?」
俺のスキルを初めて見た元仲間達が口をポカンと開ける。あの頃黒く塗りつぶされたハズレと思わしきスキルが、今牙を向いている。
「ガ……ハッ……!? 俺たちが……こんな……無能相手に……ッ!?」
「なんだ、その目は?」
「....な、なぁリンド?俺達....幼馴染だよな?まさか本当に殺そうとしてない....よな?」
「そ.....そうよ!私達を殺せば....お父様やお母様も悲しむに決まってるわ!」
この期に及んでこのセリフ。つくづく救いようのない幼馴染に俺は思わず笑ってしまった。
「クク....あぁ、俺達はずっと幼馴染さ。故郷に帰ろう。」
「.....リンド!!」
ガルガンとナスタは一瞬安堵した。その瞬間。【深層世界】を発動し、ナスタのもとに近づき腹に剣を突き刺す。
「あ.......え......?」
「おいおい!!こいつら本気で命乞いしだしたぞ!! バーーーカ!! あんなアホみたいな演技に騙されやがって!助ける気なんてねーよバ―――カ!!」
俺はあの時ガルガンに言われたセリフを吐いた。仲間だと思って一緒に過ごした者から言われた最悪の言葉。今俺は最初の復讐を完了しようとしていた。
「リンド.....!!お...お前....!!」
「本当に助けると思ったのか?....本当に脳内お花畑だな。俺はお前達を恨んで生きてきたんだ...!!ここで殺す!」
「やめ.....やめてくれリンドォォォォォ!!」
「【深眼】。」
ゴォォォォォォォォォッ―――――!!
暗黒の泥が暴風となって参道を覆い尽くし、ランカーズは全員が息絶えた。俺はガルガン、ナスタを捕食し因縁の過去は、「糧」として影も形もなく消滅した。
『【ガルガン・ブルダ、およびナスターシャ・テンタクルタ】の【捕食】を完了――』
『スキル【金剛力】【剣王】を獲得――』
「あはっ……あははははッ!! 凄い! 凄まじいね山城クン! かつての仲間を躊躇なく喰らい尽くすなんて、まさに最高の【捕食の王】だ!!」
空中で手を叩き、狂喜乱舞するシュウ。
リンドは血の混じった黒い魔力を全身から漂わせ、冷たい殺気をシュウへと向ける。
「笑っていられるのも今のうちだ、シュウ。……次はお前の番だ」
「まぁそう慌てないでよ!もうすぐ悲願の達成なんだからさ....!」
【サングリア領内・大平原(アイリス側戦場)】
ズゴォォォォォォンッ!!
一方、アイリスたちの戦場では、ソノザキが操る無数の転生者人形と、リンドが遺した護衛たちが激突していた。
「ハハッ! 一度死んだ身だが、リンドの召喚体として暴れるのも悪くねぇなぁッ!」
元幹部ラーミリアが巨大な鉄球を振り回し、ソノザキの人形軍団をなぎ払う。
「リンドくんの助けになるなら、僕はここで神すら殺す....!!」
「さぁ、私の”時間”に飲み込まれなさい。」
桐原率いる【五角】の面々もまた、超常の連携で敵の包囲網を次々と破砕していく。
「ふむ……召喚された死霊どもが、これほどの連携と強度を誇るとは……私の出番は早そうだな。」
一瞬表情を歪めるグラルド・ソノザキ。
その一瞬の隙を見逃さず、背後から赤く輝く魔力を纏ったアイリスが前線へと躍り出た。
「これで……終わりにするわ!! 【魔法の王】――『極光穿孔』!!」
ドバァァァァァァァンッ―――――ッ!!
神聖な極光の濁流がソノザキの防御陣形を真っ向から粉砕する!
サングリア最強の騎士の防衛線が、ついに突破されようとしていた。




