93話:因縁と再会
【サングリア領内・大聖堂前参道】
「……【ランカーズ】……ッ!」
リンドの足が止まる。
視線の先に立っていたのは、かつて自分を「無能」と見下してダンジョンの底へ切り捨てた元幼馴染たち――勇者パーティ【ランカーズ】の面々だった。
「ひさしぶりだねぇ、山城クン! 懐かしい顔ぶれだろう?」
頭上で天使の羽を広げ、シュウが嗤う。
「でもね、ただの旧友じゃないよ。教皇サマの御力と【神眼】の残渣を注ぎ込んで、彼らのチートスキルを限界突破させておいたんだ。君への最高のお土産さ!」
「……リンド……なのか...?テメェ……なんで生きて……」
リーダーのガルガンが、うつろな瞳で剣を構える。
彼らの全身からは、元々のチート能力を遥かに超越した、禍々しく歪んだ魔力が溢れ出していた。
教皇とシュウの手によって精神を破壊され、ただの「強化された殺戮人形」へと改造されていたのだ。
「……かつての仲間すら傀儡にして弄ぶか。どこまでも腐り切った国だな」
リンドの左目――【深眼】が、静かに、しかし絶望的なまでの殺気を孕んで黒く輝く。
過去の記憶が一瞬だけ蘇る。
ガコッッッッッッ!!
足元に大穴が出現する。
「ブッ……ハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
「み、みんな……! 笑ってないで助けてよ!! 頼むよ……!!」
「おいおい!! こいつ本気で命乞いしだしたぞ!! バーーーカ!! あんなアホみたいな演技に騙されやがって!! 悪いなんて微塵も思ってねぇよ、バカが!!」
「ガルガン、頼む!! 君の『金剛力』なら僕を引っ張り上げられる!!」
僕がすがるように叫ぶと、ガルガンの顔から一瞬で嘲笑が消えた。
「黙れよ、無能が」
「……っ!?」
「俺ぁ昔からお前が気に食わなかったんだよ……『神童』ともてはやされ、それでも努力をやめず、常に俺の前を歩くお前がなぁぁ!!」
ガンッ!!
ガルガンの重い靴が、僕のしがみつく手を踏みにじった。
「何をしたいのかわからんが、火に油を注いだなシュウ.....!!全員食い殺してやるよ....!!」
「あはっ! 言うねぇ! いけ、君たちの『無能な元仲間』を殺しておいで!」
「リンドォォ!!死ねぇぇぇぇぇ!!」
「悪く思わないでねリンド!!これが使命なのよ!!!」
限界突破した【ランカーズ】たちが、音速を超える踏み込みで一斉に襲いかかる!
空間を切り裂く極大魔法、必殺の剣技、絶対命中の一矢――かつてリンドを置き去りにした力が、殺意となって襲いかかる。
だが、リンドは武器すら構えず、ただ一歩、前へ踏み出した。
「【深眼】――『死線解読』」
ズババババババババッ――――ッ!!
攻撃が届く寸前、【ランカーズ】たちのチートスキルの軌道、そして彼らの命の死線がリンドの視界の中で完全に解体される。
リンドが指先を軽く一振るした瞬間、限界突破したはずの全攻撃が水泡のように霧散した。
「……なっ……!?」
「お前らは俺の足元にも及ばない。とっとと死ね。」
感情を殺した冷徹な声と共に、【捕食の王】の暗黒の顎が、因縁の影たちを飲み込むべく牙を剥いた。
【サングリア領内・大平原(アイリス側戦場)】
「ハッ、召喚された元幹部が護衛とはね! リンドの野郎、どこまで心配性なんだ!」
ライオが笑いながら大剣を構える。
彼らの前には、サングリア最強の騎士グラルド・ソノザキと、彼が操る無数の転生者人形が立ちふさがっていた。
「【深層の王】の配下か……面白い。サングリアの騎士として、貴様らをここで食い止める!」
「させないわ!! リンドが過去と決着をつけるなら……私たちはここであなたを倒して、絶対にリンドの背中に追いつく!!」
赤く輝く髪をなびかせ、【魔法の王】アイリスが杖を掲げる!
リンドが先へ進むための道を作るため、仲間たちの総力戦が始まった――!




