第91話:血濡れの狂宴と鉄球の轟雷
【サングリア領内・大平原『殺戮の街道』】
ズゴォォォォォォンッ―――――ッ!!
巨大な鉄球が地面を砕き割り、激しい衝撃波が大地を裂く。
サングリア本国へと続く一本道で、突き進むリンドの目の前に巨大な影が立ちはだかった。
「ハハハハッ! 待ってたぜぇ、【捕食の王】サマよぉッ!!」
血に餓えた獰猛な笑みを浮かべ、身の丈を超える超大型鉄球をぶん回す女騎士――ラーミリア・ササキ。
その背後には、異質な魔力を放つ十数名の洗脳された【転生者兵器】たちが控えていた。
「サングリアの幹部か。……邪魔だ、退け」
リンドは立ち止まることすらなく、左目の【深眼】を淡く発光させる。
一瞬でラーミリアの「死線」を捉え、空間ごと切り裂こうと指を振るった。
ズバッ―――――ッ!!
「甘ぇよッ!!」
衝撃波がラーミリアの体を襲う寸前、彼女の背後にいた転生者兵器の一人が前に飛び出し、肉壁となって爆散した。
ラーミリアは仲間の死など意にも介さず、煙を割って肉薄する。
「あたしの『おもちゃ』どもはな、アンタの攻撃を肩代わりするために調整されてんだよ! 命のストックがある限り、あたしには届かねぇッ!!」
超音速で繰り出される鉄球の一撃。
リンドは【金剛不壊】と【時間操作】で寸前に回避するが、衝撃波だけで周囲の空間が歪むほどの威力が破砕音を響かせる。
「そうか....だからどうした?サングリアの肉人形どもを全員喰らえば、俺はさらに強くなる……ッ!」
リンドの口元に、狂気的な笑みが浮かぶ。
【捕食の王】と【怪力無双】のラーミリア――血で血を洗う凄惨な前哨戦の火蓋が落とされた。
【サングリア領内・大平原後方】
「あれは……リンドの魔力と、激しい戦闘音……!?」
サウスとナハムを交え、足早に街道を駆け抜けるアイリスたちが遠くの爆煙を捉える。
「急ぎましょう! リンドが……サングリアの幹部と激突しているわ!!」
【魔法の王】として覚醒したアイリスの瞳が、赤い光を強く宿す。
リンドが完全に復讐の鬼と化し、二度と戻れなくなる前に――一行は戦場へ向けて疾走するのだった。
肉人形は既に数十個ほど壊された。
それでも疲れを感じるどころか、人形を貪り食ってどんどん力を増していく。持久戦では勝てないと見込んだラーミリアは残った肉人形を無理やり合体させ、巨大な人形を三体作り上げる。
「....チィィッ!これならどうだ!!」
巨大人形から繰り出されるチートスキルを練りこんだ魔法。普通なら死を免れることはできない凄まじいものだが、リンドには一切の効果がなかった。
「【深眼】、【深層世界】。消え失せろ。」
再び黒く染められる世界。ラーミリアは急いで肉人形を生贄にする。次に世界が元に戻った時、後ろにいた巨大人形は3体とも消え去っていた。
「ここまで強いのかよォォォ!!クソがァァァァ!!」
激昂するラーミリア。サングリアの三大天と呼ばれ、向かうところ敵なし。単純な力と人形を駆使した持久戦なら他の二人よりも勝っているという自負もあった。そんな最強に突き付けられた現実。こいつには勝てない。はっきりとわかった現実に吐き気がする。
「あたしは.....最強なんだァァァァァァ!!」
ラーミリアは叫ぶと、肉人形を自分の体にまとわりつかせる。どんどん異形へと変化していき、ついに巨大な一つの体となる。
「こんな奥の手を隠し持ってたんだ....ラーミリア、あとはどこまで持つかな....?」
様子を見ていたシュウが呟く。
「オオオオオオォォォォォォ!!!」
肉塊となったラーミリアが叫ぶ。
サングリア戦争の2幕が始まろうとしていた。




