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第87話:悲痛の爪痕と決意の交差


【ウルド王国・夜の港町沖】


パリンッ―――――――――ッ!!


【超深層化】を果たしたリンドの漆黒の刃が、暴走する【神眼】の魔力障壁を完全に粉砕した。


「あ……あ……リ……ンド……さん……」


障壁が割れ、渦巻く紫黒の暴風の中で意識を失いかけていたカティアが、掠れた声で呟く。

その左目からは血の涙が零れ落ち、少女の小さな肉体は溢れ出る天害の魔力に耐え切れず、内側から崩壊を始めていた。


(すまない、カティア……。俺が甘かった……俺がアンタの親父を……ッ!)


胸を切り裂くような罪悪感と悲痛が、リンドの胸を刺し穿つ。

女神の言う通り、一度解放された【神眼】の暴走は、この幼い肉体ではもう止められない。このままでは彼女の存在ごと周囲の世界が消滅する。


リンドは震える手でカティアの幼い体を優しく抱き締めると、溢れ出る涙と共に【捕食】の顎を解き放った――。


ゴォォォォォォォォォンッ―――――……!!


『スキル【天害級・神眼】の獲得を確認――』

『【捕食の王】と【神眼】の統合を開始します――』


夜空を覆っていた禍々しい魔力の嵐が、嘘のように霧散していく。


「ありがとう.....リンドさん。」


カティアの声が聞こえた。こんな俺に最後まで礼を言ってくれた。俺が殺した。俺が関わって死んだ。

静まり返った海の上、静寂の中で胸を押さえて膝をつくリンド。その左目には、カティアと同じ金色の魔法陣――【神眼】が妖しく宿っていた。


「あはっ……! 素晴らしいよ山城クン! 少女の命と引き換えに【天害】すら己の糧とする……まさに圧巻の泥濘だ!」


頭上から拍手を送るシュウ。


「……消えろ、シュウ。今すぐ失せなければ、お前をここで喰らい尽くす。」


リンドの低く殺気に満ちた声に、シュウは楽しそうに肩をすくめた。


「はは、今日はもう苦しいよね。サングリアで待っているよ、『完成体』の引き立て役としてね」


背中の天使の羽を羽ばたかせ、シュウは夜の闇の中へと消えていった。





【ウルドとサングリアの中間地帯・旧宿場町郊外】




ゴォォォォォォォォォ!!!


覚醒したアイリスが繰り出す魔法は一つ一つが正確かつ強力、それでいて目に見えない速度で襲い掛かる。

異形は一方的に焼かれ、反撃の余地もなくその場に倒れる。


「よし....今ならいける!!お前ら!!畳みかけるぞ!!!」


ライオの合図でダイダラ、エルニャが異形に向かって攻撃を繰り出す。


「オオオォォォオ......」


次第に崩れていく異形に完全に倒したと思ったライオ達はその場を離れる。しかしアイリスには全て見えていた。


「そことそこ、無駄よ。」


アイリスが放った火の玉が、再び復活しようと蠢いていたパーツを燃やす尽くす。こうしてついに魔力が尽きて、完全に行動を停止した。


「すごい....!どうしてわかったの...?」


アイリスの反応速度に驚いたエルニャが質問する。


「この姿になると微細な魔力も全て筒抜けになって見えるの....!?何、この魔力!?」


アイリスがその方向に目を向ける。ウルドの港側から異常な魔力を感じ取る。


「リンド....きっとそこにいるのね....!!」


アイリス達は魔力の方向へと駆け出したのだった。


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