第78話:孤高の捕食者と這い寄る影
【ウルド領域外縁・古代地下大迷宮『奈落の底』最深部】
ズガァァァァァァンッ――――ッ!!
巨岩でできた天井を穿ち、体長十数メートルを超える巨獣――ダンジョンボス【煉獄地竜】が真っ逆さまに叩き落とされた。
「グガアァァァッ……!?」
激しい悲鳴を上げるボス魔物。
だが、その巨躯の頭上には、純白と漆黒のオーラを纏った一人の男――リンドが静かに舞い降りていた。
「ハッ……深層のボスにしては、手応えがねぇな」
冷徹な瞳で見下ろした瞬間、リンドの左腕が異形に蠢き、巨大な【捕食】の顎となって地竜の首元へと噛みついた!
ブチブチブチッ――――ッ!!
『スキル【煉獄のブレス】【超極剛皮】の獲得を確認――』
『【捕食の王】の効果により、スキルが極大強化されます――』
体内に流れ込む濃密な魔力と新たな力。
だが、リンドの胸中に渦巻く渇望と激情は、この程度では到底収まらなかった。
(これでウルド近辺の未喰らいのボスはあと二体目……。だが、まだ足りない。シュウやそのレベルの奴らを相手にするには個人としての力も、戦力も不足しすぎている....!くそッ!!何か...何か無いか爆発的な力の増強を図れるような場所は....。)
激しい怒りと共に拳を握りしめるリンド。
その時――暗闇の奥から、複数の足音と、金属が擦れる重厚な音が響いた。
「……おいおい、マジかよ。あの『煉獄地竜』が……たった一人で瞬殺されてやがる……」
「……何者だ? 我々ウルド公認パーティが一角、【暴君ディザスターズ】の獲物の横取りをしようとは....ただではすまんぞ。」
暗闇から姿を現したのは、【暴君ディザスターズ】と名乗るウルドの公認パーティらしい。俺が【ランカーズ】にいたときにはなかったパーティだ。おそらくここ最近で名声を上げたのだろう。新品の眩しい鎧で身を固めていた。
その中央で大剣を担ぐリーダーっぽい男は、リンドの身に着けている装備を一通り見て舌をなめずりまわす。おそらく価値のあるものだと感じたのだろう。
「……誰だか知らんが、ダンジョンは仲良しこよしの場所じゃないだろ。獲物とかなんとかなんぞは知らん。」
静かに振り返るリンド。
「そういう事じゃねぇんだよ....お前別都市の冒険者か?...じゃあわかんねぇよな....いいか?俺達はAランクパーティでお前はランクもわからねぇソロのガキ!!てめぇには今発言の権利すらねぇんだよ!!ギャハハハ!」
「....俺がリーダーのハミルだ。こいつらは血の気が荒く実力も相当だ。殺される前にダンジョンボスの素材と装備品置いて消えれば見逃してやる。お前だって命は惜しいだろ?」
真ん中の男が仲間を制止して交渉を持ち掛ける。
「雑魚が吠えるなよ.....食っちまうぞ」
俺は低く唸る。
「……あァ? 何を生意気なことを言っていやがる……!」
リンドの忠告をあざ笑うように、【暴君ディザスターズ】の男たちが武器を構える。
言うだけあってかなり慣れた動きで陣取りだす4人。後衛も即座にバフスキルで前衛をサポートし、前衛の二人は目にも止まらぬ速度で襲い掛かる。
「ヒャハハハハハ!!死ねやァァァァ!」
男がリンドに向かって剣を振りかざす。しかし、その剣がリンドに届くことはなかった。
-----カチッ。
その刹那、ダンジョン内の時間が止まった。【時間操作】(クロノス)。一般の魔物や人間に対して最強のスキル。
「致命傷は与えられないが....ちゃんと叫び声を聞かせてもらいたいし好都合か。」
俺はその場を歩き出し、4人の腹を剣で抉る。
----カチッ。
そして時間が動き出す。
「....!?な....どこ行った....う、うぎゃああああああああ!!!」
「ガ.......ハァッ....!!」
動きだすとともに4人を強烈な痛みが襲う。その断末魔を聞いた俺は、まず後衛二人の首をはねて食らう。
「なっ....こいつ人を食って....!?うわぁぁぁぁ!く、来るな化け物.....!?」
その姿に完全におびえ切ったハミルというリーダーはその場に倒れ、小刻みに震える。
「お前のスキルも糧にしてやる。ありがたく思え。」
俺はこうして4人の人間を【捕食】した。あまり使えそうなスキルはなかったが、リーダーハミルのスキル【賢王】はかなりいい感じで、この世界の歴史や文学が頭に入り込んできた。さらに計算などがすぐに行えるようになり、より思考がクリアになったのがわかる。しかし。
「そうだ.....魔物のスキルだけじゃない....人間のスキルも合わせれば....俺はさらに強くなれる.....!!」
俺はその食欲と強くなることだけに従い行動する化け物になってしまった。




