第75話:断罪の雨と残された道
ドズゥゥゥゥォォォォォンッ―――――……!!!!
神の怒りの如き光と闇の槍が、天地を幾重にも貫き通す。
大平原を覆い尽くしていた深層化魔物の軍勢も、アダムスが呼び出した10体のボス魔物も、叫び声を上げる隙すら与えられず、一瞬で分子レベルで砕け散り消滅した。
世界が激しい光と闇の渦から解放され、静寂が訪れる。
煙立つ大地の真ん中に立つリンド。
【混沌の王】の姿が静かに解け、純白と漆黒のオーラが体内に収束していく。
その視線の先――下半身を止められ、全身に幾本もの光槍を打ち込まれた桐原蓮が、血の海の中で倒れていた。
「...ハ...ハハ....そうか....これが彼の言ってた...。」
胸を大きく波打たせ、桐原が自嘲気味に笑う。
【超深層】の驚異的な再生力すら、【グングニル・カオス】の概念破壊の前には一切機能していなかった。
「僕が目指した『真の王』は……最初から君だったというわけだ……」
「……桐原。教えろ。何故蘇った?どうしてシュウと行動していた?」
「フフ……ああ。彼が...シュウが魂を現世に呼び戻してくれたのさ。「君はまだ死んではいけない、まだできることがあるだろう」ってさ。」
「....そうか。あいつの目的は一体何なんだ....?」
「リンド、それはね....。」
桐原はシュウの本当の目的を話し始めようとした。その時だった。
ザシュッッッッ!!
どこからか黄金の剣が飛んできて、桐原を正確に突き刺した。
「!?な....なんだ!?おい!!桐原!!」
「口封じか....リンド、シュウに....【聖教国・サングリア】には気を付けるんだ....」
そう言い残して桐原は完全に動かなくなった。
(なんだ....【聖教国】?どういうことだ....?これで終わったんじゃないのか...?)
俺は桐原の体を捕食する。
『【超深層】の【捕食】を感知--。スキル進化条件を達成、【捕食の王】となります。以降捕食した魔物のスキルを増幅した状態で手に入れられる他、【神域種】の魔物のスキルも問題なく得られるようになりました。』
脳内に響き渡る意味不明のアナウンス。聞きなれない言葉の応酬に困惑する。まだ得体の知れない何かがあるのか。戦いの疲労で思考が追い付かず、一旦保留しその場を飛び立つ。
そして――。
「....言い残すことはあるか、アダムス。」
「ひ、ひぃぃぃっ……!待ってくれ...!この国は操られておる!【聖教国】...あやつらが真の黒幕じゃ!!わしは教皇様にバレぬように【深層】の力を増幅させる実験を市とったのだ!!」
崩れ落ちた岩陰で、槍の余波を受けて片腕を失い、惨めに這い回る男――国王アダムス・ユングベリ。
リンドは静かに歩み寄り、冷徹な瞳で見下ろした。
「どういうことだ。お前は【深層】の力で世界を統治するのが目的じゃないのか。」
「それは表向きの話じゃ....!!本当に世界を支配しているのは【聖教国・サングリア】...転生者を世界に呼び込み、【神域】の力を利用して神殺しを計画しているのだ!!!」
そういうことか。【神域】の力、そしてそれに唯一対抗できる【深層】の力。聖教国の野望を超えようとしていたのか。
「その話はわかった。だが……俺の仲間達が受けた痛み、カガヤの命、エノキダの母の無念、そして踏みにじってきた全ての民の報いを受けろ。」
「や、やめろ……頼む、やめてくれぇぇぇッ――!!」
ヒュンッ。
【流星龍の煌帝剣】が一閃。
哀れな悲鳴は途切れ、ウルド王国を闇で支配し続けた惨めな王の首が、大地へと転がり落ちた。
「.....終わったな。.....はっ、今まで食ってきた中で群を抜いて不味いな。」
転がった首を【捕食】し、あまりの不味さについ笑ってしまう。
「リンドーーーッ!!」
遠方から駆け寄ってくるアイリス、ダイダラ、エルニャ、そしてライオたちレアリア軍。
「ご無事でしたか、リンド様!!」
「ん……勝った……!」
ボロボロになりながらも、笑顔で駆け寄る仲間たち。
リンドは静かに剣を納め、遥か遠く――どこかへ姿を消した黒幕・シュウの去った空を見上げた。
「……ああ。俺達の...勝ち....だ....」
「リンド...?リンドォォォォォォ!!」
気を失い倒れるリンドをアイリスが急いで抱く。
「....安心しろ、激闘の疲労で気を失ってるだけだ。死んじゃいねぇよ。」
後ろからライオが声をかける。
「....その英雄を担いで帰るぞ。前代未聞の宴の準備だ....!!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
その場にいた全員で、勝利を雄たけびを上げる。こうしてウルドを中心とした闇は消え去ったのだった。




