第74話:混沌の閃光と王の終焉
「この世界の為に...僕が真の王になるんだ!!」
桐原蓮の叫びが解き放たれると同時に、大平原の天空が紫黒の雲に覆われ、巨大な魔導陣が幾重にも重なり合った。
地上の魔物から切断された魔力糸の残滓を強引に掻き集め、桐原は己の命そのものを燃やして【超深層】の極大魔法を練り上げる。
「僕が……僕こそが真の王だ! 破滅せよッ! 【超深層・天崩地裂】――――ッ!!」
空が落ちてくるかのような絶望的な圧縮魔力の塊が、リンドを目がけて一直線に振り下ろされた。
地上にいるライオやアイリスたちがその圧倒的な質量に息を呑む。だが――。
【混沌の王】と化したリンドは、ただ静かに【流星龍の煌帝剣】を横一文字に構えただけだった。
「その程度で今の俺は止められない。」
ズッ――……――――――ッ!!!!
目を開けられないほど光が辺りを包み込む。次にアイリス達がめを開けたとき、桐原が繰り出したはずの魔法陣は消え、まるで何もなかったかのような静寂へと変わっていた。
「な....僕の魔法を....そもそもなかった事にしたのか....!?」
空を覆っていた桐原の極大魔法も、歪んでいた時空間も、リンドの大平原を切り裂く一振りによって瞬時に両断された。
「....あーあ。興冷めだなぁ、もう勝敗は決した。【深層の王】は誕生せず、【贋物の王】が誕生してしまった...っと...。はぁ....。」
シュウは落胆した表情でどこかへと消えていった。
自分の切り札をいとも容易くかき消されたことによって動揺を隠せない桐原はその場で後ずさる。
「どうした、さっきまでの威勢はどこに行ったんだ?ほら、来いよ。」
俺はわざと挑発を繰り返す。隙を作りたかったからだ。
「黙れ黙れ黙れ黙れェェェ!!!うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
まんまと乗せられた桐原は先ほどまでとは打って変わって単純な動き、力任せの攻撃を繰り返す。
(よし、これなら片手間で防げる。)
俺は隙をすいてアイリスの脳内に言葉を送る。
『アイリス....聞こえるか?リンドだ。俺の軍勢以外のみんなをこの平原から遠ざけろ。できるだけ遠くだ。なるべく急ぎで頼む。』
「...!?リンド!?....わかった!みんな!!!リンドから通達!!!この場から引くよ!私を信じて!!」
アイリスはリンドから受け取った指示を的確に伝える。
「リンドから...!?チッ、何するつもりだ..!?」
その声を聞いてライオが反応する。
だがアイリスの必死な表情から疑うものはおらず、退避をしだす。
「全冒険者、撤退だーッ!!死にたくなきゃ撤退しろぉぉぉ!!!」
ライオの合図で冒険者たちが一斉に退避を始める。その異様な動きを見てアダムスは首を傾げる。
「なぜ退避を....?まぁいい、追撃だ!!一人として逃がすかぁぁぁ!!」
アダムスは逆にチャンスと見て、魔物を追撃させようとする。だがそこに立ちはだかるのはリンドが繰り出した【五角】の亡霊やウルフェン、リーシェン、ディープゴーレムたち。
「残念だが主の仲間には傷一つつけさせねぇぞ!!」
「ウルフェン素敵よ!!私を誰一人手出しさせないわ!!」
「我らリンド様の【四角】が、貴様らの追撃を許さん!!」
「わしの邪魔をするかぁぁぁ!!エノキダぁァァァ!!」
激昂するアダムス。
気づけば戦場は俺の死霊とアダムスの召喚した魔物、そして俺と桐原、アダムスのみとなっていた。
(ここまで退避させればいいだろう。)
俺は片手で受け止め続けてた攻撃をひらりと躱し、桐原の腹を思い切り蹴り飛ばす。
「グハァァァァ!!」
「さぁ、私欲に溺れ、理不尽に権力と暴力を振りかざすお前達に裁きの時間だ。」
俺は戦場を覆い尽くす魔法陣を展開する。
「な....なんだこの数は....!?グッ...クソッ!!」
嫌な予感を感じ取った桐原はその場を離れようとするが、それを読んでいた俺は桐原の下半身を【クロノス】で停止させる。
「滅せよ。【天穿つ神域と深層の槍】(グングニル・カオス)。」
合図と共に空に浮かぶ無数の魔法陣から神をも射殺す光の槍と闇の槍が無数に飛び出す。
戦場にいる全ての者に槍が突き刺さる。
全てを包み込む激しい光と全てを飲み込む絶望の闇が世界を揺るがした。




