第67話:黒き津波と屍の軍勢
【エル_ストラード大平原】
「グルァァァァァァッ!!」
「オオオオオオオオッ!!」
地平線を漆黒に染め上げる【深層化】魔物の大軍勢。
その数、数千、数万。地響きと共に押し寄せる魔物の津波は、眼前のすべてを呑み込もうと大平原を蹂躙していた。
「ひ、ははははっ! 見よ、この圧倒的な暴力をッ!!」
高台の上で宝杖を掲げる国王アダムスが、狂乱の笑みを撒き散らす。
「いくら【五角】を破ろうと、この数の暴力には抗えまい! 踏み潰せ! 喰らい尽くせぇぇぇッ!!」
押し寄せる圧倒的な絶望。地面を揺らす大足音にアイリスたちが身構える中、リンドは慌てる様子もなく静かに前へ出た。
「数の暴力か……。アダムス、お前は勘違いしているぞ」
リンドの影が激しく蠢き、大平原の地面全体へと漆黒の領域が広がっていく。
体内に眠る【神域】の魔力と、これまで喰らい尽くしてきた無数の生命の記憶が、リンドの咆哮と共に解き放たれた。
「――数を誇るなら、俺の『貯蓄』と勝負してみるか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!
「な……なんだとッ!?」
アダムスの叫びをかき消すほどの重低音が響き渡る。
リンドの足元から広がった漆黒の影から、禍々しい紫炎を纏った「死霊の大軍勢」が次々と湧き出てきた!
「【死霊召喚・神域開闢】――押し潰せ」
リンドが従えたのは、今まで【捕食】してきた深層の大型魔物、討伐した無数の敵、そして――かつて牙を剥いたバンドや双子、エノキダと言った凶悪な死霊兵団。
「オオオオオオオオオオオッ!!」
死霊の巨獣たちが咆哮を上げ、アダムスの放った深層魔物の大軍勢へ向けて正面から突撃する!
ドォォォォォォォォォォンッ!!!!
平原の中央で激突する「数万の深層魔物」と「リンドの死霊軍団」。
大気を揺らす衝突音と共に、肉肉しい激突と魔法の嵐が吹き荒れ、大平原は一瞬にして二つの大軍勢が喰らい合う大規模な「戦争」の戦場へと変貌した!
「バ、バカな……!? たった一人で……余の軍勢と拮抗するほどの兵力を召喚しただと……!?それにあれは....【五角】の奴らまで....!?」
圧倒的な数の暴力で潰すはずが、まさかの「軍勢 vs 軍勢」の全面戦争へともつれ込み、アダムスは顔を大きく引きつらせる。
「フンッ! さすがはリンド様! 圧巻の軍勢ですな!!」
「ん……! これなら……前に行ける!」
「よくやったお前達!!俺が国王を取りに行く!!」
大混戦となる戦場の中、リンドは死霊たちが切り拓いた一本の「道」を疾走する。
激しい合戦の渦を突き抜け、めざすは国王アダムス、冷ややかな笑みを浮かべる男。あと数歩というところで、リンドの目の前にありえない光景が広がった。
「なっ....!?お前はまさか...!?」
「久しいね、山城....いや、リンド……。と言っても君と出会ったときは僕の意識は乗っ取られていたからね....。悪いけどこの世界の為にも、君にはここで死んでもらう。」
異形の角を生やし、【超深層化】したもう一人の『深層の王』――桐原蓮。以前アルス=ノヴァとなった彼を確かに【捕食】したはずだった。何故今ここにいるのか、どうして俺の前に立ちはだかるのか。騙され、利用され、殺されたアダムスの護衛をしているのか。聞きたいことだらけで思考が回らなくなりかける。だが、やるべきことは変わらなかった。
「悪いが俺の前に立ちはだかるなら....誰であろうと食らい尽くすだけだ!」
数万の兵が殺し合う大戦争の真ん中で、ついに二人の「王」が激突する――!




