↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/122

第64話:遺志を継ぐ顎と要塞の影


静寂が街道を包み込む。

膝をつき、最期に穏やかな微風のような笑みを浮かべて息絶えたカルマルド・エノキダ。


リンドは静かにその死体へと歩み寄り、手を伸ばす。


「あんたの無念と、その血脈……確かに俺が引き継ぐ」


「【捕食】――ッ!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


【五角】最強の人間、そして過去の転生者の血を引く男の生命力と、理不尽なる時間のチート因子がリンドの体内に流れ込んでいく。


『個体名:カルマルド・エノキダの【捕食】を完了』

『固有スキル【時間操作(クロノス)】を獲得』

『※【神域】との統合により、局所的な時間干渉・停止の効率が大幅に上昇しました』


ドクンッ……ッ!!


全身の細胞が歓喜に震え、脈打つ。

【神域】に続き、双子の【風化・腐敗】、そしてエノキダの【時間操作】。

リンドという存在のスペックは、もはや世界の理そのものを書き換える領域へと到達していた。


「リンド……っ!!」


魔力の暴走が収まると同時に、アイリスが耐えかねたように駆け寄り、リンドの胸へと飛び込んできた。


「無事で……無事でよかった……! 戻ってきてくれて、ありがとう……ッ!」


「……ああ。お前たちが持ちこたえてくれたおかげだ。アイリス、ダイダラ、エルニャ……よくやったな」


「リンド様にお褒めいただけるとは光栄の極み! ですが、アイリスのあの決死の作戦とエルニャの動きがなければ、危ないところでしたぞ!」


「ん……みんなで、勝った……!」


互いの健闘を称え合い、ボロボロになりながらも笑い合う四人。

リンドの不在を埋め、力を合わせて最強の【五角】を打ち破った経験は、三人の絆と強さをより強固なものへと昇華させていた。


「よし……回復魔術で傷を癒やしたら、一気に向かうぞ」


リンドは視線を上げる。街道の遥か先、雲を突く山脈の合間に見えてきたのは、漆黒の魔導鉱石で覆われた無骨極まりない建造物――。


国王アダムスが逃げ込み、最後の防衛線を敷く絶対不可侵の戦場。

要塞都市『エル・ストラード』。


「アダムス……最後の【五角】も潰した。お前の手札はもう無いぞ」


カガヤの遺志を抱き、エノキダの母への誓いを胸に秘め、リンドたちはついに最後の決戦の地へと足を踏み入れるのだった――。




【要塞都市エル・ストラード・玉座の間】


「どういうことなのだ……!!」


重厚な要塞の最深部。豪奢な絨毯の上に、国王アダムス・ユングベリは惨めに這いつくばっていた。

手に持った魔導通信器からは、ノイズと共に『カルマルド・エノキダの生命反応消失』という残酷な事実が告げられている。


「エノキダまで破られたというのか……!? 最強の【五角】だぞ!? 【クロノス】を持つあ奴まで……ッ!!」


血の気を失い、ガタガタと歯の根を鳴らすアダムス。

ダンジョン資源の独占、世界を握るはずだった【深層】の力。そのすべてを支えていた最強の暴力【五角】は、今や一人の『害虫』によって完全に全滅させられたのだ。


「何が国王だ……! 何がウルドの主だッ!! これでは……これでは余が追い詰められているではないかッ!!」


爪を噛み、錯乱状態で叫び散らすアダムス。

その哀れな醜態を、暗がりから見下ろす二つの影があった。


「相変わらず見苦しいな、アダムス。小物が王の真似事をするからそうなる」


静寂を破って歩み出たのは、冷ややかな漆黒の瞳を持つ青年――桐原蓮(キリハラ・レン)。


「き、貴様……桐原……ッ!?お前は死んだはず....!」


アダムスが息をのむ。桐原は、リンドと同じくダンジョンの最奥で【深層】を使い、過去に処刑したはずの存在だった。それが今、目の前に立っている。


「……勘違いするなよ、アダムス。僕がお前を助けてやるわけじゃない。僕の目的は、神域の領域に達したあの男――リンドをここで喰らい、俺が唯一無二の『真の王』になることだ」


桐原の背後に、ぬっと影が差す。

一切の感情を見せないヘラヘラ顔で、ぬかるんだ殺気を放つ男――シュウ。


「シュウ……貴様もか……!」


「フフフ....そう殺気立たないでよ国王サマ。」


シュウは笑いながらアダムスの顔を覗き込む。


「この桐原クンが新【五角】にして、史上最高傑作なんだよ!!ほら、桐原クン!!見せてあげてよ!アハハハハハ!!」


「【超深層化】...!!ハァァァァァァ!!」


桐原が異形へと成る。その姿はまるでおとぎ話に出てくる”魔王”を彷彿とさせるような....まさに【深層の王】を名乗るにふさわしい禍々しい姿だった。


「ふ……ふはは……! そうか……! 新たなる【五角】……! 深層の王がいれば、どんな者だろうと恐れるに足らんッ!!」


桐原蓮とシュウ。

【五角】の全滅によって絶望の淵にいたアダムスは、狂気に満ちた歪んだ笑顔を取り戻す。


要塞都市エル・ストラードの最奥で、リンドを待ち受けるのは、同じく神の領域へと至った「もう一人の転生者」――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。