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第52話:蠢く影と裏の盤面


リンドたちが極寒の隠れ里で修行を重ねている頃――世界の各地では、不穏な波紋が静かに広がり始めていた。


【王都・深層の間】


王国の象徴たる荘厳な玉座の間。重厚な扉の奥で、国王アダムス・ユングべリが不快そうに目を細めていた。その目前に膝を突くのは、寸分違わぬ顔立ちをした不気味な双子の刺客――【五角】の一角、「ワビー」と「サビー」。


「……感知したぞ。北の最果て、忌々しいあの老いぼれの魔力が一瞬弾けた。……【神域】の理に触れようとしておる」


アダムスの冷徹な声が響く。


「ワビー、サビー。カガヤの生け捕りは不要だ。息の根を止めよ。……もしそこに何か『害虫』を見つけたら、まとめて潰せ。」


「「御意……我が王」」


双子は奇妙に揃ったハモりで短く応えると、影のように空間へ溶けて消えた。


【深層ダンジョン・第70層】


「ハァ……ハァ……ッ! クソッ、なんなんだよこの化け物は……!?」


暗黒の絶望が渦巻く深層ダンジョン。かつて栄光を誇ったトップパーティ『ランカーズ』の面々は、血みどろになりながら膝をついていた。想定を遥かに超える高濃度の魔力波に呑まれ、壊滅寸前の危機に陥っていたのだ。


「この異様な魔力で体も思うように動かない...何なのよこれ!!!」


ガルガンとナスタが死にかけたような声で叫ぶ。


「もう……ダメだ……!」


巨大な魔獣の爪が襲いかかり、ランカーズのリーダーが目を瞑った――その時。


――スッ……。


突如として、ダンジョン全体を包み込むような“透明な糸”が空間を走った。次の瞬間、目の前で迫っていた凶悪な魔獣たちが、何の前触れもなく『青い粒子』へと分解され、霧のように消滅した。


「え……? な、何が起きた……!?」


助かった理由も分からず、呆然と立ち尽くすランカーズ。その遥か上層、闇の天井に腰掛け、人形のように糸を弄る一人の男の影があった。


「……神が救ってくださった……神に祈りを捧げ続けた者には救いが訪れる....。」


妖しい笑みを浮かべるシアン。他のメンバーはポカンとしているが、まずは命が助かったことに感謝しつつ脱出を急ぐことにした。


【東部国境沿い・荒野】


そして同時刻。地平線まで広がる荒野で、あり得ざる光景が繰り広げられていた。激しい爆風と雷光。その中心に立っていたのは、もう一人の現存する転生者――シュウ。そしてその隣には、漆黒の刀を構える死んだはずの転生者――桐原蓮(キリハラ レン)。二人に対峙するのは、アダムス直属の精鋭【五角】の一人――フェリス・ボルス。


「ハハッ! シュウ!!まさか我が王を裏切るとはな!!まぁ貴様ならやりかねないと思ったがな!!」


フェリスが不敵に笑いながら凶悪な魔力を滾らせる。敵対しているはずの【五角】、そしてシュウと桐原蓮。本来交わるはずのない者たちが、なぜこの場所で剣を交えているのか――?


「さぁ蓮クン、君の転生者として覚醒した力を見せてあげなよ!」


「........【深層化】。」


ゴォォォォォォォォォォォ!!!


「な.....なんだこの絶望的な魔力は!!?」


あまりの魔力に驚きを隠せない【五角】フェリスと、ニヤニヤしながら様子を見るシュウ。様々な者達の思惑が複雑に絡み合い、世界は混迷の度合いを深めていく――。



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