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第48話:水晶洞窟と漆黒の従者


レアリアの街を旅立ってから数日。北へ進むにつれ、緑豊かな風景は次第に荒々しい岩山と凍てつく風が吹き荒ぶ寒冷地帯へと姿を変えていた。


「ハァ……ハァ……寒いね、リンド。」


吐く息を白く染めながら、アイリスがコートの襟をギュッと寄せ寄ってくる。


「ああ、この先の山を抜けてさらに北に進めばウルドともレアリアとも関わりの薄い村があると聞いた。まずはそこを目指す。だがその前に……あそこの洞窟で少し体を休めつつ、戦力を整えよう」


リンドが指さしたのは、岩山の麓に大きく口を開けた『水晶洞窟』だった。洞窟内部は、青や紫に発光する巨大な水晶が群生しており、不気味ながらも幻想的な光に包まれている。


「ここは高ランクの魔物が巣食うダンジョンだ。俺たちの連携を確かめるにはちょうどいい」


リンドの言葉通り、洞窟の奥から重厚な足音が響き渡る。現れたのは、洞窟の水晶を全身に纏った体長五メートルを超える巨大な魔物――『クリスタル・ゴーレム』の群れだった。


「みんな、各自の力を試すぞ!」


「了解っ! 【疾風迅雷・三連突き】ッ!」


真っ先に飛び出したエルニャの動きは、以前とは比べものにならないほど鋭く洗練されていた。風を纏った短剣が、硬度を誇る水晶の関節部を正確無比に穿ち、一瞬で一頭の動きを封じる。


「はぁぁぁッ! 【剛天・砕岩斬】ぃぃっ!!」


続いてダイダラが巨斧を振り下ろし、エルニャが隙を作ったクリスタル・ゴーレムの外殻を豪快に粉砕する! 前衛二人の息の合ったコンボだ。


「私も負けてられないよ! 【極寒の結晶槍(フリーズ・ランス)】ッ!」


後方からアイリスが放った氷結の槍が、打ち砕かれた外殻の奥へ突き刺さり、魔物の核を瞬時に凍てつかせて撃破する。


「みんな、かなりレベルアップしてるな」


頼もしい仲間の成長に目を細めつつ、リンドは前方から迫る残りのクリスタル・ゴーレムの大群を見据えた。


「――よし、俺の『新しい戦力』も試してみるか」


リンドが影を落とすように片手をかざす。バンドを【捕食】したことで解放された――【死霊召喚】。


「出ろ……【死霊召喚】ッ!」


ズズズズズズズズ……ッ!!


リンドの足元の影が爆発的に広がり、漆黒の泥のような沼から『二つの巨大な異形』が這い出てきた。


「ギャハハハハハハハッ!! 殺し時間だぁぁッ!!」


「グオオオオオオオオオオッ!!」


一頭は、かつてリンドたちを死限まで追い詰めた狂王――【バンド・ジャガラ】。

もう一頭は、神殿を揺るがした圧倒的要塞――【ディープ・ゴーレム】。


生前の凶悪な姿そのままに、しかしその瞳はリンドへの絶対の忠誠を示す漆黒の光を宿していた。


「な……ッ!? バンドと……あの巨大ゴーレム……!?」


アイリスたちが息を飲む中、リンドの手招き一つで死霊の軍勢が牙をむく。


「蹂躙しろ」


「ヒヒッ! 砕け散れぇぇぇッ!!」


ズババババババァァンッ!!


バンドの【千獣断絶爪】とディープ・ゴーレムの超重量の岩拳が炸裂し、一瞬にしてクリスタル・ゴーレムの群れがただの水晶片となって洞窟内に砕け散った。


「す、凄すぎるよリンド……! かつての強敵が、全部リンドの味方になっちゃうなんて……!」


「これほど心強い従者はおりません! 流石はリンド様だ!」


アイリスとダイダラが興奮気味に声を上げる。死霊召喚の圧倒的な威力を確認したリンドは、召喚を解除して満足げに頷いた。


「よし、ここで戦力強化と行こうか。まずは全員バンドにタイマンで勝てるくらいにはなっておくべきだな。」


「あの化け物に1対1で勝てって!?鬼よリンドぉぉ...」


アイリスとエルニャがへたれる横でダイダラはいつにも増して目をギラつかせている。


「守るだけではダメだ...奴程度一人で倒せるようになりましょう!!!」


「その意気だダイダラ...!!さぁ、召喚するぞ!!バンド!!」


こうして鬼教官リンドによる超絶スパルタ訓練が幕を開けた。

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