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第44話:絶対なる力、無慈悲なる蹂躙


「ヒヒッ……ヒハハハハハッ!! 最高の宴だぁぁッ!!」


何十重にも重なる瓦礫を爆発させ、血みどろのバンドが跳ね起きた。胸骨はへし折れ、体表からは不気味な黒血が吹き出している。しかし、その瞳に宿る殺意と不吉な輝きは、衰えるどころか極限まで跳ね上がっていた。


「認めてやるよ『深層の王』……! てめぇは俺様が今まで喰ってきたどんな雑種よりも……最高に凶悪なバケモノだッ!! だからこそ……俺様の『すべて』で喰い殺すッ!!」


バンドが両爪を自身の胸に深く突き立てる。

どくろのように歪んだ不快な咆哮と共に、彼の肉体が急速に異形へと蠢き始めた。


「【絶対獣化・獣王モード(ビースト・ロード)】ぉぉぉぉぉッ!!!!」


ズズズズズズズズ……ッ!!


神殿の天井を突き破らんばかりに膨張する巨躯。全身を鋼のごとき漆黒の獣毛が覆い、四本の極太の腕と、深層の呪いを不気味に纏う巨大な三本の角が頭部から生え揃う。

バンドが長年培ってきた殺戮の経験と、過剰な深層魔力を限界突破させて解放した、まさに『凶獣の王』の姿。その咆哮だけで、周囲の空間が不気味に歪む。


「オオオオオオオオオオッ!!!! 死ねぇぇぇぇ『深層くん』ぁぁぁッ!!」


音速を超越した衝撃波を置き去りにし、四本の凶腕から放たれる千の爪撃――【千獣断絶爪】。

神殿の空間そのものを細切れに破砕するかのような、文字通りの『絶対的な暴力』がリンドへと襲いかかる。


だが――。


「……鬱陶しい」


重厚な重低音。

数万倍に研ぎ澄まされた知覚の中で、世界は静止していた。


リンドは伸びた赤い髪を夜風になびかせ、片手を緩やかに持ち上げる。

ただ、それだけだった。


ガキィィィィィィンッ!!!!


「なっ……!? ガ……ッ!?」


神殿を粉砕するはずだったバンドの全力の爪撃が、たった一本の『漆黒の手』に受け止められていた。

波及する衝撃波すら発生しない。バンドの巨体から放たれた万の殺意が、まるで巨岩にぶつかった波のように、リンドの手のひら一つで完全に殺されていた。


「バ……カな……ッ!? 俺様の……『獣王モード』の全力が……片手で……!?」


バンドの眼球が裏返りかけるほどの戦慄。

どれほど力を込めようと、リンドの漆黒の腕は微動だにしない。深層の王の前に、凶獣の王の力など赤子のごとき戯言に過ぎなかった。


「……終わりだ、バンド」


リンドの爛々と光る真っ赤な両眸が、無感情にバンドを見下ろす。

掴んだ凶腕を、ただ無造然に軽く握り潰した。


メリメリメリ……ボガァッ!!


「ギャアアアアアアアアアアアッ!??!?」


鋼の強度を誇るバンドの巨腕が、まるで腐った枝のように容易く粉砕される。

もう片方の手に握られた【冥王の凶剣】から人種特攻の斬撃を繰り出す。


ドガァァァァンッ!!!!


ただの横薙ぎの一撃。それだけで神殿の半分が吹き飛び、獣王と化したバンドの巨躯が真っ二つに裂け、まるでゴミのように床を転がっていく。


「あ……あぁ……」


遠巻きに見守っていた冒険者たちが、息を呑んで震えていた。

圧倒的。無慈悲。次元が違う。

バンド・ジャガラという絶望の象徴が、いまやただの『玩具』のように蹂躙されていた――。

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