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第35話:それぞれの準備


バンド・ジャガラとの最終決戦を控え、俺たちは一旦それぞれで戦力を整え直すことにした。


「リンド、一人でダンジョンに行くの……? 気をつけてね」


「ああ、決戦前に少しでも能力の底上げをしておきたいからな。アイリスたちも無理はするなよ」


俺は単独でバラクシア近郊の未攻略ダンジョンへと向かい、アイリスたちは街へと残った。


―――


暗いダンジョンの奥底。

俺の前に立ちはだかるのは、巨躯を誇る高ランクの魔物たちだ。


「ガアアアアッ!!」


「【時間停止】――」


――ピシィィィンッ!


半径5メートルの灰色空間。静止した魔物の首を【星砕き】で容赦なく撥ね飛ばす。

戦闘時間はわずか数秒。倒した強力な魔物たちへ、次々と手をかざしていく。


「【捕食】――!」


『【捕食】――完了。【金剛肌】【迅雷脚】【超感覚】を獲得』


脳内に響くスキルの習得通知。単独だからこそ、誰の目も気にせず怒涛の勢いで魔物を喰らい、ステータスとスキルを着実に底上げしていく。


(……これで防御、機動力、索敵能力が大幅に上がった。バンドの圧倒的な速度にも、これで対応できる……!)


―――


一方、街の訓練場では――。


「ガハハハハッ! ダイダラ、お前の斧撃、マジで重くねぇか!?」


「ハァッ……! サウス殿の大剣の鋭さも素晴らしい! 共に前線を張る者として、非常に勉強になりますぞ!」


そこには、豪快に汗を流しながら打ち合うダイダラとサウスの姿があった。

巨漢で誠実な前衛同士、二人は驚くほど意気投合していた。


「ゲンを失って落ち込んでたが……お前との打ち合いで少し楽になった気がするぜ!感謝するぜダイダラ!」


「サウス殿……! ありがたきお言葉! 我らの鉄壁の盾となり、リンド様や仲間たちに傷一つつけさせはしませんぞ!」


お互いの背中を預け合える前衛コンビとして、二人の連携は特訓の中でより強固なものへと昇華していった。


―――


そして、バラクシアの賑やかな商店街。


「エルニャ、見て見て! このリボン、エルニャの髪色にすごく似合いそう!」


「えっ……あ、アイリスちゃん……あたし、そんな可愛いの……」


アイリスはエルニャの手を引いて、洋服屋や雑貨屋を楽しそうに巡っていた。

昨夜の悲しい過去を知り、少しでもエルニャを元気づけようと街へ連れ出したのだ。


「ううん、絶対似合うよ! ほら、着替えてみて!」


強引に試着室へ押し込まれ、可愛らしい服に着替えて出てきたエルニャは、恥ずかしそうにモジモジと頬を染める。


「ど、どうかな……?」


「~っ! かわいすぎる……!!」


アイリスが目を輝かせてエルニャを抱きしめる。

美味しいスイーツを食べ歩き、賑やかな街の空気を感じるうちに、エルニャの表情から暗い影が消え、自然な笑顔が戻っていった。


「……ありがとう、アイリスちゃん。あたし、すっごく楽しい……!」


「ふふ、よかった。決戦が終わったら、またリンドたちも一緒にみんなでショッピングに来ようね!」


「うん……! 約束……!」


―――


そして夜。

それぞれの準備を終え、宿屋へ戻ってきた俺たち。


「リンド、お帰りなさい! 無事だった?」


「ああ。……二人とも、いい顔になったな」


買い出しから戻ったアイリスとエルニャのすっきりとした笑顔を見て、俺は口角を上げる。


個人のスキルの底上げ、前衛同士の絆、そして仲間たちの心のケア。

戦力も、絆も、完全に整った。


「いよいよ明日だな」


「うん。……クソ親父との因縁、あたしたちの手で終わらせよう!」


準備は万全だ。

明日、俺たちは『ディープレイヤー』の全力を提示し、最後のダンジョンへと討ち入る――。

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