第28話:再訪と賑やかな準備
クロシキの森での壮絶な戦いを終え、俺たちは再び潮風薫る海の都市――『バラクシア』へと戻ってきていた。
「ここが……バラクシア……」
生まれて初めて見る海と活気あふれる街並みに、アイリスが銀髪を揺らしながら目を輝かせる。
「アイリス様、人の多い場所ですので離れないようご注意くださいね」
「海……おっきい……! アイリスちゃん、あっち……!」
巨躯を縮めて礼儀正しく注意を促すダイダラと、珍しそうにアイリスの袖を引っ張るエルニャ。
そんな三人を見守りながらギルドへ入ると、見知った顔がこちらへ飛んできた。
「おいリンド! 無事だったか……って、ん???」
声をかけてきたのはライオだ。隣にはカレンも控えている。
ライオは俺の隣に立つアイリスを二度見し、さらにダイダラとエルニャを見て目を丸くした。
「おいおい……数日見ない間に、なんでそんな超絶美少女が増えてんだよ?」
「言い方。……ライオ、こちらはアイリスだ。色々あって俺たちの仲間になった」
「アイリス・ルナスティアと申します。リンド様には命を救われました。よろしくお願いします」
「ル、ルナスティア……!? あの大貴族の……!?」
清楚でおしとやか、かつ圧倒的な美貌を誇るアイリスの丁寧な一礼に、ライオは鼻の下を伸ばしてドギマギしている。カレンがジト目でライオの脇腹を容赦なく肘打ちした。
「痛っ!? なにするんだよカレン!」
「ギルドマスターとしての態度を頼む。所でリンド殿、ちょうどよかった。実は今、かなり状態が芳しくない。」
カレンの言葉通り、ギルド内は張りつめた空気に包まれていた。
都市周辺にある4つのダンジョンが原因不明の変異を起こし、同時に『半深層化』。いつ魔物の大氾濫が起きてもおかしくない危機的状況に陥っていたのだ。
ギルドと都市が出した結論は――『3日後の一斉攻略』。
ライオたちや他パーティと連携し、同時にアタックを仕掛ける作戦だ。
「よし、3日後までにガッツリ戦力を整えるぞ!」
―――
攻略決定後、俺たちはまず防具屋と武器屋へ向かった。
「アイリス様にはこの頑丈な全身鎧が似合うかと!」
「ダイダラ、それ……アイリスちゃん……うごけない……」
「あたしは……この……おっきいハンマー……!」
「エルニャ、それはお前の身長より大きいぞ……」
ノリノリで重装甲を勧めるダイダラと、身の丈に合わない大業物を欲しがるエルニャ。
更には、店主から「お嬢さん、こちらの可愛いフリルの詠唱衣なんてどうだい?」と勧められ、顔を真っ赤にして固まるアイリス。
「り、リンド……これ、胸元がすごくスースーするんだけど……っ」
「店主、スケベ心で防具を選ぶな。……アイリス、こっちの機能性重視の魔導衣にしろ」
「ふふ、リンドが選んでくれたなら、私これにする!」
ワチャワチャと騒がしい買い出しを終えた後は、近郊の森へ出て「超効率レベリング」を開始した。
「ハァッ……!!」
ダイダラの斧撃が魔物を叩き潰し、エルニャの素早い一撃が隙を突く。
俺が瀕死まで追い詰めた魔物を3人に倒させることで、俺の【導き】による経験値分配が働き、3人のレベルは面白いように跳ね上がっていった。
アイリスもまた、封印から解放された魔力を巧みにコントロールし、正確な術式で魔物を射抜いていく。
「リンド……私、戦える。もう足を引っ張ったりしない……!」
「ああ、頼りにしてるぞ。……【捕食】!」
俺自身もまた、倒した魔物を片っ端から喰らい尽くし、能力を着実に底上げしていった。
そして――あっという間に過ぎ去った3日間。
一斉攻略の前夜、俺たちは新調した装備を身に纏い、作戦会議を行っていた。
「明日からの共同戦線、俺たちのパーティ名が必要だな」
俺の問いかけに、ダイダラが真面目な顔で頷く。
「リンド様が率いるパーティです。深層の絶望から這い上がり、更なる深みへと挑む……そんな名が相応しいかと」
「――『ディープレイヤー(Deep Layer)』。俺たちのパーティ名は、これで行く」
「ディープレイヤー……! 格好いいですっ!」
「うん……! ディープレイヤー……いい……!」
決意を新たにする仲間たち。
深層を知る俺たちが、この半深層化したダンジョンの脅威を喰らい尽くしてやる。
いよいよ明日、4大ダンジョン一斉攻略の火蓋が落とされる――。




