↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/122

第21話:漆黒の森と、新たなるスキル


夜の静寂が包み込む中、俺は一人で『クロシキの森』へと足を踏み入れていた。


明日、ダイダラとエルニャをレベリングのために連れてくる予定のダンジョンだ。事前に俺が探索し、安全を確保しつつスキルと経験値を回収するのが今回の目的だった。


「……なるほど、噂通りの場所だな」


足を踏み入れた途端、木々の隙間から無数の殺気が俺に向けられる。

ここは初心者お断りの高難易度エリア。現れる魔物のレベルが全体的に高く、森の鬱蒼とした環境も相まって並の冒険者なら一瞬で命を落とす危険なダンジョンだ。


だが――今の俺には、ただの「狩場」に過ぎない。


「手始めに……試してみるか。【死霊魔法・極】――出よ、『アサシンベア・深層』」


黒い魔法陣が地上に展開し、先日捕食して死霊枠にストックした、あの完全深層化した巨大な黒熊が姿を現す。

漆黒の毛並みと赤い紋様を撒き散らす巨獣は、解き放たれた瞬間に雄叫びを上げた。


『ガァァァァァァァァァッ!!』


「森の魔物を片っ端から蹂躙しろ。……ただし、俺の喰う分は綺麗に残しておけよ」


俺の命を受けたアサシンベアは、狂暴な嵐となって森を駆け抜けた。

襲いかかってくる高レベルの魔物たち――巨大な毒蜘蛛や魔樹の怪異を、その圧倒的な暴力と殺傷力で次々と肉片へと変えていく。

まさに蹂躙。俺が手を下すまでもなく、森のモンスターが一瞬で殲滅されていく。


(……相変わらずエグい破壊力だ。これならダイダラたちのレベル上げも一瞬で終わるな)


俺はアサシンベアが倒した魔物の死骸を巡り、要領よく【捕食】を重ねていく。

その中で、巨大な怪鳥の魔物を喰らった瞬間、脳内に待ち望んでいたシステム音が響いた。


『高位魔鳥を【捕食】しました。スキル【飛翔】を獲得』


(【飛翔】……! ついに空を飛ぶスキルを手に入れたか!)


これで移動や空中戦の幅が劇的に広がる。神域の翼を持つシュウのような連中と戦う上でも、空を飛べるかどうかは極めて重要な要素だ。大きな収穫に口元が緩む。


――その時だった。


――ズゥゥゥゥン……っ!! ズゥゥゥゥン……っ!!


地鳴りのような重い足音が森の奥から響き渡り、木々がバキバキと豪快に薙ぎ倒された。

アサシンベアが警戒するように唸り声を上げ、その巨大な影に視線を向ける。


現れたのは、巨大な家屋ほどもある凄まじい体躯を誇る、一本角の巨大なイノシシ――『剛角魔猪(ガルガンチュア・ボア)』だった。


「……ほう、クロシキの森の主(エリアボス)か」


全身を鋼鉄以上の硬度を誇る黒毛で覆い、その角には禍々しい魔力が渦巻いている。

アサシンベアが即座に襲いかかり、鋭い爪撃【八つ裂き】を叩き込んだ――しかし!


――ガァァァァンッ!!


金属を叩いたような鈍い音が響き、アサシンベアの攻撃が一切の威力を削ぎ落とされて弾かれた。ガルガンチュア・ボアの身体を、透明な魔力の力場が覆っている。


「物理攻撃ではなく……魔力を無効化する力場か!」


アサシンベアを弾き飛ばした巨猪は、赤い目を血走らせて俺に向かって凄まじい速度で突進(チャージ)してきた。


「だが、俺の物理打撃を耐えられるかな――【星砕き】!!」


逃げることなく正面から踏み込み、限界まで練り上げた拳を巨猪の眉間へと叩き込む。

衝撃波が森全体を揺らし、ガルガンチュア・ボアの頭骨が粉砕する嫌な音が響いた。力場ごと頭部を打ち抜かれた巨体は、勢い余って俺の足元で倒れ込み、激しく痙攣した後に絶命した。


「ふぅ……。よし、いただきます」


俺は巨猪の死骸に手をかざし、肉を喰らい尽くす。


『ガルガンチュア・ボアを【捕食】しました。経験値を獲得。スキル【魔法無効】を獲得』


(【魔法無効】……!?)


目を見開いた。

あらゆる魔法攻撃や魔力デバフを完全に打ち消す、壊れ級のチート防御スキルだ。

これがあれば、ウルドの魔法兵団やゲステスのような魔法職はもちろん、神聖魔法や暗黒魔法を使うあらゆる強敵の攻撃を無力化できる!


「ククッ……ハハハ! 最高の収穫じゃないか……!」


空を飛ぶ【飛翔】に、魔法を無力化する【魔法無効】。

たった一晩で、俺の生存能力と戦闘力は跳ね上がった。


ホクホク顔でアサシンベアを亜空間へと戻し、そろそろ引き揚げようと森の最奥へ足を進めた――その時。


「……ん?」


【心眼】と【気配感知】の端に、かすかな生の反応が引っかかった。

魔物ではない。……人間だ。


木々を押し分けて奥へ進むと、開けた小さな広場の木陰に、一人の少女が倒れていた。

ボロボロの衣服を纏い、ぐったりと気を失っている。


(こんな危険な『クロシキの森』の最奥に……どうして女の子が……?)


俺は警戒を解かないまま、静かにその少女へと近づいていった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。