↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/122

第14話:砂塵の異能と、忍び寄る影


賢王の墓を攻略してから数日、俺たちは再び『賢王の墓』ダンジョンへと籠っていた。

目的は、新しく仲間となったダイダラとエルニャのレベル上げ、そして俺との連携力の強化だ。


このダンジョンに群がる『骸骨騎士(スケルトンナイト)』たちは、集団戦の動きが非常に統制されており、一般的な魔物よりもかなり強めに設定されている。

これから始まる復讐の旅において、「人型・兵団」との戦闘を多く経験しておくことは絶対にプラスになると踏んで、このレベリング環境を選んだのだ。


数日間の連戦を経て、現在の二人のステータスは以下の通りだ。


ダイダラ


Lv:102


HP:19,773 / MP:190


筋力:1,882 / 魔力:46


防御:4,921 / 魔防:4,837


俊敏:1,087 / 運:50


所持スキル:【完全なる肉体】


エルニャ


Lv:96


HP:6,875 / MP:1,017


筋力:1,040 / 魔力:926


防御:901 / 魔防:1,038


俊敏:12,772 / 運:50


所持スキル:【神速】


Lv60前後だった二人のレベルは、この二、三日で30以上も跳ね上がり、ステータスもかつての『ランカーズ』たちに引けを取らない領域へ成長した。

こうして数値を並べて見ると、二人とも驚くほど極端なステータス配分をしている。まるで前世でやり込んだ特化型の育成ゲームのようだ。


「……余計なステータスを削ぎ落として、長所だけを突き抜けさせた感じか。これはこれで大いにアリだな」


特にダイダラの常軌を逸したタフネス(HP・耐久)と、エルニャの音速を超える俊敏性は、並の冒険者を遥かに圧倒している。

俺が最後に見た、元リーダー・ガルガンのステータスと比較するとその差は一目瞭然だ。


ガルガン・ブルダ


Lv:90


HP:10,286 / MP:965


筋力:1,340 / 魔力:827


防御:1,019 / 魔防:996


俊敏:1,051 / 運:50


所持スキル:【金剛力】


ガルガンはバランス型で、スキル【金剛力】による筋力倍増補正があるためウルドでも屈指の強力な冒険者とされていた。

だが、現在のダイダラとエルニャのステータスを見比べれば、もはや二人だけでも『ランカーズ』を完封できるレベルに達している。


だが――俺たちの見据える目標は、もっと上だ。現国王アダムスという絶望的な存在を殺すため、俺たちはもっと強くならなければならない。


「よし、今日はここまでにしよう。二人とも数日の連戦で疲ただろ。明日は丸一日休みとする。いいな!」


「……!! ウス!」

「……はい!」


二人とも「休日」という概念に最初は固まっていたが、すぐに嬉しそうに返事をして駆け寄ってきた。

本当に素直で従順すぎて、こちらが困惑してしまうほどだ。……こういう純粋で善質な者が虐げられ、クズどもが得をする世界なんて絶対に間違っている。早急に悪を討たねばならない。


だが――急がば回れ、だ。前世の日本の金言通り、焦らず確実な強さを蓄え、一撃で仕留める。俺は頭の中で着々と復讐のロードマップを描いていた。


翌日。約束通り二人には休日を与えた。

羽を伸ばして何をするのかと影から気になって見ていたのだが……ダイダラは腕まくりをして家中の掃除を始め、エルニャは昼近くになってもベッドでスヤスヤと寝入っていた。


(……ダイダラ、家政婦みたいだな。まぁ本人が楽しそうだからいいか)


二人に休日を与えたのには、労い以外にももう一つ重要な目的があった。

――『単独でのスキル集め(捕食)』だ。

主従契約によって二人へ食欲が湧かなくなったとはいえ、捕食時の自分が怪物化して肉を貪り喰う凄惨な光景は、仲間に見せて気持ちの良いものではない。


俺は一人、レアリア近郊にあるCランクダンジョン『サハリン砂漠』へと向かった。


このダンジョンは特殊で、入口に入るとすぐに転移ゲートが存在し、潜ると見渡す限りの広大な砂漠地帯へと弾き出される。ダンジョンボスは、砂漠の最奥に鎮座する巨体ピラミッドの中にいるらしい。


転移ゲートを潜り、目的地へ到着する。


「さぁて……ここの魔物はどんな味がするのかな?」


飢えた『捕食者』が、熱気の渦巻く砂漠へと降り立った。


頭上から容赦なく照りつける太陽。見渡す限りの黄金の砂景色。気温はゆうに40℃を超えており、立っているだけで全身から汗が噴き出す。

砂を踏みしめて歩き出すと、早速歓迎の魔物たちが群れをなして現れた。巨大なサソリ型、気味の悪いムカデ型、そして凶暴なラクダ型の魔物だ。


亜空間から双剣を引き抜き、正面から突っ込む。

Cランクダンジョンということもあり、今の俺の相手ではなかった。【一閃突き】の一撃で、群がる魔物たちが次々と絶命していく。


周囲の安全を確認すると、俺は早速死体へと飛びつき、夢中で【捕食】を開始した。

干からびた肉質は、前世で食べた「魚の干物」を彷彿とさせる味で、日本人である俺は思わず白米が欲しくなってしまった。


『サンドスコーピオンを【捕食】しました。スキル【毒液】【ハサミギロチン】を獲得』

『サンドセンチピードを【捕食】しました。スキル【砂潜り】【灼熱耐性】を獲得』

『デスキャメルを【捕食】しました。スキル【鑢(やすり)】を獲得』


「ふむ……上々だな」


獲得した【灼熱耐性】のおかげで、あれほど苦しかった砂漠の熱気が嘘のように和らぎ、汗一つかかずに快適に歩けるようになった。


さらに奥へ進むと、砂漠の中央に『オアシス』と呼ばれる巨大な水溜まりが広がっていた。

手に掬って飲んでみると、砂漠の真ん中とは思えないほどキンキンに冷えていて美味い。息を吐いて休んでいると、水面を割って魚型の魔物が飛び出してきた。


「【切り裂き】!」


鋭利な手刀が一瞬で魚を真っ二つにする。

拾い上げてそのまま口へ運ぶと――白身魚の刺身のような、淡白ながらも奥深い旨味が口いっぱいに広がり、思わず「美味い!」と声を上げてしまった。


『サンドフィッシュを【捕食】しました。スキル【潜水】【深海耐性】を獲得』


しばしオアシスで舌鼓を打ち、体力を回復させてから再び歩みを進める。

やがて、砂嵐の向こうに巨大な建造物がその姿を現した。


前世で言う『スフィンクス』の巨像が両脇を固め、その中央に巨大な幾何学模様のピラミッドが鎮座している。


入り口へ足を踏み入れようとした、その時だった。


『グゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!』


地響きと共に両脇のスフィンクス像が動き出し、俺へ襲いかかってきた。

巨体ゆえに一瞬警戒したが、所詮はC〜Bランク相当のガーディアンだ。新たに手に入れた【銀剣の舞】を一閃させると、無数の銀色斬撃が巨像をバラバラの石塊へと変えた。


見かけ倒しの弱さに拍子抜けしつつも、死骸へ手を伸ばして【捕食】する。


『スフィンクスを【捕食】しました。スキル【砂塵竜巻】【砂塵耐性】を獲得』


「……お? これは当たりだな」


Aランク相当のユニーク魔法スキル【砂塵竜巻】。Cランクの冒険者パーティなら一発で全滅しかねない広範囲攻撃だ。思わぬ掘り出し物に気分を良くしながら、俺はピラミッド内部のボス部屋へと進んだ。


待ち受けていたボスは、黄金の仮面と絢爛な法衣を纏った棺――いわゆる『ツタンカーメン』のような異形の魔物だった。

ボスが黄金の杖を掲げ、強力な魔法を詠唱しようとした瞬間、【魔法妨害】で強制中断させる。


すさまず踏み込み、『黄金龍の煌剣』と『賢王の魔法剣』の二振りを交差させ、先ほど奪った【ハサミギロチン】を発動。

巨大な黄金の鋏状の斬撃がボスを捉え、胴体を真っ二つに両断した。


「ハッ、所詮はCランクダンジョンか……」


勝ちを確信したのも束の間、両断されたボスの肉体が不気味な粘着音を立てて即座に接合され、元通りに復元した。


「……へぇ、自己再生持ちか。すぐに死なれるより張り合いがあっていい! じっくり吟味して喰ってやるよ!!」


笑みを深めて追撃に移ろうとした――その瞬間。

ボスの黄金の仮面が怪しく発光し、俺の左腕を捉えた。


「……っ!? 動かない……体組織が黄金に変えられてるのか!?」


肘から先が一瞬で重厚な金塊へと変質していく。極めて危険なデバフ&状態異常スキルだ。

俺は迷うことなく魔法剣を振り抜き、黄金化が浸透する前に己の左腕を肘からバッサリと切り落とした。


ドサリと床に落ち、粉々に砕け散る俺の腕。

ボスは勝ち誇ったように嘲笑を浮かべた――が、俺は即座に【再生】を発動。断面から肉体と骨が爆速で再構築され、一瞬で元通りの腕が生え変わった。


その異形すぎる光景に、ボスの仮面が凍りつく。


「隙だらけだぞ金塊!! 【星砕き】!!!」


超重量の打撃スキルがボスの頭部へクリーンヒット。

黄金の仮面が粉砕され、今度こそボスは砕け散って完全に沈黙した。


(こんな金ピカの塊、本当に喰えるのか……?)


不安になりながらも死骸へ手を伸ばし、【捕食】を実行。

……驚いたことに、口の中に広がったのは芳醇で甘い「高級チョコレート」の味だった。久しぶりの甘味を存分に堪能する。


『デス・カーメンを【捕食】しました。スキル【黄金化】【ポーカーフェイス】を獲得』


(どこがポーカーフェイスだよ)


心の中でツッコミを入れつつ、ダンジョンクリア報酬の宝箱が置かれた奥の部屋へ足を踏み入れようとした――その時だった。


「――へぇ。君、すごく異質な魔力をしているね」


「……っ!?」


背後から、突如として静かで透き通った男の声が響いた。

ダンジョンボスを倒し、誰もいないはずの閉ざされた空間。気味の悪いほどの気配の無さに、俺は血が凍りつくような戦慄を覚えて跳ね起きたのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。