第119話:閃光の王と崩れ去る常闇
【約束の泉・神殿最深部・異空間】
「あはっ……あはははははッ! 素晴らしい、素晴らしいよ山城クンッ! これこそ僕の観測し得なかった、最高の『未確定領域』だァァァッ!!」
狂叫とともに結晶の天使翼を羽ばたかせ、【閃光の王】と化したシュウ。
その背後に浮かぶ幾重もの黄金の光輪から解き放たれたのは、異空間の概念そのものを物理的に蒸発させるほどの眩い極光だった。
右目の【森羅万象眼】はいくつもの瞳孔へと分裂して発熱し、常軌を逸した「無限演算」の領域へと突入していた。
思考のラグも、因果の遅延すらも存在しない。
一秒間に数億もの「未来」を確定させ、全方位から解き放つ絶対的な光の暴力。
「く……ッ……!?」
リンドは深層剣を強く握り直し、足元から立ち上る【常闇】の防護領域を瞬時に全開展開する。
相手がどのような未来を選択しようと、その因果の起点ごと喰らい尽くす絶対の領域。
――だが!
『【観測超絶】――『事象の光速飽和』。』
シュバァァァァァァァァンッ―――――ッ!!
「ガッ……ハァッ……!?」
速い、という概念すら生ぬるかった。
【常闇】が「因果を喰らう速度」を遙かに置き去りにする数億の光線が、一瞬にしてリンドの肉体を全方位から穿ち抜く!
喰らい尽くす処理が一切追いつかないほどの圧倒的な「情報量(光)」の暴風雨。
「ハハハハハッ! 僕の観測を喰らうなら、喰らいきれないほどの『確定された未来』を同時に叩き込めばいい! 胃袋が破裂して死ぬまで呑み込んでみなよ山城クンッ!!」
シュウが頭上から結晶の巨腕を容赦なく振り下ろす。
光の圧力が数千倍の超重力波となって空間を歪め、リンドの身体を上空から床へと叩き潰した。
ズドォォォォォォォォンッ―――――ッ!!
【常闇の王】として覚醒したはずのリンドの膝が、悲鳴を上げて強制的に折りたたまれる。
異次元の床が何重にも砕け散り、リンドの左腕を覆っていた【常闇】のオーラが、眩い閃光に焼き尽くされてボロボロと爆発を起こしながら霧散していく!
「グハッ……!? カハッ……ッ……!!」
口から大量の鮮血を撒き散らし、神殿の崩落した瓦礫の底へと深く埋もれていくリンド。
【捕食】の限界能力を遥かに超えた過負荷によって、全身の細胞がズタズタに引き裂かれ、内臓が灼熱の光で焼き焦げられる激痛が脳裏を突き抜ける。
かつてないレベルの猛攻に、視界が真っ白に染まっていく。
「リンドォォォォォッ!!」
離れた場所で女神人形と死闘を繰り広げていたアイリスの、悲鳴のような絶叫が響き渡る。
ライオやダイダラたちも血を流しながら助けに入ろうとするが、シュウの背中から放たれる光の余波(衝撃波)だけで吹き飛ばされ、近づくことすら叶わない。
【常闇】という因果喰みの絶対的な理を獲得したはずのリンドが、再び【閃光の王】の理不尽なまでの出力と光速演算の前に、完璧なやられ状態へと追い詰められていた。
「どうしたんだい……!? 喰ってみなよ! 僕の放つ数百万の光の選択肢を、その自慢の常闇で全部咀嚼してみせてくれよッ!!」
極北の空に君臨するシュウが、狂喜に満ちた醜悪な破顔で翼を大きく広げる。
その頭上に、一国の空間すら丸ごと消失させる高密度の「光の槍」が数千本、一斉に生成されていく。
「ほらほら....このままだとこの世界は終わっちゃうよ?....【真の王】の力で僕を止めてごらんよ!!ははははははは!!」
【閃光の王】となったシュウの理不尽なまでの輝きが、倒れ伏して動けないリンドを容赦なく照らし出す。
圧倒的な暴力の前に、【常闇の王】の覚醒劇は再び絶望の淵へと引きずり戻されていく。




