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第120話:深層龍と龍王


【約束の泉・神殿最深部・異空間】


「ガハッ……! ぐあぁぁぁぁぁッ……!!」


天から降り注ぐ数千の「光の槍」が、崩落した瓦礫の底に横たわるリンドの肉体を無慈悲に貫いていく。

【閃光の王】シュウが解き放つ無限演算の光速飽和。

因果を喰らう【常闇】の処理能力すら遥かに置き去りにする極限の「情報量」の前に、リンドの全身の細胞はズタズタに焼きちぎられ、右腕の爪も深層剣も光の爆炎の中でボロボロに砕け散っていた。


「あははははッ! どうしたんだい山城クン!? 喰いきれないなら僕の光に焼かれて消え去りなよッ!!」


空中に君臨するシュウの高笑いが異空間に響き渡る。

白濁していく視界の中で、リンドの意識は再び冷たく暗い、ドス黒い【深層】の底へと沈み込んでいった。


―――


【リンドの精神世界・深層の底】


(くそ……っ……! 喰いきれねぇ……。あの光の量……情報量が多すぎて……【常闇】の胃袋が追いつかねぇ……!)


漆黒の海に漂うリンドの魂が、無数に穿たれた胸の傷を押さえながら吐き捨てる。

どれほど強力な「権能」を持とうと、受け止める己の「器」そのものが破裂してしまえば意味がない。

圧倒的な能力の過負荷による敗北。


『……何を情けない顔をしている、リンド・アルターヤ。』


闇の静寂を切り裂き、流星のごとき輝きを纏ったあの【深層龍】が姿を現す。

美しくも威厳に満ちた巨大な眼光が、血まみれのリンドを見下ろしていた。


「……龍……。笑いに来たのか……? 喰らい尽くす器が足りねぇと……」


『笑うはずがなかろう。お前はかつて、この私を真っ向から喰らい、その肉体と魂を己の【深層】の底に引きずり込んだ男だ。』


深層龍が静かに長い巨躯をくねらせ、リンドの至近距離へと顔を寄せる。


『お前は今まで、奪った力をただ「スキル」として引き出し、使っていたに過ぎん。だが……思い出せ。お前の中に眠る私は、ただの力ではない。お前の命と混ざり合い、底で息づく魂そのものだ。』


「俺の命と……魂……?」


『うむ。光の情報量に器が耐え切れぬというのなら……私という「龍の魂」を完全に解き放ち、その身に融合させよ。……お前がただの人間であることを捨て、真なる【龍】の器となるとき、その【常闇】は無限の情報をも飲み干す黒穴(ブラックホール)となる。』


深層龍がその巨大な顎を開き、リンドへ向けて静かに頭を垂れる。


『喰らえ、リンド・アルターヤ。……我の体だけでない、その魂ごと食らい尽くせ。我らの魂を一つに重ねるのだ。……この世界を統べる、真なる【王】となるためにッ!!』


「……フッ。……あぁ、やってやるよ....!!」


リンドが不敵な笑みを浮かべ、血まみれの右手で深層龍の頭部へと触れる。

その瞬間、リンドの【深層】の底から、これまでの黒金や漆黒すら凌駕する、「深黒と流星の輝き」を纏った凄まじい概念の奔流が爆発的に解き放たれた。


―――


【約束の泉・神殿最深部・異空間】


「はぁ、残念だなぁ山城クン....これで終わりかな?また【王】の器の作り直しかぁ...じゃあね、光の塵となって――なッ……!?」


トドメの光槍を振り下ろそうとしたシュウの顔から、一瞬にして落胆の表情が消え去った。

瓦礫の底、リンドを貫いていた数千の光の槍が、まるで「超高密度の重力」に引きずり込まれるかのように、黒い渦の中へズルズルと吸い込まれて消滅していく。


ズドクンッ―――――……!!


異空間の全存在を恐怖で凍りつかせる、巨大な龍の咆哮のような心臓の鼓動。


「な……なんだ……この圧導的な圧力は……!? 僕の光が……消滅ではなく……『呑み込まれて』いる……!?」


【森羅万象眼】の幾重もの瞳孔が焦燥で激しく明滅する。

瓦礫を粉砕して立ち上がったのは――かつてのリンドではない。


頭部からは黒漆と流星の光を放つ二本の鋭利な「龍角」が生え伸び、背には圧倒的な威圧感を放つ「漆黒の龍翼」が展開されている。

その全身を包むのは、龍の鱗を模したドス黒い甲冑と、光すら脱出を許さない完全なる重力フィールド。


流星のごとき赤き龍の眼光を瞳に宿し、リンドがその存在感を誇示するように静かに息を吐き出した。


「待たせたなシュウ。……ここからは『第二ラウンド』だ」


【常闇】と【深層龍】の魂が完全融合を果たした姿――真なる【王】の降臨だった。


「君というやつは....一体今まで何を食べてきたのかな!?」


シュウを睨むその眼に宿るは【深層龍眼】。森羅万象をも見通すその眼が一瞬動く。その刹那。



ブシュウゥゥゥゥゥゥ!



「......え?」


シュウの体はきれいに真っ二つに裂けていた。戸惑いを隠せないシュウの背面にいるリンドが【深層】のオーラを纏いなおしシュウに迫る。


「....っ!!避ける手段が.....!!」


シュウの眼が攻撃を捉える前にリンドの一撃がシュウの胸に突き刺さる。


「ガァァァァァァ!!?」


地面に叩きつけられたシュウの前にリンドが佇む。


「このラウンドでKOだ。お前はここで死ぬ。」


二人の覚醒者による最終ラウンドが幕を開けた。

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