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第115話:深淵からの問い掛け


【約束の泉・神殿最深部・異空間】


「あはっ! どうしたんだい山城クン、返事がないよ!? まだ意識を失うには早すぎるだろうッ!?」


瓦礫の中に横たわり、微動だにしないリンドを見下ろし、シュウが不気味な高笑いを上げる。

水晶腕に溜め込まれた虹色の極光――あらゆる因果を消滅させる概念光線が、リンドの無防備な胸元へ向けて容赦なく放たれた!


ドバァァァァァァァンッ―――――ッ!!


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁッ―――――……!!」


直撃。

爆音とともに凄まじい衝撃波が異空間を奔り、リンドの肉体は神殿の奥深くへと吹き飛ばされる。

背骨が折れ、視界は完全な闇へと塗り潰されていった。


「リンドォォォォォォォッ!!」


遠くで叫ぶアイリスの声も、女神人形と死闘を繰り広げるライオたちの怒号も、急速に遠のいていく。

リンドの意識は、冷たくて暗い、底なしの「黒」へと落ちていった。


―――


【リンドの精神世界・深層の底】


(あ……ああ……。俺は……また負けるのか……?)


何も存在しない黒い海の底。

全身の激痛すら消え失せたその闇の中で、リンドの魂がゆらゆらと漂っていた。

シュウの【森羅万象眼】――「未来の確定」と「観測改変」。

どんなに速度を上げても、どんなに威力を高めても、届かない結果を選び取られる以上、己の【捕食】すら発動できない。


『……情けない顔だな、リンド・アルターヤ。』


静寂の闇を割って、再びあの声が響く。

リンドの目の前の闇が不気味に揺らぎ、そこから現れたのは――【深層】のダンジョンに突き落とされた日、最初に【捕食】したあの巨大な龍だった。


「……!?お前は……」


『答えろ。お前の復讐は……この世界に対する渇望は、あの程度の「観測」で終わる程度のものだったのか?』


龍は【深層】のオーラをしまい込み、流星のような美しい体が姿を現す。


『理不尽に命を奪われ、この世界に投げ込まれ、チートスキルという玩具で遊ぶ奴らを喰らい尽くしてきた……お前の【深層】は、たかが決まった未来ひとつに怯むような安物だったのかと訊いている。』


「……違う……。俺は……あいつらを……世界の理(女神)ごと……全部喰らい尽くすために……!」


『なら、なぜ諦める? 未来を観測された? 確定された? くだらん。お前が喰らってきたのは「スキル」や「魔力」だけか?』


もう一人の自分が、冷酷な笑みを浮かべる。


『思い出せ。お前の【捕食】の本質を。……「相手が用意した未来」なら……その未来を構築する「因果そのもの」を喰らえばいい。お前が世界の【王】になるということは……世界が用意したルールを、お前の胃袋で書き換えるということだ。』


「因果そのものを……喰らう……!?」


『さあ、目を醒ませ山城。……お前の底は、こんな場所じゃない。』


―――


【約束の泉・神殿最深部・異空間】


「ハハハハハ! 終わりかぁ! 本当にこれで終わりなのかい山城クンッ!!」


血まみれで倒れたまま動かないリンドへ近づき、シュウが止めを刺すべく水晶の刃を振り上げた――その時!


ドクンッ―――――……!!


異空間全体を揺るがす、不気味で巨大な「心臓の鼓動」のような音が響き渡った。


「……ん? 今の音は……何だい……?」


シュウが片眉を跳ね上げる。

倒れ伏していたリンドの体から、これまでの【深層】とは一線を画す、空間そのものを腐食させる「漆黒の概念」がゆらゆらと立ち上り始めていた。

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