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第113話:絶望の観測と壊れる世界


【約束の泉・神殿最深部・異空間】


「ふふ……仲間たちが頼もしくて良かったねぇ、山城クン! これで思う存分、僕と『王の試練』に集中できるだろう……!?」


神殿の空間が黒い液体のように歪み、足元すらおぼつかない異次元の戦場。

シュウが歪んだ破顔で【森羅万象眼】を怪しく発光させると、その背後に「無数の概念の鏡」が浮かび上がった。


「来い……シュウッ!!」


リンドが疾風の速度で肉薄し、黒金のオーラを纏わせた爪と深層剣を縦横無尽に振るう!

だが――。


『【観測改変】――『軌道遮断』『威力無効』。』


ピシィィィィィンッ―――――ッ!!


「ぐっ……!?」


先ほどのような魔力粒子のラグすら見越したシュウの観測によって、リンドのすべての攻撃がシュウの肉体に触れる直前で「事象そのもの」を書き換えられ、ことごとく弾かれていく。

【捕食】の爪も【星砕き】の斬撃も、シュウの周囲に展開された概念の鏡に吸い込まれ、霧散してしまう。


「無駄だよ無駄! 君が繰り出すあらゆる『選択肢』は、すでに僕の頭の中で数百万通り観測済みなんだ! 君が次にどの足を踏み出し、どのスキルを使うか……僕には全て見えているッ!!」


ドガァァァァァァァンッ―――――ッ!!


シュウが空を切った水晶腕を振るうと、空間そのものが「リンドを押し潰す未来」として確定し、不可視の巨大な圧力がリンドの全身を襲う!

骨が軋む不気味な音が響き、リンドの口から大量の鮮血が吐き出された。


「ガハッ……!? ぐぁぁぁぁぁぁッ!!」


「リンドッ!!」


後方からアイリスが援護しようと魔法陣を展開するが、シュウは一瞬視線を向けただけでその魔法陣を構成する魔力式を分解・消滅させる。


「アイリスちゃんも大人しくしててよ。今、山城クンはね……『旧時代の人間』から『真の王』へと生まれ変わるための脱皮の真っ最中なんだからッ!!」


シュウが指先を鳴らすと、無数の概念の鏡から「極大の光線」が一斉に解き放たれ、身動きの取れないリンドを容赦なく撃ち抜く!


ドドドドドドドバァァァァァンッ―――――ッ!!


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ―――――……!!」


凄まじい爆煙とともに、リンドの肉体が異次元の床を何度も跳ねながら叩きつけられる。

【深層化】による異形の爪は砕け、全身の皮膚は裂け、黒金のオーラが急速に勢いを失っていく。

シアンから奪った【吸収】のスキルすら、シュウの概念書き換えの前には発動の機会すら与えられない。


「ハァ……ハァ……くそっ……! 攻撃が……何ひとつ……届かない……!」


血の海の中で、リンドは膝をつき、視界が赤く染まっていくのを感じていた。

今までいかなる強敵も暴力と【捕食】でねじ伏せてきたリンドが、完璧な「未来の観測」という絶対的な理の前に、完全に打つ手を封じられ、一方的に叩きのめされていた。


「あはっ、いいねぇ……その顔だよ山城クン! 折れそうな心、絶望に歪む表情……実に美しい! でもね、君の底はこんなものじゃないはずだ……! さぁ、見せてくれよ……君の『深層のその先』をッ!!」


狂喜に瞳を輝かせるシュウが、惨絶なダメージを負ったリンドへ歩み寄る。

リンドの圧倒的な敗北とやられ描写の中、戦いはさらなる絶望の泥沼へと引きずり込まれていく。

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