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第109話:束の間の休息と女神の真実


【サングリア近郊・大都市ウルド『黒猫の羽休め亭』】


大聖堂が崩壊し、教皇シアンの支配から解放されたサングリア領。

だが、街全体に走った地裂と崩落の影響により、リンドたちはサングリアから目と鼻の先にある【ウルド】へと一時撤退していた。


「ふぅ……生きてるのが不思議なくらい全身ボロボロだぜ……。」


宿屋の大きなテーブルを囲み、全身に包帯を巻いたライオが深々と息を吐く。

その隣では、大剣を傍らに置いたダイダラ、傷口を薬草で処置されたエルニャ、そしてサウスとナハムが重々しくうなずいていた。

グラルド・ソノザキとの死闘、そしてシアンの暴走。全員が限界を超えて勝ち取った勝利だった。


「アイリス……身体は大丈夫か?」


「ええ……【擬似深層化】の反動で魔力酔いはひどいけれど、怪我はナハムさんの回復魔法のおかげで落ち着いたわ」


ベッドの端に腰掛けたアイリスが、少し顔色を取り戻してリンドを見つめる。

リンドは窓辺に立ち、シアンから【捕食】した天害級スキル【吸収】と、それによって解き放たれた膨大なスキルの感触を静かに確かめていた。


「おい、リンド。あの狂った観測者……シュウが言っていた『女神サマ』と『約束の泉』ってのは一体何なんだ?」


ライオが真剣な眼差しで切り出す。

部屋にいた全員の視線がリンドへと集中した。


「……シアンを喰らった時、あいつの記憶の一部が脳内に流れ込んできた。そしてシュウの言動……繋がったよ」


リンドは冷徹な眼光のまま、静かに語り始める。


「この世界に転生者を呼び寄せ、チートスキルという歪みな力を与えていた元凶……『女神』と呼ばれる存在。奴はこの世界を救うために人間を喚んでいたんじゃない。自分の理(世界)を維持するための『餌』として転生者を利用していたんだ」


「餌……ですと……!?」


ダイダラとエルニャが息を呑む。


「ああ。シアンが転生者を殺してスキルを蓄え込んでいたのも、元はと言えば女神の教義(システム)に従わされていたに過ぎねぇ。シュウはそれを『観測』し、人間の破滅を楽しんでいた狂人だ。そして……『約束の泉』は、その女神が直接降臨し、この世界の概念を再構築するための『心臓部』だ」


「北の地にある【約束の泉】……そこにすべての元凶がいるってわけね」


アイリスの瞳に、毅然とした強い意志の光が宿る。


「シュウはそこで待つと言い放った。奴は俺たちが追いかけてくるのを分かっていて煽ったんだ。……間違いなく、女神の力と自分自身のチートスキルを混ぜ合わせた最大級の罠を張って待っている」


「ハッ……上等じゃねぇか!」


ライオが口元の血を拭い、不敵に笑う。


「ここまできて引き返す選択肢なんて最初からねぇんだ。全員でその『約束の泉』って場所に殴り込んで、狂った女神もシュウもまとめてブチのめす!」


「バカ言うな。その傷で何ができる。お前達は休め....。泉には俺一人で行く。」


「.....リンド!!!」


リンドの言葉に、満身創痍の仲間達が驚愕の顔を見せる。


「リンド様.....我々がまだ足手まといだと....?」


「リンド様....あたしは.....戦える...!」


ダイダラとエルニャが不安と覚悟の混ざり合った眼でリンドを見つめる。


「お前達の力は正直驚いた....よくやってくれたと思う。だが全員傷が深すぎる。お前達をもう足手まといとは呼ばない....だがその傷を庇いながら戦えるほど甘い相手じゃないんだ。」


俺は冷静に全員の傷を見ながら話す。本当に全員が生きているのが不思議なほどの深い傷を負っている。その状態でシュウを相手にするのは、命を差し出しているようなものなのだ。


「.....確かにこの傷じゃまともに動けねぇかもしれない...。だがお前一人に任せたくないんだよ....!!」


サウスは無力な自分を理解しながらも、覚悟のある眼でリンドに訴えかける。


「サウス....だが....。」


俺が口を開いたその時だった。


「ならば私がなんとかしよう。」


そう言って扉を大胆に開けて入ってきたのは、バラクシアのギルドマスター、カレン・アクタだった。


「なっ....お前どうして....?」


意外な来客にライオは驚く。さらに全員を驚かせたのは、カレンの後ろにものすごい数の冒険者達がいたのだ。


「こいつらは全員D~S級で戦っている回復魔法取得済の冒険者だ。この人数なら、ここにいる人数くらいは完治させられるだろう。」


「カレン....。」


こうして回復職の人間たちによる、集団治療が始まった。みるみるうちに全員の傷が癒えていき、やがて全員がほぼ無傷の状態に戻った。


「カレン.....すまない。ここまでしてもらって、感謝する。」


「ふふ....例は不要だ。....必ず世界を救ってくれ、リンド・アルターヤ。」


カレンの粋な計らいにより完治したメンバーは【約束の泉】へ歩き出した。


「全ての決着をつけるぞ.....!!」


「「「「「おおおお!!!」」」」」

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