第106話:途切れた眼光と深紅の希望
【サングリア領内・大聖堂廃墟】
「遊びは終わりだシアン。お前の【吸収】の構造……全て暴いたぞ」
地表から空の偽神を見据え、リンドは足元の瓦礫を力強く踏みしめる。
二重魔法陣を描く【神深眼】の視界には、空中に浮遊するシアンの胸の奥――数千の怨念と奪ったスキルが集中する「唯一の核」が明瞭に死線として浮かび上がっていた。
『クッ....!防御....間に合わない....!?』
暴走したシアンの隙が見えた。俺は【神速】をフルスロットルで発動し、人知を超えた速度で核へと迫る。
「【神深極・穿空】――これで引導を渡してやるッ!!」
リンドが地面を削り取り、超音速の跳躍でシアンの核へと深層剣を突き出した――そのまさに刹那!
ピシィィィィィンッ―――――……!!
「……っ!? ガッ……あぁぁぁぁぁぁッ!?」
右目に激痛が走り、リンドの視界が歪む。
【神深眼】を構成していた二重魔法陣のうち、シュウの腕を食ったことで一時的に宿していた【神域】の金色の陣が、硝子が割れるような音とともに急速に崩壊・霧散していったのだ!
(……嘘だろ……ッ!? ここで……シュウの腕から喰らった【神域】スキルの制限時間が……切れただと……!??)
絶対的な「死線」と「構造の解析」をもたらしていた神の視界が消え去り、元の黒い【深層の眼】へと戻ってしまう。
視界の激変と右目の強烈な反動により、リンドの突進の軸が大きくぶれた!
『ハハハハハハッ!! 限界が来たかリンド・アルターヤぁァァァァ!! 神の眼を失ったお前など、ただの魔力が高いだけの泥人間に過ぎんッ!!』
その隙を、理性を失い狂暴化したシアンが見逃すはずもなかった。
残された五本の【神壊の触手】が集束し、サングリア全土の怨念を乗せた極大の破壊光線へと姿を変える!
『消え去れぇぇぇぇッ!! 【神壊全霊砲】――――ッ!!』
ドォォォォォォォォォンッ―――――ッ!!
空を焼き尽くし、世界そのものを穿つ崩壊の光柱が、空中盤で姿勢を崩したリンドを目掛けて一直線に放たれる!
視界を失い、空中での回避も不可能な極限状態。直撃すれば【深層】の肉体ごと消滅を免れない絶望的な一撃――。
「チッ……ここまで……来て……ッ!!」
万事休す。リンドが覚悟を決めて、自滅覚悟の【金剛力】を全開に叩き込もうとした――その時!
「【天穿つ深層の槍】。」
ズバァァァァァァァンッ―――――ッ!!
天空から降り注ぐ【神壊全霊砲】の極光を断ち切るように、一筋の「深紅とドス黒い闇」が交ざり合った超巨大な魔法陣が空中に展開された。
極大の光柱がその魔法陣へと激しく衝突し、相殺の衝撃波が大気を何重にも揺らし潰す!
「なっ……アイリス……ッ!?」
煙の立ち込める空中に躍り出たのは、リンドのよく知る少女――だがその姿は異様だった。
綺麗な金髪はグラルド戦で受け継いだ【深層】の力により深紅と黒のグラデーションへと染まり、背中には黒い魔力の翼、腕には漆覚の紋様が不気味に蠢いている。
グラルド・ソノザキとの死闘の果て、エルニャとダイダラから【深層】の魔力を受け取り、自らの【魔法の王】としての資質で完全に昇華・制御してみせた姿――【擬似深層化】アイリスだった!
「追いついたわよ.....リンド! ソノザキは……みんなで倒した!!」
背後にボロボロになりながらも互いを支え合うライオ、ダイダラ、エルニャ、サウス、ナハムたちの姿が見える。
アイリスは赤と黒の入り混じる髪をなびかせ、力強い眼光でリンドへと手を差し伸べた。
「一人でカッコつけないでよ……! 私はもう、あなたに守られるだけの存在じゃない! 一緒に……あんな偽者の神様、吹き飛ばすわよ!!」
「……お前....その姿は……!」
俺自身が一番よく知る魔力を纏ったアイリスを見て一瞬困惑したが、後ろから暴走したシアンが迫る。
『おのれ……おのれぇぇぇ小娘どもが次から次へとッ!! まとめごと殺してやるッ!!』
「.....よし、行くぞアイリス! 【深層】の底力を見せてやる....ッ!!」
「ええ……! 全力で行くわよ、リンドッ!!」
【擬似深層化】を果たしたアイリスの全属性極大魔法と、リンドの圧倒的な【捕食】と肉弾戦。
二人揃った最強のコンビが、ついに暴走する偽神シアンへと最後の死闘を挑む。




