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第99話:対極の天害と覚醒の予兆


【サングリア領内・大聖堂最深部『神域』】


「【吸収】……だと……!?」


記憶の奔流から引き戻されたリンドの額に、冷や汗が伝わる。


『そうだ。我々は同じ……『他者を喰らい、理を奪う存在』としてこの世界に生を受けた』


シアンの背後から、漆黒と黄金が交ざり合う無数の触手が展開される。それはリンドの【捕食】と酷似しながらも、より広範囲の「概念そのものを吸い上げる」禍々しい魔力を放っていた。


『父から引き継いだ転生者の知識とこの【吸収】で、私は数多の転生者を裏から間引き、サングリアの地下にスキルを溜め込んできた。……だが、私のスキルにはとある限度がある。貴方なら理解しているだろう。』


「なるほどな.....俺の【捕食】が神域種に対応していないように....お前のスキルは【深層種】に対応できなかったんだな....!」


『正解だリンド・アルターヤ。貴方の【捕食】という【深層】の入れ物と、私の【吸収】という【神域】の入れ物……この二つが一つ合わさって初めて、私は完全なる『神』へと至り。この世界を支配する新たな神となるのだ!』


ガキンッ――ゴォォォォォォンッ―――――ッ!!


【神深眼】を交えたリンドの漆黒の刃と、シアンの【吸収】を纏った光の槍が交差する!

お互いのスキルが衝突するたび、空間が削れ、次元のヒビから虚無の風が吹き荒れる。


「神だと......神になどなって何の意味がある!!」


ズバァァァァァンッ―――――ッ!!


リンドの【神深眼】が最大出力で発光する。

【金剛力】と【剣王】の概念を乗せた一撃が、シアンの【吸収】の触手を半数以上まとめて切断した!


『それも知りたいか...?では物語の続きを見せてやろう。』


「またか....!!」


シアンは再び記憶の玉をリンドへ投げる。リンドを包む雲から新しい映像が映し出される。




そこには【吸収】を駆使し、強力な冒険者となったシアン、そしてその仲間達が映されていた。


「女神様の言っていた”魔王”はここにいるはずだ!!みんな、油断せず行こう!!」


今の様子からは想像できないリーダーシップを発揮するシアン。そしてそれに応える頼れる仲間達。俺達【ディープレイヤ―】を彷彿とさせるようないいパーティだった。


そして、魔王との激しい戦いが始まった。

正直かなりショッキングな内容だった。


シアンを含む5人で挑んだ戦いだったが、早々に一人の死者を出し、4人で死力を尽くしている様子。


さらに一人が殺され、全員が膝をつく。


『グハハハハハ!!こんなものか勇者よォォォォ!!』


魔王の激しい笑い声に思わず耳をふさぐ。だが映像の中のシアンはあきらめない眼差しで魔王を睨んでいる。


映像が終盤を迎えた。ようやく魔王が倒れる。生き残ったのはシアンただ一人だった。


「ハァ....ハァ....やった....やったぞ....!みんな....!!」


シアンは仲間の元に駆け寄ろうとする。その時死にかけた魔王の口から信じられない事を聞いてしまう。


『俺様が死んだとて....あの女神は新たな魔王を生み出す。それがこの世界の均衡を保つ唯一の方法だと言っていた....から....な....。』




「あの女神が.....異世界の勇者と魔王という存在を作り出し、世界の均衡を保っている...?」


俺は頭が混乱した。この世界は転生者、つまり俺の同郷の人間たちを実験台として見ているという見解。いや、それ自体はあっている。だがそもそもその発端はあの女神....クラーシャだかってやつが仕組んでいた?

だから俺にこいつを倒せと言ったのか?この真実を知る前にシアンを殺させようとしたってことか?


「なるほどな.....少しづつ、見えてきた。」


『理解したか。では、私の力の一部となりたまえ。』


シアンは槍を俺に向けて発射する。しかしその攻撃は俺には当たらず、【深層】の闇へ消えていく。


『何故抵抗する...?』


「内容はなんとなく理解した。お前も復讐が目的だったか....。だったら俺が代わりに女神をやってやるよ、だから...お前のスキルを全て食わせてもらうぞ。」


『そうくるか.....舐めるな!!』


俺の標的はもうわかった。俺はまた攻撃を始めるのだった。

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